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「もう、そんな辛そうな顔しないで。私これでも今、充実した人生を送ってるって、そう思ってるんだよ? 夢だった獣医にも、見習いの見習いだけど、なれた訳だし。それに、こうして、健一君にも、出会えた、訳だし……。」心情を吐露する冬実の頬には、紅葉が落ちていた。もうすっかり、季節は秋だった…「ふ…冬実!」健一は彼女を押し潰れるほどに強く抱きすくめた……温かい。冬実の体温が全身を通して伝わってくる。冬実には、顔にも、身体にも、しっかりと血が通っていた……それなのに、この体が「死」に着実に近づいているなんて、そしてそれがもう目前に迫っているなんて、とても信じることが出来なかった。冬実が性質の悪い冗談を言っているのでは、と思うくらいだった。しかし思い返せば、(今まで何で気付いてやれなかったのだろう?目には映っていたはずなのに、頭がそれを認識しようとしていなかった…)冬実の話を裏付ける要素は幾らでも挙げられた。