No.011:
King Crimson
『In The Court Of The Crimson King』
好き/嫌いで言うのは難しい。
勿論嫌いであるはずもないのだけど、しかし未だかつてこのアルバム、いやこのグループを、好きだと思ったことは無かったのではないかとすら思える
それでも僕の音楽嗜好のど真ん中に程近い所に、それは確かにある。否応無く。
それを最初に聴いたのは、友達の家だった。
どういう話の流れでかは知らないが、ドアーズの『ハートに火をつけて』と立て続けで聴いた。
当時洋楽のそれも旧い曲には疎かった僕にでも聞き覚えのある強烈なリフ、不気味に歪んだ歌声、そしてそう、曲の大半を占めるほどの長大な間奏が共通点だったのだ。
それら全てにおいて当時の僕には意味不明の、しかし迫力だけはひしひしと伝わってくるその曲は、キングクリムゾンの『21世紀の精神異常者』という凶悪なタイトルと共に、僕の脳裏に刻み込まれたのであった。
もっとも、実際にアルバムを手に取ったのは、それからかなり後のことだったのだが。
King Crimson - 21st Century Schizoid Man
アルバム冒頭、すぐに曲が始まらず霧笛の様なノイズが低く鳴るのは、それで音量設定を間違えたと思い込んでボリュームを大きく上げたところに、「あの」リフが轟音で響くようにするためだと言う。
キングクリムゾンの楽曲は、総じてその音楽自体聞き手に緊張を強いる部分がある。曲の出だしに驚くことは無くなったとしても、そこに慣れることはなかなか出来ない。
故に、僕はこの盤を、このバンドを決定的に好きになれない。と言うより、作品の方がそれを許さないのだ。
King Crimson - In The Court of the Crimson King (at BBC)
一方で、この作品が歴史を変えた名盤であることも確かだ。
『21世紀の精神異常者』のハードなアンサンブルと組曲形式、『風に語りて』のフォーク風味とフルート(管楽器)の音色、『墓碑銘』における圧倒的な叙情、『ムーンチャイルド』でのフリーインプロヴィゼーション、そして表題曲でのメロトロンによるシンフォニー。
それらプログレというジャンルを特徴付ける要素を満載しつつ、作品として高い完成度を保持している。
知識としてではなく、聴いた感覚としてそれは明らかになるはずである。それだけの風格が確かにある。
故に、僕はこの盤、このバンドから決定的に離れられない。と言うより、作品の方がそれを許さないのだ。
好き/嫌いで言うのは難しい。
それこそ墓碑のように、宮殿のように、僕の音楽嗜好のど真ん中に程近い所に、それは確かにある。否応無く。
そしてそれを聴かせてくれた友達を、主にその理由において、僕はこのブログで「先生」と呼ぶことにしている。