収穫2015 その25 ――『JIMI』は名作と言えるのか―― | Everyday People Dance To The Music

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日々人は音と共に踊る

しかし神戸祭りとは知らなかったなあ。ただでさえ休日の三宮には人が多い所に持ってきて、サンバパレードで道が横断できないだの、野外ジャズライブやってるだの、なかなか劇場にたどり着けな……いやライブは普通に見てたんすけどね(笑)。




まあ鬱陶しいと思う気持ちが半分、しかし祭りはやっぱり良いなあ。あくまで今回は映画が目当てだったので、コロナビールくらいしか楽しめなかったのが残念ではある。
祭りの後の、何とも言えない荒涼感というか寂寥感もたまらない。意味もなく夜のセンター街をぶらぶら歩き回って、余計な散財をかましてしまった。



というわけで、今回の収穫。



No.035:Various Artists『The Mod Scene -CUT IN THE 60s-』
三宮のブックオフも神戸祭り使用でえらいカオスなことになっていた。おっ、と思った盤はほぼ全部持ってるやつだったが、それらが棚の頭文字表示を無視して所構わず散らばってる様相だった。
この盤に関しては、皆大好き、リーバイスやスウィングガールズでも御馴染み、ヒップスターイメージの『メイク・ハー・マイン』が入っているというだけで買ったのだけど、スモールフェイセズとかグラハムボンドとかも入ってて良い感じ。ああ良いなあこれ今聴いてるけど。他のバンドについても調べてみるか。

No.036:Miles Davis『doo-bop』
これは完全に安かったから買った(笑)。と言うか、三宮店でもマイルスの廉価盤がかなりの数あってびっくりしたのだが、結構全体的にそういう傾向だったりするのかな。未聴。

No.037:Miles Davis『In Concert』
今回のCD屋巡りの目標はとにかくジミヘンとエレクトリック・マイルスだったのだけど、結局めぼしいものは見つからず、最後に寄ったタワレコで買ったのがこれ。
寝ながら聴いたのであまり大した事は言えないけど、とりあえずジャケ裏の曲名表示はあまり当てにしないで聴いた方が良さそう。少なくとも『レイテッドX』は、何だこれ?って感じだった(笑)。いや悪くはないんだけど、『レイテッドX』ではないだろこれ、っていう。

さて、以下に記すのはタイトル通り、シネリーブルで見てきた映画『JIMI:栄光への軌跡』の批評、というか感想というか、まあとにかくそのような文章である。
かなり長い文章に恐らくなる、且つ極力省くとは言え不可避的に根幹的なネタバレを含むため、段落を分けて行間を大きく開ける措置を取る事にする(このブログ追記機能が使えないんだよね)。読む場合は自己責任ということで一つ。




















で。


『JIMI:栄光への軌跡』本編映像+予告編

正直な所、僕はジミ・ヘンドリックスのバイオグラフィについては殆ど何も知らない、というか「誰もが知っていることを知っている」に過ぎない。盤はそれなりに数を揃えているつもりだが、まあ、それだけだ。
だから話の内容についてはかなり新鮮な目で見られたのではないかと思う。

ここで描かれているのは、ジミヘンがモンタレーのフェスで、凄まじい演奏の果てにギターを燃やして叩き壊すパフォーマンスによって伝説と化す、その直前までの話だ。であるからして、その「カタストロフ、によるカタルシス」は描かれていないということになる(実際は……いや止そう)。そしてそれだけではない。

この映画の邦題は『栄光への軌跡』であるが、例えばジミヘンの音源や映像を全く聴いたことも見たこともなく名前くらいしか知らないという人間がこの作品を見たとして、この邦題は多分内容にそぐわない物であるように映るのではないか。
一方原題は『ALL IS BY MY SIDE』。しかしこれも本編を見終わった後では似つかわしくないというか、皮肉なものであるように映る。

↑の映像のように胸のすく部分も、主に演奏シーンにおいて無いわけではないのだが、大概の場面でジミヘンは不安を抱え、苛立ち、迷い、鬱屈し、ままならないという描写をされている。憧れの女性にはすげなくされ、付き合っている彼女ともギクシャクし、実の親にも罵倒され、黒人にも白人にも混じれず、アメリカでもイギリスでも溶け込めず、評価も売り上げもあるとは言え満足の行くものではなく……という場面がとりとめもなく続いた末に、映画は突如と言う感じで終わる。
『ALL IS BY MY SIDE』=「全ては俺の元に」という位の意味だろうが、少なくとも作品中でジミヘンはむしろ、何も手にしていないようにすら見えた。
……この時は、まだ。

詰まるところそれから先の、それこそ栄光であったり、それに倍する苦悩であったり、突然の死であったりという事柄は全て「誰もが知っていること」であり、それらのイメージが、音楽が流れ続ける黒バックのエンドロールで、やはりとりとめもなく見ているものの脳裏を過ぎることこそ、監督が意図したことであったのではないかと思う。



後は細かい話になる。

予告編やチラシなどを見ていて果たしてジミヘンの再現度合いはどんなものだろう、と思って見ていたのだが、見た目や声なんかの再現度はかなり高かったのではないかと思う……まあよく知らないなりにだけど(苦笑)、こんな感じだと言われたら違和感なく頷けるだけの出来だった。
ただギタープレイが……まず音に関しては、「ジミヘンっぽい演奏を教科書どおり上手くこなした」それ以上でもそれ以下でもないという印象だった。いっそもっと破綻しててもよかったんじゃないかと思う。
さらにその音への当て振りが、いい加減なとまでは言わないまでも、どうも合ってないんじゃないかと思えてならなかった。もうカメラワークで、手元を映さない方が良かったんじゃないかと(笑)。良いんだよ顔で弾いてんだから顔映しときゃ(笑)。

あとエクスペリエンスの二人との息の合いっぷりが、見てて微笑ましかった。後に揉めて別れるのを知ってるから余計にかも知れんけど。特にノエル・レディングのキャラがチャーミングで良かったなあ。



本編前の予告編で、ブライアン・ウィルソンとJBの伝記映画が紹介されてた。どうも今年はそういう年のようだ。
シネリーブルでやるのならどちらも見に行きたくはあるが、仮にもっと出来がいいものであったにせよ、今回の程ハマることはないんじゃないか、と思っている。
万人にとって名作でなかったとしても(というかかなり人を選ぶ映画だろうと思う)、僕にとっては十分に素晴らしい作品だった、と言い切ってしまおう。うん。