5. ヨーロッパのファッション業界の実態、ものづくりに対する意識の違い
ヨーロッパではパターンメーカーの立場が日本より高いということを聞くことがあります。個人的に思うのは、ヨーロッパは日本に比べてデザイナーの地位が確立されており、尚且つ分業化が進んでいるため、デザイナー・パターンメーカー両者間のコミュニケーションがより盛んになり、お互いに必要としあうため、相対的に日本に比べて高く感じるのだということではないかと思います。デザイナーとパターンメーカーの距離が近いと両者の間でお互いに無い部分を補い合い、そしてお互いに持つものを掛け合わせることでより良いモノを生み出しやすくなるという利点があります。
また日本のように顕著な年功序列ではないため、若くても制作過程に関わる機会が多いということも優位な点として挙げられる様に思います。実力があれば若かろうが年を重ねていようが国籍がどこであろうが採用されるチャンスがあることも、ヨーロッパ特有の挑戦しがいのある土壌ということも言えるのでは無いでしょうか。
あとは感覚(センス)の面ではやはり大きな違いがあるように思います。私が特に感じるのは色と生地に対するセンスの良さです。色の組み合わせ方が上手なのもそうですが、同じような色味でも生地が違えば雰囲気はガラリと変わります。その素材と色との違いを感覚的に嗅ぎ分け素晴らしい組み合わせをさらっと提案できるところは優秀だなといつも思うところです。こういうことは小さい時からたくさんの色を見てきているからこそ自然と培われている感覚なのでしょう。また、ヨーロッパでは生まれながらにして何か祝い事や単なる外食の時でも、両親や兄弟姉妹が着飾って出かけるのが普通で、そういった習慣が小さい頃から身についている人たちの中でも特に洋服に興味を持った人々が洋服を作っているため、当然元々目の肥えた人が多くなるでしょう。ですので、そもそも小さい頃から様々な服に触れることができるような家庭環境で育てられてきたということは当然比較的裕福な家庭で育ってきたと言えますし、実際にその様な人が多く集まっていると実感します。そんな人たちの中で切磋琢磨するのですから、ヨーロッパで働けることは結果的に”モノを見る目”を養うことになる意義のある経験になる思います。
また、世界中の人々がヨーロッパをファッションの中心であり、なおかつ”挑戦する場”だと捉えている現実があります。だからこそ、私自身も日本を離れて挑戦したいと思った結果今に至っているのですし、他の多くの外国人も同じ気持ちで挑戦しに来ているのだと思います。最近では「パリコレへ挑戦する日本人デザイナー」という見出しもよく見かけるようになりました。そういった世界中から人が集まる多国籍な挑戦の地であるヨーロッパは間違いなく日本とは異なる刺激的な環境であり、その中で働くことは日本では得ることのできない特殊な経験であることは間違いないと思うのです。
第5章 は 『”日本人が重宝されている”の否定的側面』です
<参照用既出リンク>
はじめに
第1章 ファッションのグローバル化
第2章 世界で活躍する日本人
第3章 日本人の海外で評価される一般的な特性
第4章 3Dデザイナーの存在
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