講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要 4 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要4


4. 3Dデザイナーの存在

前の項では主にファッションに限定されない一般的な日本人の特性を述べましたが、ここでファッションに特化した点で申しますと、3Dデザイナーの存在があると思います。これは私の現在の職種でもあり以前の会社、そして日本での最初の会社での職種でもありますが、この立場に日本人が採用されることが比較的多いと感じています。それはなぜなのかと考えてみますと、この3Dデザイナーの仕事内容を考えると理解しやすいと思います。3Dデザイナーとは簡単に言えばデザイナー兼パターンメーカーのことです。各社によって職務内容に多少の差異はあるでしょうが、その仕事内容はと言うと、与えられた条件からデザインを起こし、その型紙も作成し、シーチング等でトワルを作成しフィッティングするというデザインからフィッティングまでの工程を一人でこなすというものです。しかしながら先ほども述べた通りヨーロッパでは分業が進んでいるため、デザイン業とパターンメイキング業を兼業する人は少数(あるいは皆無)です。分業化によって仕事の効率化が図れることは言うまでもありませんが、どうしても短時間で結果を求めたい時には多くの人間と工程を経なければならないため時間がかかってしまうという欠点もあります。しかしながら、一人の人間で複数の工程を完結できれば、これは会社にとって非常に便利な存在ということになるでしょう。また、パターンメイキングを知り尚且つ縫製も理解できる人間だからこそ創ることができるデザイン、形、仕様などがあります。全てを立体的に捉えつつ技術の面でも自己で補完しながらデザインしていくという技術は3Dデザイナー特有のものと考えます。つまり一般的なデザイナーには思い付きにくい立体的なアプローチができる、これが3Dデザイナーであり、分業が進んでいるヨーロッパでは成り立ちにくい職種でありながら、望まれてもいるポジションなのだと思うのです。これが比較的何でもこなせることを良しとする傾向が強い日本人にとって優位な職種であると認識するならば、一般の学校教育でもデザイン科とモデリスト科とに分けるのではなく、3Dデザイナー科という新たな科を開設し(もしくはデザイン科・モデリスト科を修了後に3Dデザイナー科に進められる)、それが日本人のデザインであり伸ばして育てていく点なのだという意識の元に新たな教育システムを作ることも良いことだと思うのです。Yohji YamamotoやCOMME des GARÇONS、ISSEY MIYAKEなどの日本の大先輩方の作品を見れば、型紙そのものがデザインになるということがよくわかると思います。そして、この大先輩方が世界に知らしめた”パターンメーカー的なデザイン”というものこそが日本らしいデザインの一つだと海外では認知されているのではないか、と私は考えています。であるならば、その強みを認識し伸ばしていくことが日本の新しいデザイナー育成への確実な近道なのではないかと思うのです。


第5章 は 『ヨーロッパのファッション業界の実態、ものづくりに対する意識の違い』です


<参照用既出リンク>

はじめに
第1章 ファッションのグローバル化 
第2章 世界で活躍する日本人 
第3章 日本人の海外で評価される一般的な特性 


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