講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要 3 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

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約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要3


3 日本人の海外で評価されてる一般的な特性

多くの人が思いつくように、一般的に日本人は細かい仕事を正確にこなせるという点が挙げられます。そして自分の与えられた業務に対して責任感がある、という点も挙げられます。ここでさらに注目したいのは、日本人の一般的な意識として良くも悪くも”仕事=人生”という感覚です。これは私自身がある程度そうであるため個人的にはこの感覚を否定したくはありませんが、仕事を人生と捉えると、仕事をしている時間そのものに意味を持たそうとしますし、仕事上での困難の克服は人生上の苦難からの脱出になり、仕事上での出世や昇級は人生におけるステップアップになる様に、仕事と自分の生き方との関係が非常に密接にならざるを得ません。この様な感覚を知ってか知らずか持ち合わせているために自然と”より良い仕事(=より良い人生)”を目指すことになり、自分が納得がいくまで追求するという積極的な姿勢に表れます。当然効率も良くなりますし、これらの結果としてより責任感を持った仕事が可能になるのではないかと考えています。しかしながらヨーロッパ人は一般的にはそうではなく、仕事はお金を稼ぐための手段、夏のバカンスに行くために必要なことといった具合で、可能であればやらなくていい事という認識があるようです。ですので、例えお金が支払われたとしても残業はできればしたくないし、残業をすることで自分の熱意や技術などを磨き他人との差をつけることができるかもしれない、などとはほとんどの人は考えていません(ただし、優秀な人、高い地位にある人はその限りではありません)。しかしながら、世の中(会社、雇用側)が求める人材は効率良く働き、仕事に対して積極的な姿勢と熱意を持つ人間であり、それが比較的日本人に多いということになるのではないか、そしてその事実がもはや海外でも浸透してきているため、日本人の活躍の場が大きくなっているということがあるのではないでしょうか。

また、ヨーロッパは非常に分業が進んでいます。つまり契約書に記載されていないことはしなくてもよい(すべきでない)というのが一般的な考え方なようです。一方日本人は(アジア人は)、自分の業務をこなすのは勿論のことですが、所属する会社に対する責任感が比較的に強いために自分の仕事範囲以外のことでも必要ならばそれらをこなそうとする傾向が強いように思います(しかしながらこの点は非常にありがたがられると同時に、うまく利用される点でもあるので注意が必要です)。この柔軟で積極的な姿勢が雇用側(上に立つ立場の人間)にとっては有難い存在なのだと考えます。

最後に言えることは、外国人の日本という国そのものに対しての認識・評価の高さがやはり大きいと思います。ヨーロッパ人にとってみれば、日本という国は自分たちの世界の真裏で、全く異なった長年培われてきた独特の文化をもつ国であり、そんな国で育ってきたのが日本人だという認識を多くの外国人が持っているのではないかと感じます。世界のファッションを語る時、フランスとイタリアを外して語ることは無いといってもいい程両国は世界のファッション文化の中心ですが、と同時にどちらも古くからの歴史に基づく全世界へ影響力のある文化を持つ国だと言えますし、両国民もそのことは当然のことながら誇りに思っています。その自負ゆえに自分たちとは全く別の独特な文化が世界の裏側で存在するということを知った時、対抗心や嫉妬ではなくそこに関心を寄せられるだけの心の余裕があるのだと思うのです。つまりは日本という国、並びに日本人という存在に今はまだ関心を持ってくれていることが日本人の活躍にも大きな影響を及ぼしていると思います。


第4章 は 『3Dデザイナーの存在』です


<参照用既出リンク>

はじめに
第1章 ファッションのグローバル化 
第2章 世界で活躍する日本人 

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