日本の技術も集結する、服地の展示会ミラノウニカ(MILANO UNICA)を訪れて:後編 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 前回の記事で、2015年2月4~6日にミラノで開催されていた生地の展示会ミラノウニカ(MILANO UNICA)に行き、特設されていた日本企業のブースを訪れた際に気付いた事を書きました。

<参照:日本の技術も集結する、服地の展示会ミラノウニカ(MILANO UNICA)を訪れて:前編


 ファッション産業全体に言える事なのだと思いますが、どれだけ優れたものを作っていたとしても、皆に認知されて評価されることで初めて価値が出てくるのです。その意味で言うと、今回の(特設された日本企業の)展示会場全体としても、また参加している各企業単位でも“自分たちの作品あるいは企業イメージを一番伝わりやすい方法でアピールしている”と思える様な印象はまだまだ感じられませんでした。イタリアのブースを回っていないので比較は出来ませんが、どこの企業のブースに行っても同じ様なやや冷たい雰囲気ですし、企業の担当者や仲介役の人がいて真ん中に商談用の机と椅子がありその周りを生地ハンガーをかけたラックが囲っている、といった様子です。ブランドのイメージや各企業の得意分野などは外からはあまり感じられません。どこに行ってもみんな揃った様に使う生地ハンガーはあのサイズじゃないといけないのか?ハンガーをキレイにラックにかけるのが一番の展示方法なのか?生地の特色を活かす最適な色でサンプルを作っているか?商談用の椅子はそんなに必要なのか?自分たちの得意分野が外から見てハッキリ理解できるか?など、まだまだ改善する所は多くある様な気がします。生地を作る(デザインする)仕事は間違いなくファッションの一部ですし、ファッションは技術はもちろんのことながら雰囲気や空気なども含めて評価される所が工業製品と大きく違うところなのですから。大学で建築学を専攻していた時に、自分の作品をプレゼンした時に「文字で説明しようとするな、画で説明しろ」「文字は出来るだけ小さく最少限に」と何度も言われた事を思い出します。確かに、文字での説明は興味を相当持った人でないと読みません。しかもその文字に誘導するためには感覚に訴える直接的な魅力が必要なのです。前編でも言いましたが、これは生地を開発する企業にとってのミラノコレクションなのですから、コレクションとしてのまとまり、魅力、新鮮さ、そう言った事を洋服を発表するブランド達が努力しているのと同じ様に意識してプレゼン方法にも時間をもっと割くべきである様な気がしてなりません。


 幸いにも同行してくれた友人がいくつかの企業のデザイナーや社長さんと知り合いだったので、僕は直接話を伺うことが出来ましたが、話を聞くとその技術者達の熱意、技術の高さ、他にはないその企業独特の味などが伺い知れました。しかしながらこれも日本人の僕が日本企業のブースに入り、そこの技術者と話してようやくたどり着いた地点なのです。もちろん知識がある人ならばどこの国籍の人だろうと生地を触っただけでその特色を理解できるのかもしれませんが、相手のレベルに依存して商売をするというのはあまりに他力本願な考えで得策ではありません。自らが最適な方法で発信することで出来るだけ多くの人に知ってもらい興味を持ってもらうという努力無しには、モノが溢れるこの時代にはその中に埋もれてしまうだけです。特に日本の技術者達は「良いものを作り続けていれば自然と評価されるのだ」と言った考えを持っている人が少なくありません。特にインターネットにあまりなじみのない世代に多いと思います。しかし、そういったことは数十年前の日本では有り得た事でも今では残念ながら非常に通用しにくくなっています。となると、「新しい生地の開発だけでも時間がかかって大変なのに、それらをどのように見せるかになんて時間をかけてられないよ」という声もあるかもしれませんが、逆にそこに時間をかけることの出来る企業こそが一歩先に抜きん出る事が出来るのだと僕は思うのです。


 僕自身はテキスタイルの専門家ではないので勉強しようという意思はあるものの、まだまだ知識が追いつかず、今回も技術者の方々の話を聞きながらレベルの低い質問を繰り返すにとどまってしまいました。そんな部外者である自分が外から色々とああだこうだと文句を言うのは正直簡単な事なのです。が、せっかく未来のある日本のテキスタイル分野ですから、より良いモノを開発していただき、より良い評価を受けてほしいと心から望んでいるが故に、今回の様な問題提起をさせていただきました。特に“技術”という点においてはそもそも日本が誇るべき分野でありますし、それが日本ブランドの大きな魅力であり、そしてそれを売りにしていかないといけないということはどこの企業も考えている事でしょう。となると、その中からさらに目立つためには今まであまり時間を割いて来なかったであろう商品の見せ方、そこで働いている人達も含めての企業としての雰囲気作り、そういったものにより意識をして注意を払う企業が元々の技術と相まって注目を集め始めるのではないのでしょうか。とにもかくにも、テキスタイルは本当に面白いし、なんと言ってもこの飽和状態と言われているファッションにおいて可能性がまだまだ大いに見える大変興味深い分野です。日本の企業には技術と共に雰囲気作り(ブランド作り)にも研究してもらい、ますます素敵な生地が発信される様になる事を願いつつ、個人的にもっともっと知識を付けて、そんな優秀な日本の技術者達と彼らとしか作れない様な生地開発に将来関われればな、、、などと考えていた一日でした。





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