注意すべきファッションスナップ写真の影響力 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 前回、前々回にstyle.comなどのファッション誌やサイトなどに掲載されているファッションスナップ写真が流行っている事で、それ目当てにあえて派手なファッションを装う人が多くなっているという事についての肯定的な点、否定的な点を書いて来ました。特に前回、洋服にはTPO(time時、 place場所、 occasion 状況・場合)が重要なのだから、ファッションスナップもどういった場所で撮ったものか、どういう目的で装ったものかの情報も示すべきだろうと書きました。

<参照記事:ファッションの本場、欧米のファッションスナップを見てみよう ( SS 2015):前編

<参照記事:ファッションの本場、欧米のファッションスナップを見てみよう ( SS 2015):後編



 Style.comは恐らく世界中で読者がいる非常に影響力のあるファッションサイトの一つだと思いますが、以前から紹介したファッションスナップのコーナーも非常に有名で、いい感じにお洒落な人からヨーロッパのファッションショー会場前ならではの全身最新作の服装の人や、奇抜な格好の人達など見る人の眼を楽しませてくれているのも事実でしょう。ただ、忘れてはならないのがこれらのファッションスナップで注目されている奇抜な格好で目立った格好をしている人は目立っているだけであって、お洒落な人として掲載されているとは限らない点です。こういったド派手な服装の人々は普段の生活では恐らく大半はいわゆる“お洒落さん”なのでしょうが、ファッションショー会場ということもありカメラの視線もあるから、だったら思い切り楽しんじゃおう!この時ばかりは普段着ないものを!と、思っているのでしょうし、彼女(彼ら)達のセンスを否定している訳では決してありません。ただ、こういった派手な写真が多く掲載される事によって、あまりファッション事情に詳しくない人から見ればやはり奇怪に映るだろうし、こんな目立つようなファッションがもてはやされているのか?最先端のファッション(お洒落)なのか?と、それでなくてもいわゆるファッション業界の人間とそうでない人々との境界(壁)を感じるのに、さらにそれを高くしている危険性もあります。現場にいるカメラマンや事情通からすればそういった背景なども考慮できるかもしれませんが、一般の人にすれば掲載されている事がそのまま現実に評価されていることだと受け止めたとしても全くおかしくはありません


 そしてここから生まれている新しい問題は、目立った人の方がやっぱりインパクトが強いため、どうしても目立った人の記憶が残りやすく、また同じ人が次回のファッションウィークでも目立ったファッションで写真に撮られ、そのうちに読者の間で記憶されてちょっとした有名人となり、ファッション業界に対しての発言権や影響力を持ったりする様になるのです(今多数存在するブロガーもそう)。この様な現象が、インターネットが普及した今素人でも有名に簡単になれる(お洒落でというわけでは無くても)機会が増えたということがあって、小さなブランドをスタートしたデザイナー本人が自分のブランドの一番インパクトのある服を自分で着て会場に現れて写真に撮ってもらう(タダで広告させてもらう)というような流れをつくったりするわけです。また、昨今はいくつかのブランドでの成功の影響も大きいとは言え、 有名な絵のパロディだったり、インパクトが強いパターンのパンチの効いたプリント物が流行っていますが、僕はこの理由はこういったことから需要が増えているのだと分析しています。またプリントは洋服の加工作業の中でも比較的安価で安定しているので、安くインパクトのあるモノを作るためにはもってこい!なワケです。こういったデザインを否定するつもりは全くありませんしプリントの可能性も僕は最近つくづく実感していますが、ユナイテッドアローズの栗野さんもおっしゃる様に、こういうものがファッション(お洒落)なのだと勘違いされる様な流れが一般人を巻き込んでいることは注意すべき点だと思いますし、さらには洋服を作る側にも安易な発想を与えてしまいかねない動きになっていることは留意しておくべきことだと感じています。


 次回に繊研新聞+から、上記で何度か出て来たユナイテッドアローズの栗野さんの記事から、目立つ事がファッションになっている危機感について、より深く考えてみようと思います。





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