『技術者にとってのファッション』 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
https://arlnata.com/index.html

<本日は久々に北村悦子さんに書いていただきました。>


技術者と一言で言っても様々な職種がありますが、それぞれにふさわしい服装があります。
建設作業員の作業着、歯科技工士の白衣、料理人のコックコートにコック帽、エステティシャンの制服、など等。
我々パターンの業界でもMaison Martin MargielaやChanelなどの海外のメゾンでは白衣を着たりします。
日本ではあまり見ない光景なので皆が揃いの白を着て仕事する姿は緊張感があって私にとっては実にカッコ好く見えます。
しかし技術者であってもパタンナーや美容師といった職種はたいてい私服です。
会社によっては服装に制約がある場合がありますが、フリーランスのパタンナーや美容師は完全に本人の好みで服を選ぶわけです。
ただ、仕事をしている以上好き勝手に我が道を行けばいいというわけにもいかないのが現実です。
例えば美容師の場合。
初めての美容院に行って服装にも髪型にも全く無頓着な(または自分好みではない)人が担当になってしまったら貴方は不安にならないでしょうか?
私でしたら出来ればこの人センス良さそうだな、と思える人に切ってもらいたいと思ってしまいます。
本人がお洒落に無関心だろうがその服装が気に入っていようがお客様がこの人に切ってもらいたくない、と思ってしまう服装は美容師として問題があると思うのです。
これは自身の職業であるパタンナーにも同じことが言えると常々思っています。
デザイナーはパタンナーの第一印象や何に興味を持った人間か非常に気にするものです。
理由は先ほど申し上げた美容院のケースと同じです。
このパタンナーに任せてちゃんと自分(デザイナー)が思ったような服が出来上がってくるのかとても心配なのです。
出来上がった服によって名前を出しているデザイナーが評価されてしまうのですから。

また、頑なに同じ雰囲気の服しか着ないというのもある問題が生じます。
例えばドレープ感のある女性らしいドレスが好きだからといってそればかりを着ていたとします。
するとデザイナーは「きっと彼女はメンズライクなパターンは苦手なんだわ」と思ってしまい違ったタイプのものを任せることを躊躇してしまいます。
その結果決まった雰囲気のアイテムしか依頼が来なくなり、パタンナー自身が色々な経験の巾を狭めてしまうのです。
実は私の過去の職場でこの手の悩みを抱えた同僚や先輩を何人も見てきています。
「年月をかけてそのアイテムを極める」という信念を持って臨むのであればそれも良いかもしれません。
でも一通りのアイテムをこなせるようになるにはやはり一型一型地道に経験を積むしか腕を磨く道は無いのです。

こういった意味で、制服のない技術者にとって“服装”とは“名刺”であり“プレゼンテーションの道具”なのです。
“信頼を得る為の一つのツール”であるとすればせめて相手が不愉快にならない服装で一緒に仕事をしなければお互いの為になりません。
幸い自分は色々な服を着てみたいという欲求が尽きないのでこの点は楽しみながら服を選んでいますが・・。

技術者は力量が第一、人前に出ないのだから気にしなくていい、と思われがちですが実は“服装”の役割は非常に大きいと思うのです。
「人は見た目で判断されてしまう」という表現はネガティブなイメージがありますが、時と場合によっては心に留めておく必要があるのではないでしょうか。




本日の記事に興味を持っていただいた方、是非下をクリックしていただき、多くの人と共有できるようご協力お願い致します!!

人気ブログランキングへ