好きなデザイナーと働くこと (後編) | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 昨日、自分とは違う方向性の人と働く事は“新しい自分の可能性を見つける事ができる”と言いました。そして僕自身の経験例を出して、新しい環境で働くようになったことで最近になって“素材を活かした服”“布の特性を活かした服”の意味がわかるようになってきたこと、また自分とは違う方向性の人と働く経験が自分の強みの幅を広げる事になるということを書きました。(参照記事:好きなデザイナーと働くこと(中編)


 とはいえ、最終的にはクリエイターたるものは自分の強みで勝負しなければなりませんし、いつまでたっても自分の知らない分野を開拓し続ける訳には行きません。それよりも、自分の方向性が決まりさえすれば、後は自分の強みをより高めることに時間を費やす事の方がよっぽど大事でしょう。しかし、自分の強みの幅を広く持つ事もまた、あなたの尊敬しているデザイナーとはまた違った角度から物事を捉えられるようになるということも忘れては行けません。


 “若いうちに苦労は金を払ってでもしろ”という親父の小言的なものがありますが、あながち間違いではないなと僕は思っています。経験の浅いうちは、自分の方向性があったとしても経験豊富な人の強みには一般的にはかなわない。だからこそ、自分の強みをさらに豊かにさせるために、自分が今まで気に留めていなかったようなことに眼を向けること。そしてそういうことのできそうな会社に運良く入ったのなら、好きじゃないと言って逃げるのではなく、どうせ費やす時間は好きだろうが嫌いだろうが一緒なのだから、思い切って入り込んで“知ろう”と努力すべきではないかと思います。そのためにはその人と出来るだけ一緒に仕事ができる様な環境に入り込まないといけません。そのためには最初のうちは“嫌なことでも自分から買ってでないといけない”でしょうし、興味がわいてくるまでの期間は辛い時間かもしれません。かといって、若く経験の乏しい時期に自分というものをまだはっきりと理解していないのにも関わらず、「自分には判らない」と早々に諦めてしまうには早すぎますし、逆に自分が天才だから他のことを学ぶ必要などないとでも仮に思うのであれば、 誰かの下に付いて働く必要など無いはずです。なので、経験の浅い間はこうやって自分の知らなかった世界に無理にでも飛び込んで、自分の可能性を広げてもらえるであろう環境の中でもがいてみましょう。そうすればいつの日か、新しい自分の可能性に気付き、自分の元々の可能性と組み合わせる事で誰も考えつかなかったアイデアを見つける事が出来るかもしれません


 有名なデザイナーのキャリアを見れば、色々な会社を転々とする人が結構います。ファッションデザイナーなんかは、2年前後の短い期間でキャリアをどんどん替えて後に独立したり、クリエイティブディレクターとして呼ばれたり、という人も大勢います。もちろん、経済的な条件などから若くして独立出来る人、出来ない人色々ですので一概には言えませんが、僕の個人的な考えから言うと、色んな人の考え方、モノの見方、生き方を吸収することが後々の“自分の形成”に間違いなく役に立つだろうと思う訳です。だからといって出来るだけ数多くの会社をこなすことが良いことかと言うと、そうではないでしょう。要は密度の問題です。僕のスタイリストの友人がこう言っていました、「その会社にとっておまえがいないと困ると思われたら辞め時だ」。“会社にとって”が“上司にとって”に代えてもいいでしょう。そう誰かが思ってくれるようになるまでは、“自分”がまだその会社(上司)に影響を与えるに至っていない。つまりまだまだその会社の中に飛び込んで、知る必要がある、知って試すべき事があるはずです。逆に会社(上司)としては、その人が会社にとって必要と思うのであれば、それなりの待遇を渋る事無く提供すべきでしょう。渋っていたら外の会社に盗られるだけですから。世の中は経済効率だけを考えて、出来るだけ安く良い人材を得ようと考えるようになって来ていますが、優秀な人間が安い給料でそれでも幸せを感じて働ける期間はたかが知れています。後にその人に見合った待遇をちゃんと与えなければ、後には憎しみしか残りません。企業側も働いているのは結局人なのだということを忘れず、出来るだけ良い環境を与えることも大きな仕事だと思います。


 少し話がそれましたが、センスを磨く方法は色々あるでしょうが、若い間に出来るだけたくさんの優れたセンスの持ち主と出来るだけ時間を共有できるような環境を自分で作り出す努力をすることで、自分の強み・方向性を固めて行く事。そのような環境を得るためには自分のエゴだけを突き通す様なアイデアだけ提案するようではダメですね。相手が再び自分を試してみたいと思わせる様に工夫をすること、そして自分の好きなことだけを考えず、自分の要素を出しながらも相手に合わせようとする過程の中に思わぬひらめきや、それまで気がつかなかったヒントが隠されていたりするものです。困難が人を成長させるとも言いますが、そういった試行錯誤を繰り返す事が結局自分の可能性を自分で探ることであり、結果として強みをより豊かにさせてくれるのだと思います、その仕事の相手のことを元々好きであろうとも、そうでなかろうとも、です。


(参照記事:センス(美的感覚)とは?(前編:受け身の感性)

(参照記事:センス(美的感覚)とは?(後編:センスを鍛える。センスを使う)


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