今日は金曜日である。 金曜の夕方6時に近所のおじさんに今まで何度か
時間や日付を尋ねられたことがある。
家の近くの坂を上ったところにアパートが建っていて、そこにおじさんは住んでいる。
さて、今日は6時ではなく、5時15分に私はその坂を上っていた。夕方とはいえ、
この暑い夏の日の午後5時15分は西日が強く、その坂はちょうど私の家から
西方向にあるため、非常にまぶしいので日傘を自分の顔を覆うようにさして
歩いていた。坂を上りきったところで、突然がばっとアパートの扉が開いて、
「ごめんな」と言う声が聞こえたので、驚いて顔を上げたら、例のおじさんである。
「今、午後5時?」と聞いてきたので、あれ、今日は6時ではない、なぜだ?と
戸惑いながらも、私は「5時15分です」と答えた。しかし、おじさんは中途半端な
15分というのが気に入らなかったのか、もう一度「今、午後5じやなぁ?」と
言うので、私もひるまず「午後5時15分です」と同じことを言ってしまった。
そしたら、おじさんは「午後5時やな、いつもごめんな」と言った。
いつも?? 私のことを覚えているのだろうか? 今日は楽器を背負ってなかったから
目印はなかったはず。しかも、おじさんはいつも6時に登場するのに、
なぜ今日は5時だったのか。密かにおじさん一人でサマータイムだったのか。
サマータイムなら、おじさんの家の時計は6時15分だったはず。
このおじさんは私に時間を聞く時、いつも大慌てで、時間までにどこかへ
行かなくてはいけない様子。その慌てた様子を見ていると、私は
「不思議の国のアリス」に登場する懐中時計を持って常に急いでいる白いウサギを思い出す。