ある年の夏、ある日の金曜の午後6時ごろ、家のすぐ近くを
通りかかった時、突然知らないおじさんに声を掛けられた。
「今、朝の6時?夕方の6時?」
そのおじさんは私の家からすぐの坂の上にあるアパートに
どうやら一人暮らしをされているみたいで、さっきまで
寝ていたらしく、はっと目を覚まして時計を見て、6時を示していても
それが朝の6時か夕方の6時か針時計では分からない、
慌ててアパートの部屋から飛び出してたまたま通りかかった私に
質問をした、ということらしかった。
確かに、辺りの景色を見るとぼんやりと明るく、
早朝とも夕方とも取れる光線具合で、目が覚めたばかりの
おじさんが不安な気持ちになるのも分からないでもない。
私は「夕方の6時です。」と答えた。
ところが、それから何日か経った金曜の午後6時に家の近くの
その通りを通りかかった時、また同じおじさんが
「今、朝の6時?夕方の6時?」と私に聞いてきた。
さすがに不安になった。なぜなら、その時私以外にも
何人もの人が通りを歩いており、他の人に聞いてもよさそうなのに
なぜわざわざ私に聞くのか?と思い始めた。
そういえば・・・2回ともギターレッスンの帰りでギターを担いで
いたことを思い出し、ああ、目立っていたのだ、と納得した。
最近では金曜にはバイオリンを担いでその通りを歩いている。
ふと、あのおじさんが出てきて、また質問をするかもしれない、と
そのおじさんのアパートの扉を眺めてみるが、残念ながら
バイオリンを担いでいる時は午後7時で辺りは暗いので
おじさんはパニックに陥ってないのだった。
