アリス「…言えていなかったこと?」
マオ「俺はニナに対して嫉妬心や激しい独占欲を抱いたことはなかった」
マオ「遠くに行かないで欲しかった、幼馴染として側にいてほしい…側にいたかった…そういう気持ちは抱いていたけれど、それはそんなに激しい感情じゃない」
マオ「でも…アリスに対してはニナには抱かなかった感情を抱いた」
アリス「私に?」
マオ「……2学期の終わり頃、ナセル…っていう奴と何かあったんだろ?」
アリス「あ………」
マオ「……詳しく聞いたわけじゃなかったけれど…あいつとアリスに何かあったのかもしれないって思った時…」
アリス「あ!違うの!あれはーーー」
マオ「俺はあいつへの怒りで我を失って手がでていた」
アリス「……え……?」
マオ「……ユウゴも…同じようにあいつを諌めたんだと思う…。でもあいつと俺とでは理由が違う」
マオ「俺は自分の為だった……」
アリス「自分の為?」
マオ「アリスが自分から離れてしまうことが…遠くへ連れて行かれてしまうことが我慢できなかった」
アリス「…………」
マオ「自分の側に誰かがいてくれることも…人から与えられる優しさや思いやりが当たり前のものじゃないことも…分かっていたはずなのに…」
マオ「いつのまにか…俺は自分の今の環境を当たり前のことのように思って甘え過ぎていたのかもしれない」
マオ「それだけ俺の中でアリスが隣にいてくれることは自然なことになっていた」
マオ「ずっとガキみたいな理由で燻ってて…そんな俺が…繰り返される毎日を少しずつ楽しいと思えるようになったのも……」
マオ「諦めようとしていた夢に向かって歩き出せたのもアリスが隣にいてくれたからだ」
マオ「誰か他の奴と一緒になってほしくない…。"友人"としてじゃない。異性として俺はーーー」
マオ「アリスのことが好きだ」
マオ「自分の目の前の気持ちに手一杯で気付くのに時間がかかったけれど…俺はアリスのことが好きだよ」
マオ「…でも…好きなんだと気付いたからこそ…俺は近くにいるべきじゃないと思った」
アリス「え?」
マオ「俺は…自分でも見たくなかった激しい狂気的な部分がある…」
マオ「あの時は…あいつに向かったその狂気が…万が一アリスに向かったら取り返しがつかない」
マオ「必要とされたい、愛されたい、自分を見て欲しい……ずっと…俺の中に燻っていた感情が…」
マオ「歪んだ形でアリスに向かってしまったらと思うと…それが怖かった」
マオ「それに……」
マオ「俺はこの先もニナを忘れることはできない」
アリス「…………」
マオ「俺は…ずっと…あいつのことを見ていた…。俺の根底には…どうしたって彼女がいる…」
…俺の世界を1番最初に救ってくれた人だったから…。
マオ「…恋愛感情を抜きにしてもやっぱり彼女は俺にとって大切な人だ。ずっと…ずっと…幸せでいてほしい…。これからも俺はそう願い続ける」
マオ「…それは裏切りなんじゃないか…。俺の身勝手さや…まだ気付いていない狂気が…ニナの影が…お前を傷つけるんじゃないか…。だから気持ちに応えたらいけないと思った」
マオ「でも…いざ離れてみたら…怖くて不安でたまらなくなった…」
…また俺は1人になる…。あたたかく色付いた世界が…また…色のない世界になる……。
マオ「ずっとそれが当たり前だったのに…それがどうしようもなく哀しかった」
マオ「俺の根底を支えてくれていたのは確かにニナだ」
マオ「でも今の俺の居場所は……側にいたいと思うのは……」
マオ「俺にこんなことを言う資格はない。…ないけれど…許されるなら俺はアリスの側にいたい」
マオ「これから先…一緒に生きていく相手はアリスがいい」
マオ「俺に一緒にいさせてくれないか?」