『…自分が満たされる為なら自分に向けられる好意も、その陰で我慢を強いられる人間の気持ちも平気で利用する…。お前は俺と同じか…いや俺以上に残酷な奴だよな』
…あいつの言う通りだ。…俺は人のことを責める資格なんかない。
ずっと…俺の大半を占めていたものから漸く解き放たれて…後に残ったものを見つめ返したときに…残ったものは……
残ったものは………
バリバリ…ボリボリ……
マオ「………?」
バリバリ…もっしゃもしゃ…
ユウゴ「あ、やべ…ちょっとカケラ落としたか…」
ユウゴ「んー…ちょっと油染みできちまったか?まあギリバレねーだろ…」
ユウゴ「あ?」
ユウゴ「…まあ楽にしてろよ」
マオ「おい…てめぇは人の部屋で何してんだ…」
マオ「どっから入ってきやがった…?テメェ…」
ユウゴ「人をゴキブリみたいに言ってんじゃねーよ。玄関からに決まってんだろ」
マオ「どうやって鍵を開けたんだよ!!」
ユウゴ「お前この家の住人のくせして何も知らねーんだな、おばさんがフツーに今日は家にいんだろーが」
マオ「あ?」
ユウゴ「ピンポンしたらお前んちのおばさんがフツーにでたよ」
マオ「…お前…今日家に誰もいなかったらどうするつもりだったんだ…」
ユウゴ「あ?お前がいんだろ?」
マオ「俺は寝てただろ…インターホンが鳴っても気がつかねぇよ…」
ユウゴ「甘えたこと言ってんじゃねーよ、俺がピンポン鳴らしたらすぐにでろや…。何だ?すっっかり忘れてたけどお前まだ病弱設定引きずってたのか?」
マオ「おい!誰が病弱設定だーー」
マオ ゴホッゴホッゴホッ!!
ユウゴ「ほら、無理してないで寝てた方がいいぜ?あ、お前もこれ食う?殆ど俺が食っちまったけど…」
マオ「お前の食いかけなんか誰がいるか…。気管支炎患ってる人間に薦めるものじゃねぇだろ…そんなスナック菓子…」
マオ「しかも俺の聞き間違えじゃなければ…お前何か落としてなかったか?」
ユウゴ「お前なかなか起きねーんだもん、飽きちまったから借りてた小説読んで待ってたんだよ、で、小腹が空いたから買ってきたものテキトーにつまんでたら……」
ユウゴ「ちょっとスナック菓子のカケラ落としちまった…そーいうわけだな」
マオ「"そーいうわけだな"…じゃねーよ…テメェ…まさかその小説…アレじゃねぇだろうな…」
ユウゴ「安心しろよ、明日香さんの小説にはそんなことしてねーから。万が一汚したりとかしたらお前リアルに俺のこと殺しそうだし」
マオ「当たり前だろ!馬鹿野郎!!」
※画像は高永明日香さんのブログからお借りしています。
マオ「…で…お前本当は何しにきたんだ?」
ユウゴ「借りた本返しにきたんだろ?」
マオ「それだけじゃないだろ」
ユウゴ「無駄に長い付き合いだけあるなー」
マオ「…何の用があったんだ?」
ユウゴ「…………」
ユウゴ「お前、男子のミスコンにエントリーしてたナセルっていうチャライ奴と何かあったりしたか?」
マオ「……何で…」
ナセル『正反対の2人だと思ってたけど、実はお前らキレるとやべー直情型2匹だもんな、実際…』
ユウゴ「って言われた。…俺はともかく…お前はあいつとそんな接点ないだろ?」
マオ「…………」
ユウゴ「何かあったのか?」
マオ「…アリスに…あいつが手を出そうとした…って聞いて……」
マオ「頭に血が昇って抑えが効かなかった」
ユウゴ「キレるとやべーってのはそれか。でもそれはアリスちゃんがあいつに傷つけられたと思ったからだろ?」
マオ「…………」
マオ「…勿論それもある…。でもそれだけじゃない」
ユウゴ「え?」
マオ「お前があいつを殴ったのはアリスの為なんだろ?俺は…自分の為だ」
ユウゴ「自分の為?」
マオ「……彼女に……」
ユウゴ「…え……?」
マオ「…彼女が…俺から離れて…遠くに連れて行かれるかもしれない…そう思ったら頭に血が昇って…手が出ていた…」
ユウゴ「…………」
ユウゴ「お前…それあの人にもそういう嫉妬起こしたりしてたのか?」
マオ「あいつにはない」
ユウゴ「…………」
ユウゴ「前に…"自分は彼女の側にいちゃいけない"って言ってたのはそれか?」
マオ「…ああ……」
ユウゴ(独占欲……)
ああ……そういう事か……
ユウゴ「あーーあ!……なるほどな…」
マオ「え?」
ユウゴ「そのへんもっかいちゃんと聞くからとっとと体調治しとけよ」
マオ「は?」
マオ「話しただろ?これ以上何を」
ユウゴ「馬鹿かテメェ…聞きたいことの1/3も聞いてねーよ…俺は」
ユウゴ「ばっくれようとしても無駄だぞ…。何故ならな…」
ユウゴ「お前から借りたその小説…明日香さんの初版のやつは今日持ってきてねーからな」
マオ「あ!?何でそれを1番に持ってこないんだ!お前!」
ユウゴ「予想以上に重くて持って来れなかったわ」
ユウゴ「今日みたいな汁っぽい感じで"もう話すことはない"とか自己完結してバックれてみろ…」
ユウゴ「チョコやらインクやらのシミが無数についた無残な初版本が返ってくることになるかもなぁ?」
マオ「最低な脅し文句だな!!テメェはそれでも文学部に進学するのか!?あぁ!?」
ユウゴ「うるせー、そんなの関係ねーよ」
ユウゴ「俺が食ったやつ捨てといてなー、じゃあな。お大事に〜」
マオ「おい!」
ゴホッゴホッゴホッ
マオ「!!」
…話したところで…今更……
ユウゴ「…………」
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いよいよ核心なるか?