その天下人が何のメリットも期待できない、名もなき一般人なんかに、個人で連絡を取ろうとすることなんかまずあり得ない。
…それが彼女らしさなのかもしれないし…敢えてそう務めているのかもしれない…。
…俺には想像もつかないような世界で生きている人だから、昔と同じ…変わらないものが心の支えになることだってあるんだろう…。
…子供の頃にあの人に抱いていた近所の年上の綺麗なお姉さん…そのイメージのままのあの人でいてくれていることは俺にとっては嬉しいことだ。
ただ…それを苦しいと思う奴もいる…。
いっそ完璧に手の届かない存在になって…自分とは住む世界が違うと向こうから切り離してくれればスッパリと諦めもつくんだろうに…。なまじ昔と似たような距離感で接してくれば…当然迷いや未練が生じる…。
…変わらない彼女を嬉しく思うのか…ある意味残酷だと思うのか…
ユウゴ「…本当に世の中は思い通りにならねぇな…」
エレナ「ねえねえ!見てみて🎵花火の時とはまた違う浴衣なの!どう??」
アリス「その浴衣も凄く可愛い✨エレナは何を着ても似合うわね!」
エレナ「男子の方は浴衣の着付け大丈夫なのかな?」
アリス「数人着付けができる男子がいるらしくて…その人達が手伝うんだって!」
エレナ「へー?着付けができる男子なんて珍しいわね〜」
ユウゴ「浴衣なんか着たの初めてだわ、俺…」
マオ「男は着る機会なんか滅多にないからな」
アリス「あ!ユウゴくん達の着付けが終わったみたい」
ユウゴ「男なら女子より楽なのかと思ったら案外そうじゃないんだな…。何だかめちゃくちゃ締め付けられたし…」
マオ「あれはお前がぴーぴーうるさかったからつい…」
ユウゴ「は!?お前あれわざとだったのか!?」
マオ「いつ終わるんだ、まだかまだかとうるさかったからな」
ユウゴ「おかしいと思ったんだよ!あんな力一杯締め付けやがって!!」
エレナ「着付けができる男子ってマオのこと?あいつ浴衣の着付けなんかできたんだ??」
アリス「マオくん、この前の花火の時浴衣着てたから…」
アリス(やっぱりマオくん浴衣がよく似合うわ…)
ユウゴ「お!アリスちゃんとエレナちゃんの浴衣はそれなんだ!」
エレナ「そうなの🎵どう??なかなかのものでしょ??✨」
ユウゴ「いいね!凄くよく似合ってるよ!」
マオ『アリスによく似合ってたよ』
アリス(どうしよう…意識しちゃう…。平常心…平常心…)
マオ「どうかしたか?」
アリス ドキッ「う、ううん!!何でもないの!!」
マオ「?そうか?」
アリス(平常心!!平常心!!)
エレナ「アリス今年こそはエントリーしてみない?
ミス白樺✨まだ間に合うよ!!」
アリス「無理無理むりよ!!私なんか💦」
ユウゴ「ミス白樺?」
エレナ「ああ!ユウゴ君は初めてだもんね!
うちの高校、ミスコンっていうのかな?そういうのがあって、文化祭の初日にエントリーした人が発表されて、最終日に結果発表があるのよ!」
ユウゴ「へ〜〜そんなのがあるんだ!」
エレナ「一応うちの学校の1番のメインイベントなの✨」
エレナ「アリスも去年声が掛かったんだけど、辞退してるのよね〜。勿体ないなー…出たら絶対グランプリに選ばれたのに…」
マオ「そうだったのか?」
アリス「やだ💦エレナったら💦私が選ばれるわけないわよ💦それにエレナが出るんなら絶対グランプリはエレナだよ!」
ユウゴ「エレナちゃんミスコン出るんだ?」
アリス「エレナは去年のミス白樺なの!1年生が選ばれたのは白樺始まって以来なんですって!
ユウゴ「マジで!?凄くない!?」
※持っているのは景品の一部。
ユウゴ「へぇーーー……」
マオ「…なんだよ」
ユウゴ「…申し分のない条件が揃ってるように思うけど…難しいもんなんだな…」
マオ「は?」
エレナ「エントリーするだけで結構豪華な記念品が貰えるから、それ目当てにエントリーする子もいるくらいよ!ほら!これが去年の記念品リスト!」
ユウゴ「へぇーー…」
ユウゴ「…は!?これ優勝賞品じゃなくて記念品なの!?」
エレナ「そうよ〜🎵結構凄いでしょ!!」
ユウゴ「めちゃくちゃ豪華じゃん!!」
エレナ「文化祭を盛り上げてくれた女子に対しての最上級の感謝の気持ちってわけ🎵」
ユウゴ「これなら俺もエントリーしたいわ!男はないの?」
マオ「…男のそんなコンテストなんか誰が見たいと思う…」
エレナ「…ふっ…ユウゴ君…興味があるようね?
そんなユウゴ君に朗報よ…。今年から男子の部門も登場することになったから」
ユウゴ「え!?まじで!?」
エレナ「そしてここに記念すべき第1回ミスター白樺に出場する男子のリストが揃ってるわ」
マオ「何でお前がそんなの持ってるんだよ」
エレナ「あたし文化祭の実行委員だもん!…ちなみに今回エントリーされた男子は1年から3年まで計15名よ」
マオ「実行委員も馬鹿なこと考えるもんだな…」
エレナ「あと数時間で発表されるからフライングしちゃうけど、あんたもエントリーされてるわよ」
マオ「……は?」
エレナ「2年男子部門であんたもエントリーされてるわよ」
マオ「は!?」
アリス「え!?」
エレナ「2年はワタル君、マサト君、イサム君、ナセル君、ユウゴ君、あと…何故かマオ…あんたがエントリーされてるわよ。…あ!1年からルイルイ選ばれてる!」
ユウゴ「…俺も??」
マオ「…おい…ちょっと待て…。何で勝手に俺の名前が載ってるんだ…」
エレナ「あんたは他薦枠よ!他の生徒からの推薦がエントリーの基準を達成したみたいね〜」
マオ「…いつそんなことやってたんだ?」
エレナ「いつも何も9月に入ってから掲示されてたでしょ!」
マオ「冗談じゃねぇ…。誰がそんなのに出るか」
エレナ「男に拒否権はないわ!他薦だろうが自薦だろうが、一度エントリーされたら後はステージに上るだけよ!」
マオ「女子は不服があって辞退を申し出たら受理されるんだったな?」
エレナ「当たり前でしょ!?嫌がる女子を見て楽しいの!?あんた!」
マオ「男も同じだとどうして考えない!!お前ら文化祭実行委員の中でこれはおかしいって話は出なかったのか!?」
エレナ「あんたの意見なんてどうでもいいわ!!他薦されたのはあんた以外はルイルイとユウゴくんなんだから!ご覧なさい!ユウゴくんなんか感動の涙を流してるじゃない!!」
ユウゴ「感涙は…してないかな…」
エレナ「ぶつくさ言ってないで有難いと思いなさいよ!何かの間違いであんたがエントリーされたんだろうけどこの機会にあんたも愛想ってもんをねーー!!」
ユウゴ「…あいつとエレナちゃんっていつもあんな感じ?」
アリス「あ…そうね…割とあんな感じかも…」
ユウゴ「俺、あいつがあんな腹の底から声出してんの初めて見たよ」
アリス「そうなの??」
…でも…思い返してみるとマオくんエレナに対しては"素の表情"で話してる気がする…。明らかに他の女子とは違うもの…。
……何かしら…この気持ち……何だかモヤモヤする……。
ユウゴ(…何だかんだ気は合うんだろうな…。あの子に対しては恋愛感情抜きに考えられるから楽な面もあるのか?)
アリス「……………」
お話を読む上でお役立てください✨✨