第4886回「名探偵ポワロ中短編、その33、ゲリュオンの牛たち、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険) | 新稀少堂日記

第4886回「名探偵ポワロ中短編、その33、ゲリュオンの牛たち、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)

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 第4886回は、「名探偵ポワロ中短編、その33、ゲリュオンの牛たち、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)です。


 『 ゲリュオンの最大の特徴はその形態で、三頭、または三頭三体の怪物であるとされた。・・・・アポロドーロスはさらに詳細に、「三人の男の身体が腹で一つになっていて、脇腹と太腿からは三つに分かれた身体を持っていた」と叙述している。・・・・


 (ヘラクレスは)ゲリュオンの飼う紅い牛を生け捕りにした。ゲリュオンは、メドゥーサがペルセウスに殺されたときに血潮とともに飛び出したクリューサーオールの息子である。彼は大洋オケアノスの西の果てに浮かぶ島エリュテイアに住んでおり、常人は行き着くことができなかったが、アフリカに行き着いたヘーラクレースが太陽の熱気に怒り、太陽神ヘリオスに矢を射掛けたため、ヘリオスはかえってその剛気を嘉して黄金の盃を与えた。


 ヘラクレスは盃に乗ってオーケアノスを渡ることができた。エリュテイアでは双頭の犬オルトロスが牛を守っていたが、ヘラクレスはオルトロスや牛の番人を棍棒で打ち殺し牛の群れを奪った。さらに牛を奪い返さんと追ってきたゲーリュオーンを射殺した。ヘーラクレースは冒険の途次、ジブラルタル海峡を通過した際に海峡の両岸に「ヘラクレスの柱」を残した。 』(ウキペディア)


 今回、ポワロが闘ったのは、新興宗教の教祖です。


「ヘラクレス第10の功業 ゲリュオンの牛たち」

 この事件にポワロが介入する契機となったのは、第1話「ネメアの谷のライオン」に登場したミス・カーナビです。彼女は、自分の犯罪者資質に気付いています。だから、ポワロの役に立つことをしたいと・・・・。そこで、彼女が切り出したのが、宗教団体"羊飼いの信徒"です。


 ミス・カーナビの友人の話では、教祖はアンダーソン博士という人物で、カリスマ性に富みハンサムな人物だそうです。年3回、儀式(イニシエーション)が行われているそうです。それだけなら問題がないのですが、最近3人の女性が、急死していることです。ただ、病名ははっきりしており、亡くなったのも別々の場所でした。


 3人の女性は、生前の遺言書によって、資産を全額教団に遺贈しています。ポワロはミス・カーナビに聞きます。「危険ですが、チャレンジしてみますか。相続した遺産を10倍ぐらいに吹聴し、教団行事に参加してください。ただ、最初は教団に対する疑念をはっきり表明してください」


 ポワロは、ジャップ警部を通じて教団のことを調べ始めます。ジャップいわく「エルキュール・ポワロほど利口なやつはいないのだ。アーメン! 何べんも好きなだけくりかえせ」(高橋豊氏訳)、いっそ教祖になったらどうだとポワロを茶化します。


 亡くなった三人の死因を再調査しましたが、それぞれ潰瘍性大腸炎、気管支肺炎、結核と不審な点はありません。一方、ミス・カーナビは、教団の広大な施設に行きます。ミス・カーナビは、"歓喜の祭り"と呼ばれる儀式に参加します。現われたアンダーソン博士は金髪の大男でした、まさしく神そのもののような存在でした。


 儀式に参加したものは、全員目隠しをされます。そして、右手を挙げて教義を唱和します。時々、参会者の呻きとも恍惚の声ともつかぬ溜息が聞こえてきます。ミス・カーナビは、右手にかすかな痛みを感じます。その瞬間、広大なビジョンが脳裏を駆け巡ります。「ピース! すべては可能だ」、宇宙的な視点で自分を見下ろしていました・・・・。


 翌朝目覚めたミス・カーナビは、すっかり"羊飼いの信徒"になっていました。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 ポワロは、教団近くのカフェでミス・カーナビと接触します。これまでは、ポワロの指示通り、まとまった金額の遺産もあれば、過去に結核を患ったことなどを教団に話していたのですが、今日のミス・カーナビは、異常でした。完全な信徒と化していたのです。


 カフェの中で、声を張り上げて、教団の素晴らしさを語り始めます・・・・。そして、教団最大の儀式が始ります。今回も、目隠しをされ、右腕を挙げるように指示されます。一瞬遅れて、警察が乱入してきました。注射器を押収します。他の信徒にはドラッグが、ミス・カーナビには結核菌が入っていました。


 アンダーソン博士は、生化学者でした。ウイルス、最近などによって、信者を死に至らしめていたのです。儀式(イニシエーション)では、ドラッグを用いて、信徒の宗教的興奮を引き起こしていました・・・・。コメントのいらない傑作短編です。


(蛇足) ミス・カーナビの狂乱は、教団スパイを意識しての演技でした。なお、この短編は、オウム事件を予言したようなストーリーになっています。欧米でも、多数のカルト教団が存在したようです。


(追記1) ポワロ版「ヘラクレスの冒険」について書いたブログは、次のとおりです。

「ネメアの谷のライオン」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11286156023.html

「レルネーのヒドラ」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11286808684.html

「アルカディアの鹿」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11286965494.html

「エルマントスのイノシシ」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11287272157.html

「アウゲイアスの大牛舎」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11287561272.html

「ステュムパロスの鳥」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11288156311.html

 

「クレタ島の雄牛」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11288293542.html

「ディオメーデスの馬」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11288502050.html

「ヒュポリュトスの帯」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11288824193.html

「ゲリュオンの牛たち」 今回のブログです。

「ヘスペリスたちのりんご」 今後書く予定です。

「ケルベロスの捕獲」 今後書く予定です。


(追記2) 「ヘラクレスの冒険 全12編」は、スーシェ主演ではドラマ化されていません。なお、名探偵ポワロ・シリーズについて、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください(ポ"ア"ロでは、一部しか検索できません)。