第4870回「名探偵ポワロ中短編、その31、ディオメーデスの馬、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険) | 新稀少堂日記

第4870回「名探偵ポワロ中短編、その31、ディオメーデスの馬、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)

 第4870回は、「名探偵ポワロ中短編、その31、ディオメーデスの馬、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)です。ヘラクレス12の功業と結び付けようと、ポワロは強引に自己合理化を図ります。ですが、日頃ギリシア神話と縁のない私にとっては、良き復習となりました・・・・。


 『 トラキア王ディオメーデスはアレースの子で、旅人を捕らえて自分の馬に食わせていた。 シケリアのディオドロス(歴史家)によれば、ヘラクレスはディオメーデスを逆に馬に食わせてしまい、馬は生け捕りにしたという。


 アポロドロス(作家)によれば、ヘラクレスが馬を奪った後にディオメーデスが軍勢を率いて馬を奪還しようとしたため、ヘラクレスは若衆の少年に馬の番をさせて戦いに出かけた。ディオメーデスを戦いで殺害し帰ってくると、少年は馬に食い殺されていたという。 』(ウィキペディア)


 第二次大戦直後のイギリスが舞台ですが、その当時から麻薬は深刻な社会問題だったのでしょうか。私が気付いた範囲では、タバコの値段と、マリファナなどの喫煙に相関関係があったように思えます。タバコの値段が上がるにつれ、路上でマリファナ特有の臭いが鼻をつくようになりました・・・・。


「ヘラクレス第8の功業 ディオメーデスの(人喰い)馬」

 ポワロが、この事件に関与することになったのは、一本の電話からでした。日頃からポワロが好感を抱いていた青年医師のストダートからのものだったのです。控えめな話し方で、ポワロの来訪を乞うています。ポワロは、興味深々で出かけます。


 ポワロが訪ねると、ある部屋に連れて行かれました。部屋中、大混乱でした。昨夜、麻薬パーティが開かれたのですが、ペイシェンス・グレイス(借家人)という女性が、銃を乱射したと言うのです。その弾丸は、通りすがりのホームレスの腕に当りました・・・・。


 「ペイシェンス・グレイスとは、優雅な名前ですな」とポワロは論評しますが、グレイスとは似ても似つかぬロクでもないオバハンだと言われます。ストダート医師の依頼は、そのパーティに参加していたシーラ・グラントという少女を救ってほしいということでした。シーラも、友人からもらった麻薬に手を出したことを反省しています。


 ロンドンからほどよい距離にあるマートンシャは高級住宅地です。シーラの父親は、そこで暮らしています。そこではグラント将軍と呼ばれています。グラント将軍には、4人の娘がいました。シーラも、もちろんそのひとりです。ポワロは、マートンシャに向います。その高級住宅地には、多数の知り合いがいました。ポワロは、グラント家を訪れる前に知人から、グラント家の話を聞いていきます・・・・。


 以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


―――――――――――――――――――――――――――――――












 ポワロは、グラント家を訪れます。インド駐留を"証明"するような工芸品・家具で埋めつくされていました。将軍は、かなりの年配であり、痛風であることをこぼします・・・・。ポワロは、シーラの姉にも会い、捜査を進めます・・・・。


 「麻薬が登場する本格推理に傑作なし」とは、私の勝手な感想です。やはりハードボイルド向きのモチーフです。ポワロは、痛風である将軍の足にわざとぶつかり、彼の嘘を見破ります。痛風でもなければ、将軍でもなかったのです。


 高級住宅地とは、別の表現を使えば、成金住宅地です。将軍は、娘たちを使い、成金たちに麻薬を売りさばいていたのです。娘たちは、「友人からもらったのだけど、試してみない?」と誘っています。もちろん、シーラは、友人からもらってなどいなかったのですが・・・・。


 ポワロは、将軍のさらなる悪を暴きます。娘4人は、すべて養子でした。


(蛇足) ポワロの活躍により、シーラの再生が暗示されています。そして、ストダート医師の元に戻るであろうことも・・・・。アガサ・クリスティは、同性である女性に対してだけでなく、成金にもシビアな作家でした。では、田園×布は成金住宅地?


(追記) 「ヘラクレスの冒険 全12編」は、スーシェ主演ではドラマ化されていません。なお、名探偵ポワロ・シリーズについて、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください(ポ"ア"ロでは、一部しか検索できません)。