第4520回「金田一少年の事件簿、金田一少年の殺人、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記
2012-03-25 15:14:15

第4520回「金田一少年の事件簿、金田一少年の殺人、ストーリー、ネタバレ」

テーマ:コミック

新稀少堂日記


 第4520回は、「金田一少年の事件簿、金田一少年の殺人、ストーリー、ネタバレ」です。友人に貸しており、欠本になっていた一冊(第13巻)が戻ってきました。金田一少年シリーズ第一期としては、最後に紹介する作品になりました。今回の作品での容疑者は、もちろん金田一一(はじめ)です。


 ルポライターの"いつき陽介"は、悲恋湖殺人事件以来の金田一の友人です。そのいつきが、金田一に協力を要請したのです。ノンフィクション界の大御所、橘五柳(たちばな ごりゅう)が新作を発表することになったのですが、出版権については、暗号解読に基づき原稿を発見した者(会社)が得るという提案をしたのです。


 もちろん、大御所の提案ですので、絶対です。暗号の発表については、橘56歳の誕生日を祝すパーティ会場で行われることになりました。会場には橘の軽井沢にある別荘が使われました。暗合は、「裏川辺(うらかわべ)奇々なる藻を」という不可解な内容でした。


 簡単に解いた金田一は、ここで悪ふざけをします。橘がカツラを被っていることを見破り、釣竿でカツラをむしり取ったのです。当然、橘は激怒します。いつきたちに諌められ、金田一は謝罪に行きます。ですが、金田一は、橘の部屋で何者かによって昏倒させられたのです。


 気がついたときには、橘は殺されており、金田一の手には凶器が握られていました。しかも、橘の住んでいる別館に通じる地面には、金田一の足跡しか残されていません。金田一の主張が正しければ、ぬかるんだ地面に、犯人の足跡も残されているはずです・・・・。


 以上のことから、重要参考人として、金田一一は逮捕されます。ですが、一(はじめ)は真犯人を突き止めるために、脱走したのです。最初の手がかりは、橘の暗合です。犯人は、原稿を入手するために、橘を殺したと・・・・。


 金田一少年は、暗合「裏川辺(うらかわべ)奇々なる藻を」を瞬時に解いていました。「URAKAWABEKIKINARUMO(W)O」、これを右側(逆)から読んだのです。「大村(おおむらに)にきけばわかる」、大村はパーティに出席していた出版関係者です。


 金田一は、大村に接触します。確かに、生前の橘から、誰かに聞かれたら、「時任に聞け」と答えるように言い渡されていました。ここで、謎の犯人が登場し、大村を殺害します・・・・。金田一は、さらに時任と接触しますが・・・・。彼の答は、「桂に聞け」でした。そして、金田一との接触中に、時任は殺されます。


 ここまでに、作家の橘を含めて3人が殺されています。暗合は、伝言ゲームの様相を呈しています。ですが、殺人現場で金田一は常に目撃されています。金田一の無実を祈りながらも、剣持(警部)のおっちゃんも、次第に自信をなくしていきます。ここで、警視庁が投入したのが、明智警視(※)です・・・・。一方、いつきは、パーティ参加者に協力を求め、金田一支援のための情報収集を進めていました。


 金田一は、ここで疑念をまとめます。

謎1. 橘殺害事件時、現場に通じる庭には、金田一少年のものしか残されていませんでした。では、金田一を殴打した犯人は、いかなる方法で脱出したのでしょうか。


謎2. 暗合リレーは、「大村→時任→桂」と続いてきました。そうすると、アンカー(最終者)は、原稿の隠し場所を知っているはずですが、名乗り出ていません。アンカーが犯人だというのも不自然です。彼(あるいは彼女)は殺人を犯す必要がないことになります。


謎3. 金田一が接触する相手が、金田一との会見直後に殺されています。犯人が警察筋から情報を得ているのか、それとも、いつきが要請したパーティ参加者の中に真犯人がいるということになりますが・・・・。


謎4. 橘殺害事件当初の記憶が蘇ってきます。部屋に入ってたときには壊れていなかった水槽が、目覚めた時には、床は水浸しとなり、ガラスの破片が落ちていました。ビデオ小僧(佐木2号)は、パーティの模様を撮影しています。その映像を見た金田一少年は、違和感を感じ続けています。壊された水槽とパーティでの光景の間に、何か関係があるのでしょうか。


 桂から、「野中に聞け」との回答を得ますが、その桂も殺害されたのです。野中は、軽井沢にいました。野中は、真剣には考えていません。ですが、橘からの伝言を金田一に教えます。「これで最後です」、ええっという展開です。その野中も、殺害されます。


 生き残っているパーティ参加者を、ここで列挙しておきます(登場順)。ただし、金田一、美雪、いつき、佐木2号の4名は除外します。

① 鴨下あきら(28)・・・・ いつきが提携している出版社の編集員です。

② 都築哲雄(52)・・・・ テレビ・ディレクターです。出版部門も持つようです。

③ 針生聖典(はりう きよのり、40)・・・・ カメラマンです。出版社とのコネを持っているのでしょうか。

④、⑤ 花村葵(17)、薫(17)・・・・ 双子の美人姉妹です。橘家でお手伝いさんをしています。葵には、目の下にホクロがあり、素直な性格です。一方、薫は気が強く、葵が助けようとした金田一を警察に通報しています。なお、薫には目だったホクロはありません。


 被害者は、全員パーティの参加者です。何らかの形で、出版事業に関与しています(ただし、落語家の桂は、司会を担当)。この局面で、明智警視が、金田一少年を射殺したのです。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 もちろん、金田一少年の射殺事件は、明智警視と金田一が事前に打ち合わせた狂言です。その夜、"謎の男"が、橘の書斎に入ってきます・・・・。暗合を解いたのです。ですが、明智警視たちが待ち受けていました。"謎の男"を取り押さえます。


 金田一は、暗合について解説します。暗号リレーは、「大村→時任→桂→野中」と続いてきました。金田一は、こう読みます。「大(おお)村時(と)任桂(けい)野中(のなか)」、つまり「おおどけいのなか」です(謎2に対する答)。連日報道されいる今回の事件は、明朝の新聞でも詳しく報道されるはずです。


 そうなりますと、全国の推理マニアの中で気付く人が少なからずいるはずだ・・・・。そう考えた"謎の男"が、大時計の中に隠されていた原稿(フロッピー・ディスク)を取りに来たのです。確かに、時計の中に隠されていました。金田一が次に解明しようとしたのが、足跡の問題です。何故、犯人の足跡は残されていなかったのか・・・・。


 金田一は、ドアからドアへと移っていきます。ドアの開閉を使って犯人は移動したと証明します(謎1に対する答)。ばあやの証言も傍証として使います。そして、犯人の特定につながる証明に移ります。金田一が入ったときには無事だった水槽が、目覚めた時には壊れて、水浸しになっていました。犯人は、何故水槽を壊したのか・・・・。


 金田一が注目したのは、水ではなくガラスでした。壊したメガネの破片を隠すために、水槽を壊したと断定します。ガラス片は、事前に鑑定に回しています。ここで、佐木2号の撮ったビデオが活きてきます。"謎の男"のメガネが変っていたのです。デザイン上の特徴ではなく、犯行後のメガネは、近眼用ではなく老眼用でした。そのため、目の大きさに違いが現われていました(謎4に対する答)。


 そして、"謎の男"の顔を顕します。犯人は、都築哲雄(②、TVディレクター)でした。最初は否定していたのですが、金田一の糾弾に屈します。動機は、腎不全を患う娘にありました。テレビ・ディレクターである都築に、ある医師が接触します。娘の弱みに付け込み、移植用臓器の密輸をさせていたのです。


 その臓器密輸をレポートしたのが、ノンフィクション作家の橘五柳(たちばな ごりゅう)でした。そこには、都築の名前も実名で登場していました・・・・。都築は、自決します。虫の息で、自分の腎臓を娘にと言い残します。明智警視は、警察へリを使い、都築の遺体を搬送させます・・・・。


(蛇足) いつきは、不本意な形で、都築に情報を流していました。協力を仰ぐ引き替えに・・・・(謎3に対する答)。いつきは、金田一に謝罪します。 


(2012.9.19訂正 ※) 明智警視につきましては、当初"白鳥"警視と表記していました。コメントによる御指摘がありましたので、訂正させていただきます。お詫びいたします。


(追記) 「金田一少年の事件簿」シリーズについては、ほとんどの作品を取り上げてきました。興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に、"少年の事件簿"と御入力ください。