第3805回は、「本当は恐ろしいグリム童話、その5、眠り姫(茨姫)、ネタバレ 桐生操著」です。著者は、比較的自由に、この物語にペロー的な変更を加えています。ストーリーを説明する際、便宜上、章とサブタイトルを付します。
「第1章 王女の誕生と仙女の呪い」
深い森の中に、行く手を妨げる強固な"茨の塀"がありました。数々の伝承が残されています。ですが、誰も真実は知りません。
物語は、100年前に戻ります。ある王国には、王子も王女も誕生しませんでした。王妃は、姑から責められます・・・・。そんな王妃が、泉で猟場番の青年と出会います。そして、・・・・。月が満ちると、王妃に王女が生まれました。
国中の仙女が、祝福に訪れます。それぞれの仙女は、愛とか、優しさとか、美しさなどを与えますが、7番目に現われた仙女は、「王女が15歳になったとき、"糸つむ"(紡錘)に刺され、死ぬであろう」と言います。仙女の予言は、いったん口にすると、取り消すことができません。
8番目の仙女が、その予言に修正を加えます。「王女は死ぬのではありません。ただ眠っているだけです。100年後、ひとりの王子が現われ、姫の眠りを覚ますであろう」 それからの王と王妃は、王女の教育に極端にナーヴァスになります。国から一切の"糸つむ"を召し上げたのです。
また、王女を男の子として育てます。御用学者が、糸つむは"男性"を象徴していると断言したからです。王女は、何も知らないまま、思春期を迎えます。そんな時に、誰もいないはずの塔に登ったのです。小姓がいました。小姓は、無垢な王女を騙します・・・・。その時、"糸つむ"が、王女の大事なところを貫きます。王女は、眠りにつきます。
8番目の仙女はこのことを知り、城中の人々を眠りにつかせます。王も、王妃も、番兵も、侍女たちも・・・・。そして100年が経過します。
「第2章 王子の出現と王女の目覚め」
誰も通れないと言われた茨の森を、ひとりの王子が通りかかると、自然に開いていきます。しかし、従者が通ろうとすると、茨の塀は元通りになります。王子は、城を目指します。そこら中に、人々が倒れていました。どうも寝ているようです。飲み物を飲む途中の人も、食事中の人もいます。中に入っていくと、美しいベッドに横たわる美女がいました。
見とれるうちに、いつしか王子は口づけていました。すると、その美女が眠りから覚めたのです。そして、城中の人々も、次々と目覚めていきます・・・・。王子と王女は、結婚します。ですが、物語はまだ終わりません。
「第3章 王子の趣味と王女の男装」
いつまでも、末長く、幸せに仲よく暮らしましたとさ、とはなりませんでした。ふたりの趣味とかセンスには、100年の隔たりがあったのです。服装などについても、ふたりの意見は、ことごとく対立します。うんざりした王子は、いつしか、別荘に愛人を囲うようになりました。館に帰らない日々が増えてきます・・・・。
王子は、中性的な女性が好みでした。愛人には男装をさせ、楽しみます。風の噂は、王女のもとにも届きます。何か大事なことを忘れているのです。昔、男装をイメージさせる何かがあったのです。自分の衣装ロッカーを調べると、男物の衣類が入っていました。全てを思い出します。かつて男の子として育てられたことを・・・・。
王女は、毎夜、男装して王子を待ち続けます。待ち続けた甲斐がありました。ついに王子が帰ってきたのです。そして、王女を抱きしめたのです・・・・。それ以降、ふたりは仲よく暮らすことになりました。王女の両親の努力も、無駄ではなかったのです。
(補足) 2枚の写真は、ウィキペディアから引用しました。2枚目の写真が"糸くり"です。どのように見えるでしょうか。