シエスタ | サト_fleetの港

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広く浅く、幅広いジャンルから、その時々に感じたことを “おとなの絵日記” のように綴っていきます。


連日、過去に例のない異常な猛暑が続いている。
ニュースや気象予報では、“危険な暑さ” と表現し、
“熱中症警戒アラート” というのも出されるようになった。
これが出されたら、極力外出しないようにとのことだが、
そうは言っても、仕事がある人は簡単に休めない。
ならば、どうすればよいのかという話になってくる。
そこで、参考になるかもしれない話題をひとつ。


今年は、日本ばかりでなくヨーロッパも猛暑に襲われている。
その対策として、ドイツが “シエスタ” の導入を検討しているという。
シエスタ (siesta) とは、スペイン語で昼にとる長めの休憩のこと。
この時間に仮眠をする人が多いので、昼寝の意味に使われたりもする。
スペインなど南ヨーロッパでは、わりと一般的な昼休みの形態で、
勤めている人たちも、この時間いったん帰宅して昼食や仮眠をとると、夕方また出勤して仕事をする。



ドイツでは、今このシエスタが見直されているというのだ。
シエスタの習慣のなかったドイツで、
医学界から、猛暑の夏は朝早く仕事を始め、昼はシエスタにして過ごす方式が推奨されたのが発端だという。
政府内では「悪い提案ではない」と、導入に肯定的な一方、
新聞などマスコミは「現実的でない」と反対する意見を紹介している。
シエスタで昼にいったん帰宅すると、その往復分よけいに通勤時間がかかるわけで、拘束時間が増えるとの懸念からだ。 

ドイツでは賛否両論のようだが、
NASA (アメリカ航空宇宙局) の研究では、昼に26分の仮眠をとらせた被験者の認知能力は34%、注意力は54%向上したという。
30分ぐらい昼寝すると、仕事の効率も上がり、事故も起こりにくいというわけだ。

すでにシエスタ制度を導入しているスペインでは、夏の最高気温が40℃を超える日も珍しくないので、
この時間帯は、商店も企業も営業は休む。
シエスタの開始時間は正午ではなく、午後2時〜3時で、休憩はこのあと数時間続く。
あわせて朝の出勤時間も、まだ涼しい時間に早めている場合がある。

午後の数時間シエスタで仕事を中断して休むので、再開後はたしかに仕事が終わる時間も遅くなる。
しかし、スペインの人たちの夕食時間は総じて遅く、就寝時間も遅いので、生活に支障はないようだ。
ようするに、まだ涼しい朝と夜に生活の重点を置いて、
能率の下がる暑い時間帯は体を休ませるという、過去何千年の経験から学んだ南国の生活の知恵なのだろう。

※『シエスタ』(1878年)
フレデリック・A・ブリッジマン画


スペインのほか、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、アフリカや中東の一部の国、中南米の旧スペイン領の国々なども、シエスタまたはこれに似た習慣がある。

ただ、この習慣に慣れた地元の人たちには問題ないだろうが、
知らずに旅行で訪れた人が、この時間帯どこも店が開いてなくて困ったという話を聞く。
シエスタの本家スペインでは、銀行は朝8時半から午後2時までの営業。
レストランは、昼食を食べにくる人を考慮して、午後1時〜4時の時間帯にランチタイムの営業をしているが、
この時間を過ぎると、夜の7時か8時頃まで休む。
その代わり、夜に営業を再開したレストランは、遅くまで晩餐を楽しむ客でにぎわう。



官公庁はさすがにまったく業務を停止することはないが、
職員が交代で休憩に入るので、シエスタの時間は人員が手薄になる。
(スペインでは公務員に関しては、2006年にシエスタが廃止された)
なお、大手スーパーやデパートなど、シエスタを行わない所もある。


さて、日本ではどうだろう?
飲食業などのサービス業界には、導入は難しいかもしれない。
せっかくのかき入れ時を逃してしまうからだ。
シエスタの時間に家に帰るというのも、
職場が家から近い人ならともかく、長距離通勤の人には土台無理な話だ。
ならば、会社内で仮眠する場所を設けてはということになるが、
従業員全員を一度に仮眠させる場所を作るスペースがあるかどうかだ。
冷房も完備して、簡易ベッドなども人数分用意しなければならない。
イチから準備するには、かなりの経費がかかる。

それに、世の中、働いているのは内勤の人ばかりではない。
屋外作業に携わる人たちもいるし、昼には会社に戻らない営業マンの人もいる。
すべての業界・業種に適用するのは困難だろう。
シエスタが無理なら、暑い時期にはリモートワークのような在宅勤務の人を増やすという手もあるかもしれない。
だがこれも、主にデスクワークが対象になり、すべての職種の人への普及は望み薄だ。

えっ?
「わたし、日頃から仕事中居眠りをしているので大丈夫です」って?
う〜む、
それはそれで、また別の問題が起こりそうな・・・。

それにしても、この猛暑、いつまで続くやら。