石鹸が 薄く小さくなって手からすべりおちた
アールグレイの薫り高くきめ細やかな泡が立つ薄茶色のそれは
灼熱の夏の太陽をよみがえらせる
大きく高い木々 ジャングルと海 レーザー光線のかなたの瞬く星ぼし
ただの箱型のものなど見当たらぬ 二つと同じ形のモノの無い輝く高層ビル群
さまざまな言語に多様な料理
自然の力と多くの種族に守られたきらびやかなその獅子の国に
たしかにわたしはいたのだが
思いがけず降り立つことのできたその国は熱気に満ちた非日常で
とまどいや大興奮で溢れていたっけな
石鹸が もうじき消えてなくなるのだ
泡と香りで顔面をおおいながら 朝のせわしない時間をこなしているというのに
なんだい?
目の奥なのか鼻の奥なのかが ツンときた
早送りされる灼熱の映像
川を渡る小舟 浮かび上がる空の客船 とっ散らかって停泊する海上の船舶
エネルギーと放射される熱気
瞬きって こういうかんじだ
喧騒 静寂 のぼせ 笑顔 エガオ えがお
光の瞬間的なきらめく鮮やかな残像?
始まって終るそういった
朝っぱらから急なおセンチに見舞われて黄昏てしまったな
この石鹸が消えて無くなってしまったら
またどこか 冒険の旅にさらされてくればいいだろう
そのご褒美に
素敵な香りの おおらかに泡の立つ
新しい石鹸を手に入れてくればいいじゃないか
涼しくなってくるとどうしてこう気弱気になってしまうかな
とりあえず次は プチ遠出して温泉へ行こう
源泉かけ流しで地球のパワーを堪能してこよう
そして石鹸を買ってこようじゃないか
郷愁にひたる時間はない
By.Purple