ああ、文章が追いつかない。
俺はあの世界をわかっているし その場にいたのも同然なんだから、もっとすらすら言葉に置き換えることが出来てもいいんじゃないかと思うんだが それがそうもいかないところがちゃんと修業した物書きではない泣き所だ。
もうひとふんばりだ、かたずけてしまおう。
双子というのがいるだろう。
俺には彼らがどんな関係になっているのかわからない。
まったく一つだった精神が二つの身体に半々づつ宿っているのか、同じ細胞が二つに分かれた違う精神のものなのか、その辺。
俺には、なんというか、そういった位置付けにあるような存在がいる。
それは双子ではない。
母親に、俺には死産したとか何かの事情でダメになってしまった兄弟はいるか聞いてみたが、胡散臭そうな目つきで答えた俺が生粋の一人っ子である確認しか取れなかった。
あいつは俺が眠っている時に、夢の中に現れる。というよりも、夢の中での俺自身の役どころがあいつの姿であることが常だというか。
俺にはそれがずっと昔から当たり前なことだったのでそういうものだと思っていたわけだ。
それが数年前の10月の終りに現実に出会ってしまったからびっくりした。
どうも 向こうも同じ状況だったらしく、お互いにもう金縛り状態だったな。
なんていうんだったっけ?ドッペルゲンガー。
印象としては適当なんだけど自分と同じ姿じゃないわけだからそれとも違うのだ。
もちろん意気投合はあたりまえだ。思い出話だって出来てしまうのだ。
自分なんだから、相手の経験は自分の(夢での)経験と同一なのだし。
出会ってしまってどちらかが死ぬとかそういうんでもない代わりに、どうやらこの季節にしか俺たちはこんなふうに会うことは出来ないようなのだ。
どちらが問題の立場かはわからないが、ハロウィーンがキーワードらしい。
あいつにとっても、この世界観の違う俺の環境が物珍しいらしく、周りの者たちにいろいろ話して聞かせるのだそうなんだが とんだお笑い種で終ることが実に多いとぼやいていた。
そこで俺もあちらでの経験を書きとめてみようと始めたのが この業界に入るきっかけになったのだ。
むこうでは俺たちは、いや、俺は、あいつは、か?
大きな食堂の厨房で、大鍋に得体の知れないなにかの肉だの香草だの鉱石だの骨だの、闇鍋のように投入しグツグツ煮込んで煮込みきって汁にする仕事を主にしている。その汁の用途は幅広く、薬にも、呪いにも料理にも魔術にも、何にでも応用が出来るのだ。
こちらにいる時俺は、そこでの日常を書いて せっかく書いたんだからと懸賞に投稿してみたらまさかの入選。
あれよあれよと持ち上げられて 今ではこれで御まんまをいただくまでになっている・・・。
ファンタジーじゃないよ。ミステリーでも、ホラーでも。オカルトでさえない。
リアルだ。ノンフィクションなのだ。だから、想像して組み立ててとかじゃないのだが。生みの苦しみとか厳密には無いし。
ただありのままを書けばいいだけなんだからな。そんなこと口には出さないけど。
それにしても、じれったいわが筆よ!
これを書き上げたら一眠りして、あいつと二人で会う時の計画を立てたいというのにな!
ああ、駄目か?
二人として会うまでは あいつは俺だし、今こうしている俺はあいつの夢の中でのあいつ本人か。。。
俺は、誰なのかな・・・・・・? わからなくなってくる。
あいつに会うのが待ち遠しい。