『サンセット大通り』は見たことがなかったけど、漫画『ヘルタースケルター』の登場人物がこの映画のタイトルを言っていたので、タイトルだけ知っていた。
以下、ネタバレしてます。ご了承ください。
サンセット大通りにある、とある邸宅のプールに、銃で撃たれて殺害された男の死体が浮かんでいた。
男性の声でナレーションが始まる。
売れない脚本家のジョー・ギリスは、借金取りに追われていた。車を運転中、借金取りの車に会って追いかけられ、故障。迷い込んだのは、サンセット大通りにある大きな屋敷。隠れるために、勝手に車庫に車を止めた。
すると、屋敷の中から女性が話しかけてきた。彼女は昔スターだったが、今では忘れ去られた大女優のノーマ・デズモンド。
ジョーを葬式屋だと思い、招き入れる。すごい豪邸で、ノーマに忠実な執事のマックスがいた。亡くなったのはサル。ペットとして飼っていたらしい。
このノーマさん、白黒フィルムでもわかるほど、化粧が濃い。口紅はたぶん真っ赤。アイラインは均等な幅でくっきり。アイシャドウをつけてるのがわかる。
執事を雇ってるし、お金に困ってるわけではなさそう。話し方は常に上から目線、プライベートでも大女優っぽさが抜けない。
自分で書いたという脚本をわたされ、読むジョー。そんなに良くなさそう。仕事仲間に仕事をもらえそうだったのに、ノーマに出会ったことで「脚本はやめた」と。そこへ執事が「ギリス様、行きましょう」どうやらジョー、お金持ちになった気でいるらしい。
「俺が退屈そうにしてると、彼女はショーを見せる」
ノーマ、傘をくるくる回し、ちょっとジャンプしてソファに寝そべってるジョーの横に。くわえタバコのジョーはつまらなさそうなのに、まったく気づいてない様子のノーマ。
見ていて、ノーマがイタい、痛々しいと思った。いまだに自分はスターだと思っていて、言動が年相応じゃないんですよ。
口ひげを描いてチャップリンの格好で出てくるノーマ。ステッキ持ってる。流れてるピアノの曲、少しだけ音程が合ってない音が混ざってる。それを少しげんなりした顔で見てるジョー。
仕事関係の電話が。こっちはずっと待っていたから、今度はそっちが待つ番だと出ないノーマ。けど、3日後には会いに行った。プライドが高い。
出入り口で止められる車。別の年をとっている警備員が気づいて「ご無沙汰です」「彼女は顔パスだよ」と入れた。
撮影所では、やはりノーマは過去の人。「あのひどい脚本の件だな」とデミル監督。彼が言うには「3千万人のファンが離れた。気の毒でね」17歳の頃は「度胸があって機転が利く若きスターだった」けど、「大勢の広報担当が残業させられた」「人間の限界を超えていたよ」。仕事がなくなるほど、嫌がられたってことか。
外で待っているジョーと執事。ジョーは好きだった女性のベティを見つけ、会話中に彼女が婚約したと知る。
一方、執事は、映画関係者がノーマの車を貸してほしかった、彼女に用があるわけではないと知った。でも、ノーマと再会したデミルは笑顔を見せ、本当のことを言えない。
自分の脚本でデミル監督が映画を撮ると思っているノーマは、自宅でありとあらゆるエステの施術を受けた。このとき、コードにつながれた機械が、『ヘルタースケルター』に出てくる、りりこが手術台のようなものに寝てるシーンにある機械と似てる。
顔を覆うマスクをしながらデコルテになにか塗られたり、二重あごを抑える小顔マスク?をつけていたり、美容を頑張るノーマ。
ジョーは、毎晩ノーマの家から車で移動し、夜の誰もいない撮影所のベティの部屋で、2人で脚本を書いていた。
ジョーのタバコ入れに「大好きよ ノーマ」と書いてあるのをベティが見た。それを、友人からもらったと嘘をつくジョー。この人、脚本家だからなのか、とっさにつく嘘が上手い。
本当のことを知らないノーマ。執事はジョーに「スターに育てた」。実は、ノーマの初期作品の監督で、最初の夫だった。
ジョーに、ほかに女がいるとわかったノーマは、脚本を手に取り、「名もなき愛の物語」というタイトル、ギリス&シェーファーと2人の名前が印刷されてるのを見てしまった。
その日の夜もジョーは撮影所へ。ベティは、婚約者に気持ちが向かない、理由は「あなたよ」と告白。すると2人はキス。
ノーマの屋敷に戻ったジョーはこれからどうするかを考え、ベティにノーマの話をしないで、ノーマから逃げようと決意。「人生の汚点を拭い去るのだ」と思う。汚点、って。その言い方ひどくない?
が、ノーマはベティに電話し、自分の存在をほのめかしていた。そこへジョーが。ノーマから受話器をひったくり、ベティに住所を告げ、サンセット大通りにあるこの屋敷に来るように言う。
ムッとしているジョーに「嫌わないで」「見てよ、この手を、顔を、目の下のくまを」「あんなに必死にやったのに、この数週間が無駄になる」と、悲しみ、いら立ち、枕につっぷすノーマ。美しさへの執着を手放せないノーマが痛々しく見える。
それに、ジョーが自分に興味がないのをわかってるはずなのに、すがりつこうとしてるのが……。
銃を買ったけど、自分を撃てなかった、とノーマ。ジョーは無言。その頃ベティは友人らしき女性の運転で、こちらに向かっていた。
ノーマは「愛してるの」とベッドの上で倒れこむような姿勢で言い続けるけど、ジョーはこの時も無言で、ベッドの近くをうろうろしてるだけ。そこへベルの音。ベティを迎える女―。
まるで自分の家のように歩くジョー、ノーマの写真が大量に置かれているのを見せ、ノーマの家だと伝える。なぜか堂々とふるまい、屋敷の説明をする。
「1人には広いから同居人が欲しかった」「よくある話さ。成功者の老女と、失敗ばかりの若い男。分かるだろ?」
これに対し「いいえ」とベティ。「もっとヒントを」「もう何も聞きたくない」ジョー、なんでこんなに余裕あるのか。
ベティから、このことは忘れる、「一緒に出よう」と言われても、ノーマからもらったスーツやシャツ、金のタバコ入れなどを残し、売れない脚本を書き続ける生活に戻りたくないジョージ。「こんないい契約はない」
「もう見たくない」と顔をそむけるベティ。婚約者に来てと言われていたアリゾナ。これで「なかったことに」ということか。
でもジョーは、またこの屋敷に来るよ、と。去っていくベティ。
2階から、2人の会話を聞いていた?ノーマがいた。
戻ってきたジョーは、すぐに部屋に入ってドアを閉めた。ノーマがドアを開けると、荷造りしているジョー。ポケットからアクセサリーを出しベッドにほうり出す。
欲しいものを買ってあげる、お金をあげると言うノーマ。断るジョー。「生きていけない」「死んでやるから」と言っても、「どうぞお好きに」と。銃を持ってきたノーマに、ジョーは、ファンはいない、デミルは車を借りたかったと真実を告げた。
そこに執事のマックスが。ジョーは、「教えてやれ」「手紙(ファンレター)も君が書いたと」 執事、そこまでしてたのか。
ノーマの目が見開いて、もう正気には見えない。
「もう50歳だと自覚しろ」「25歳のふりをするよりよっぽどいいぞ」と、現実をつきつけるジョー。でも執事が、ノーマを「あなたは稀代のスターです」ノーマも「私は稀代のスターよ」
そんなノーマに、「さよなら」とジョージ。
屋敷を出た彼に「ジョー」と呼びかけて発砲したノーマ。撃たれたジョーは、プールに落ちた。
こうして冒頭のプールに浮かんでいた死体と、ナレーションの正体が、実はすでに亡くなっていたジョーだとわかる。
ジョーを撃ったノーマは、正気ではない目つきで「大スターは永遠に年を取らないの」
亡くなったジョーが、自分がプールから出されている状況にナレーション。優しく引き上げられてると言い、「死ぬとみんなが優しくなる」
警察、マスコミ、やじ馬など人がたくさん。「パラマウント・ニュース」もニュース映画を撮りに来た。皮肉なことに、ノーマがずっと望んでいた映画撮影が始まる。
警察官に囲まれ質問されても、鏡台の前に座り、手鏡を見てるノーマ。部屋を出ると、屋敷内にたくさんの人が。デミル監督の撮影だと思ってるノーマ。ワンショルダーのドレスで、髪やドレスにラメが。今までで一番派手な服。
執事の言葉で、宮殿の階段を降りる王女になりきったノーマ。人々の前で、映画界に復帰したと話すノーマ。もう、妄想の世界に行ってしまった。しかもこの状況、妄想を強固にしそうだし。
「監督、私のアップを」と、そこにはいないデミル監督(でも、なんとも言えない表情の執事がカメラの横にいる)に言うノーマ。顔を少し下から見るような、鼻の穴が見えるアングルでノーマがカメラに向かって歩いてくる。
すると、ガラスに息をふきかけたように画面が白くなり、ノーマのアップの顔は隠される。
THE ENDの文字の向こうに、パラマウント社のロゴが。これを見てちょっと笑っちゃったよ。まさか、最後に笑うとは思わなかった。
ノーマが、ジョーをあきらめきれなくてなにか言えば言うほど、醜悪に見えてしまう。
最後のシーンだって、なんで下からあんな角度で撮ったのか。あれもたぶん、きれいに見せないように、ってことなんでしょう。こちらに向かって近づいてくるノーマが、もうホラーだった。
ジョーって、けっこうクズですね。笑 一時的にだけど、ノーマにいい思いをさせてもらったのに。でも女性の扱い方がよくわかってそう。クズでも顔が良くて、自信満々で饒舌に話すと、かっこよく見えてしまうんでしょうか。
ジョーは売れない脚本家のまま、死んだあとに写真をたくさん撮られてニュースになった。ノーマは自分が過去の人になったと受け入れられず、愛した男性には背を向けられ、殺してしまった。その上、精神的におかしくなった。
欲しいものは手に入れられない。恋愛もうまくいかない。頑張っても努力が報われない。人生って、うまくいかないものだよ、と観客に教えるかのような映画でした。