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想像と好奇心でできている

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日々、思ったことを書いてます。
野いちごでは、 『テレビの感想文』ときどき更新。

ある日の夜、クリスマスカードを床にばらまき、一人男が倒れていた。

彼は、トム・パーカー。通称「大佐」

伝説のロックスター、エルヴィス・プレスリーのを作った男。

 

病院に運ばれる最中、「エルヴィスを殺した」と様々な新聞記事が。病室で目を覚ました大佐は、あれは嘘だと否定する。病室には、彼一人しかいない。そして始まる、エルヴィスとの過去の回想。

 

サーカス小屋で芸を見せていたパーカーは、人々が引きつけられるのは、これは見ていいものなのか、迷ってしまうものだと感じていた。やがて芸能業界へ。カーラジオから流れてきた、黒人が歌っている曲。実は白人で、それがエルヴィスの歌声。

 

エルヴィスは黒人の多く住む町で育ち、音楽も、教会で黒人たちが歌う曲を聞いて育った。

 

まだエルヴィスが無名だったとき、ステージに立つ彼を見たパーカー。ピンクのスーツ、女性のようなメイク、何もかもが奇抜で、ほかにはいなかった。彼が歌い、足や腰を揺らしていると、だんだんとお客さんの中にいた女性たちに異変が。

 

バンドのメンバーが、女性が「感じてる」と言われたエルヴィス。目がとろーんとしてる人、興奮して立ち上がる人、見た目がいかにもおとなしそうなメガネの女性は、急に立ち上がって「あー!」と声を出した。若い女性たちが、エルヴィスから目が離せなくなっている。その異変に気がついた大佐。エルヴィスと大佐が出会い、レコードを出し、どんどん人気が出てスターになっていく。

 

 

 

 

時代はまだ、人種差別があった頃。白人のエルヴィスが黒人の音楽を歌うことが問題視される。さらに、エルヴィスの腰を振る動きが「わいせつ」「下品」だと批判され、「骨盤エルヴィス」なんて言葉も。テレビに出るなと抗議の声が。

 

大佐から「新生エルヴィス」として、燕尾服で歌うように言われたエルヴィス。あまり気がすすまなさそうだったけど、ステージへ。ところが、なぜかエルヴィスの横に、カートに乗った犬が出てきた。下半身を動かすのは禁止。燕尾服で歌い、しかも、犬に歌って聞かせるという演出。屈辱的なものだった。

 

実家の母親に「恥ずかしい」と言われる。でも、指示に従うしかなかった。ところが、エルヴィスの大勢のファンは「前に戻って」とプラカードを持ってエルヴィスの乗ったオープンカーを取り囲んだ。

大佐が思った、「これは見てもいいか迷うもの」は、賛否両論があるもの、と言いかえることもできそう。

 

母親は、大佐の影響で息子が「自分を失ってる」と、売れてお金が稼げるようになったエルヴィスを全否定。でもエルヴィスは、そんな母親と対立。一人オープンカーで夜の街へ向かい、車を降りると、彼に近寄ってくる黒人の人たち「E.P.」と声をかける人も。もう、スターになっていた。

 

エルヴィスが入ったのは、ステージで黒人が歌い、その音楽に合わせて人々が踊ってる、ディスコみたいなお店。この店内の様子が、本当にみんな楽しそう。母親のこと、大佐とファンが正反対だ、と不満げなエルヴィスに黒人の男性が「楽しい時は楽しむ、悲しい時は悲しむ。そんな場所だ。だからいいか。抑えるな。すべて吐き出せ」「そうだな、吐き出そう」とエルヴィス。

 

さっきまでの盛り上がりが落ち着き、男性がエルヴィスに話しかけてきた。

「なぜだ?」ファンが求めてるのは、燕尾服のおまえじゃない。「執事みたいだ」と。あれはエルヴィスらしくない。

明日も燕尾服かととわれ、「燕尾服は着ない」「動きを抑えるだけだ、抑えないと逮捕される」と冗談を言う。

 

「俺ならすぐ捕まるが、おまえは白人だし有名だ。大勢を稼がせているから捕まらない」「そうか?」「絶対だ。大佐は賢い男だ。”新生”には、ほかに理由が」

この、黒人の男性が「俺なら捕まるが」と真顔で言ったところに、この時代の考え方が出てる。

 

エルヴィスとB.B.(エルヴィスと話していた、黒人の男性)が、写真に撮られ、その写真は「エルヴィスの原点は黒人」という新聞の記事になった。

 

エルヴィスは、少しずつ大佐の指示より、黒人歌手のように自由に歌いたいと、反発するように。ものすごい数の観客の前で、「”新生”のうわさが飛んでる」と彼が言うと、観客から大ブーイングが。このときのエルヴィス、かっこいい。

「トラブル」を歌いだしたエルヴィスは、セクシーな動きをして、観客は大盛り上がり。が、大佐は苦い顔。「あいつが私に逆らった。なぜだ?」大佐は「やつを下ろせ」

 

エルヴィスはステージから下ろされる。観客たちは興奮状態で、危険な空気に。逃げるように車に乗り込んだエルヴィスが振り返ると、後ろのガラスに赤い打ち上げ花火がエルヴィスに重なって移り、撃たれたかのように。エルヴィスのやったことが、告発されしまう。その上、エルヴィスに召集令状が。2年ドイツに行く、軍隊か、刑務所か。家族と大佐の前で、暗い顔をしているエルヴィス。そして、ずっとお酒がやめられなかった母親が、亡くなった。

 

意気消沈している父親。クローゼットの母親の服に顔を寄せて、泣いているエルヴィス。そんなエルヴィスを見た大佐は、「彼女の代わりを私が勤める。彼女の名の下に」と、エルヴィスが海外へ行ってるあいだ、自分が家にいる、と言う。

「さあ、お父さんのそばに行ってやれ。よくなぐさめてあげるんだ」

 

外に出たエルヴィスと父親に、たくさんのカメラが向けられる。「ロックンローラーは孝行息子」と肯定的な見出しの記事が。

 

 

 

 

1959年、ドイツ。

大佐の声のナレーションで、「私は最も危険な展開を見落としていた。恋だ」

 

プリシラという10代の女の子と、部屋に2人きりのエルヴィス。大佐には、ドイツから戻ったら俳優に、と言われていたと華図エルヴィスに「夢はかなえるべきよ」とプリシラ。キスをしようとした2人。なかなか唇が触れ合わない。きっとこれが初めてだったんだろうな。

 

エるヴィスは俳優に転身。プリシラと結婚し、娘が生まれて、幸せそうな人生。が、メンフィスでキング牧師が暗殺されたあと、エルヴィス出演の映画は「駄作」「完全に飽きられた」と言われる。

 

 

 

1968年。

エルヴィスは散財するようになっていた。大佐、次はエルヴィスをファミリー向けで売り出そうとしていた。

 

が、エルヴィスは「本来の自分を取り戻したい」と、大佐以外の人の言葉を聞くように。クリスマス特番で、赤いセーターを着てクリスマスソングを歌うはずなのに、切るはずのセーターを着ていないエルヴィス。

 

裏では大佐やスタッフたちが困惑し、大慌て。でも、番組の収録中、ケネディが撃たれたとニュースが入り、中断。

 

 

 

 

大きなホテルで、大きな看板に「ELVIS」の名前が。今までにない、世界一のライブ。大成功に終わった。

でも、海外で公演がしたいエルヴィスと、国内のみのライブを続けたい大佐に、亀裂が入り始める。

 

大佐には国籍がなく、トム・パーカーという人物も存在しない。大佐が国内のみで、と言ったのは、パスポートがつくれなかったから。

 

この頃から、何かに「蝕まれ始めた」エルヴィス。過労で薬を飲むようになり、薬がやめられなくなっていた。大佐以外の人を雇ったり、下着姿の女性とホテルにいて、急に何者かに命を狙われてるとピストルを手に部屋から出ようとしたり。

 

妻のプリシラは、浮気を知っていた。とりまきたちが薬を飲ませるのをやめない、それが嫌だとエルヴィスに別れを告げる。

でも家から出ようとして、階段に座ってるエルヴィスを抱きしめてから家を出るプリシラ。心底嫌いになったわけではなさそう。広い家に、一人になったエルヴィス。

 

父親は、大佐に借金をしていた。エルヴィスもお金を使いすぎて、破産寸前。人は、大金が入ると金銭感覚が狂うっていうけど、スーパースターだからなぁ。レベルが違う。

 

テレビから「ジャクソン5が」と声が。エルヴィスは「落ち目だ」とか、太った体型を批判する言葉が。エルヴィスの人気に、かげりが出ていた。

一方、自分をスノー(お金)を振らせるスノーマンと言っていた大佐。オフィスの壁にスノーマンのイラストが。これは会社のロゴなのかな。

 

プリシラと車内で会話をするエルヴィス。「リハビリに行って。娘のために」「夢を持てば できるわ」

しかし、「夢はなくなった」。「約束して」と言われても、無言のエルヴィス。

 

タラップをのぼるエルヴィスは、杖をついていた。体力的にもしんどそうなのに、飛行機に乗って、次の仕事へ。

 

42歳。心臓発作で、自宅で、とエルヴィスが亡くなったとニュースが流れる。

 

大佐は言う。「何が彼を殺したか? 医師団は心臓と言い、ほかの者たちは薬と言う。私だと言う者もいる」「違う 本当に彼を殺したもの。それは愛だ。あなた方 ファンへの愛」

亡くなる数週間前、大佐が見た最後のエルヴィスは、立っていられなかった。それでも歌いきった。

 

 

 

最後、こんな字幕が。

 

「パーカー大佐によるエルヴィスの金銭的搾取は、エルヴィスの死後に始まった裁判で明るみに出た」

 

「大佐は無国籍として免責を主張したが、最終的に示談となり会社との関係も絶った」

 

「晩年、健康を害しながらベガスを徘徊し財産をスロットマシンに注ぎ込んだ」

 

「エルヴィスは史上最も売れたソロ・アーティストである」

 

「今も音楽と文化に影響を与え続けている」

 

そしてフルネームと、生年、没年が。

 

映画には台詞でしか出てこなかったけど、最後のほうは、スロットにお金使っちゃったのか。大佐も、お金でトラブルになっていた。伝説の人も、お金の魔力には勝てなかったのか。

 

エンドロールになったら、キラキラと金色で、文字も金色。すごい派手なエンドロール。

最後に、お客さんの感性のあと「ありがとう、感謝します」とエルヴィスの声で終わった。

 

曲名を知らなくても、聞いたことがあったエルヴィスの歌。エルヴィスを演じたオースティン・バトラーの演技がすばらしかったです。