その1の続き。
劇場に行く前に「ブックフェスティバル」という、古本屋さんのお祭りみたいなイベントがすずらん通りであって、お店ごとに古本が置かれたテーブルが、すずらん通りに二列、歩道に向けてずらりと並んでいた。
まだ舞台を観る前なのに、すでにちょっと楽しくなってしまう。
開演5分ぐらい前に、顔を上げたら、人! シューレスジョーさん!
(さらに、帽子がメロンの網っぽい、ベージュのニット帽だ、などと続けて思いました)
開演前に、客席の右側に置かれた大きなマンボウが、前説。(男性で、声がかなり低い)
声出し。「マン」客「ボウ」、マンボウの一番近くの席の人が話しかけられる。
集中して話しかけられたお客さんの男性は、咳をするマンボウに「口のなかになにかつっかえてる」からとってくれ、と言われて、口に手を入れると、出演者全員のサイン入りのカードがプレゼント。
素敵な演出付きの前説でした。
本屋に一人の女子が入ってきて、店主と少し会話したあと、舞台の中央に。
オープニングの映像が始まる。
スクリーンに、お城とか、真っ青な海の中とか風景が出て、大きな茶色い皮っぽい表紙の本が。
それがひらいて、真っ白なページに、名前が出てくる。
映像に、少しだけその女子の頭が重なってるんだけど、これが、「本を読んで想像の世界にいる」ってこと。
最後は、ポスターにもなってる、眼鏡をかけて、文庫本を手にこっちを見てる小林さんの写真。そして、小林さんのいない本屋だけの写真に。
(この、小林さんがいなくなった本屋、っていうのを見て「もしかしてこれ、最後死んじゃうって伏線? とすごく間違った予想をした自分。結局、お話のなかで誰も死ななかった。ダメだね)
このオープニング、素敵。私好きだなー、これ。
でもこれ考えたのやしろさんなんですよね。
そうですよね? こうういうのが好きっていう女子の気持ち、わかるんですか?! 笑
ストーリーに出てくる、妄想のシーンで使われていた、元ネタになっていた作品など。
・『さぶ』山本周五郎
同じいじめられっ子の友達と、会話中に「なに読んでんの?」と訊かれたときに、持っていた文庫本。
「山本周五郎」と普通のことのように答える。
客席が前のほうだったので、持っていた文庫本の表紙が見えた。
ちなみに、たずねた友達はまったく本を読まない。漫画が好きで、『君に届け』『近キョリ恋愛』など5つぐらい言った漫画のタイトル、すべて少女漫画。笑 おそらく「別冊マーガレット」とか「別冊フレンド」が好きだね。
・『変身』フランツ・カフカ
これも文庫本。表紙に「KAFKA」。アマゾンで検索したら、新潮文庫と判明。
ストーリーを話すと、友達に「劇的だね!」と言われた。
このあと、いじめっ子グループの一人の女子が話しかけてきて、いきなり自分の手をつかまれ、胸を触らせられるという、劇的なことが起きる。
トイレから戻ってきた友達になにがあったかは言えず、顔も全身硬直して、ロボットみたいな動きになってしまうほど動揺。笑
・『初花凛々』SINGER SONGER
妄想のシーンの最初と最後に流れた。
「これ、妄想ですよ」とお知らせする、テーマソングのような使い方をされてました。
Coccoの「ハロー ハロー ハロー」が流れる前に、急に現実のシーンになったり。
これ、Coccoさんがバンドを組んだ曲だそうです。Coccoの歌だと思ってたよ。とはいえ、作詞作曲はCocco。
検索してみてわかった。はい、早合点してたね。検索して正解。
・『走れメロス』
いじめっ子4人に、友達を「人質としておいていく。戻ってこなかったら殺してもかまわない」と、とんでもないことを言った。
「あいつ、あの眼になったらヤバいんだよ」と、人質役になってしまった友達が。
少年が妄想する人だと知るシーンでもある。
そのあと始まった、不思議な世界。
クイズマン(ボーイフレンド黒沼さん。答え「板抱きます」→「いただきます」。が、女の子は性欲のあと食欲を満たすって気にはならない、などと女の子について熱く語りだす。少年二人、甘酸っぱいなにかを共有。笑)、
ループマン(囲碁将棋文田さん。6回ぐらい小林さんが左から右へ走っていく。何回も同じ場所に来るたびに、ひとつずつ衣装が増えて見た目が変わっていく。手品師か、仮面のないタキシード仮面みたい。その衣装、奇抜探偵四条司?)
少しして、いじめっ子たちのいる場所に戻ってきたら、すでに1時間過ぎていた。クイズマンとループマンだったいじめっ子はさっきと変わらず制服を着てる。
ここで、さっきのことはすべて彼のつくった妄想の世界だった、と提示される。
妄想を現実と混同してしまうこともあるな、ってことも。
・『人間椅子』江戸川乱歩
まだいじめられていなかった頃、男子四人に女子一人と、少年で。
男子の「こんな妄想したことある、どう?」みたいな、ちょっとエロい妄想の話で。
これを男子に、リアルにやりたいと言われたら。聞かされたほうは引きます。男女関係なく、引きます。
女子を自分のひざにのせて「ぬくもり、感触、体温(確か、3つ挙げたんだけど、最後の体温以外正確かどうかわからない)、全部伝わってくるんだよ」と、眼を輝かせて、ちょっと興奮気味に言った。
この女子が、いじめっ子のリーダーの男子が好きな女子だったこともあり、このことがきっかけで仲間はずれ、いじめられることに。
このタイトルをセリフで言ったとたん、「ええー」と声が。出演者が演技で引くのとほぼ同じタイミングで、お客さんも引いてました。客席の空気が変わったのを感じましたよ。
つまり、それだけ客席が舞台の世界に引きこまれてるってことです。
・『蜘蛛の糸』芥川龍之介
カンダタ(ランパンプス小林さん)と、ほかの人たち(囲碁将棋根建さん、ボーイフレンド黒沼さん)糸引っ張ったら、お釈迦様(文田さん)が落ちてきた。笑
上に戻るのに4億年かかるそうです。
黒沼さんは、「ゲス」って言葉しか言わないセリフ。「ゲス」にいろんな感情が込められて、「ゲス」だけでいろんなことを言ってる。
妄想のシーンが終わって。
いじめられっ子グループの前で「ゲス!」ってつい言ってしまい、「はあ?」って文田さんに言われる。
・『山月記』中島敦
お父さんも妄想する人だった。笑
虎になってしまった男(シューレスジョーさん)と、チャイナっぽい服(青に、龍の模様が)を着た男、エンサン。(ボーイフレンド宮川さん)。
現実では、本屋の店主と、酒屋の熱血人情店主で、ショッピングモールへ店を移転することに反対してる二人、なんですけど。
妄想が、現実に影響を与えてしまった、というより、現実では狂気かもしれない?
「じゃあ俺は、山月の虎だな!」と酒屋の店主に意気込んでいるような言い方で言うシーン。
「サンゲツのトラ?」。これ、知らなくて、わからないままでいたくなかったので、帰宅後、ネットで検索。
「サンゲツ」を「三月」、エンサンを「エンさん」だと思いました。検索して良かったね。笑
検索してわかったこと。この話、狂気によって虎になってしまった人が出てくる話なんだそうです。
父親の妄想の世界(妄想)と、ベースになってる『山月記』(現実)がつながってる。
その3に続く。