11月3日 斜本~しゃほん~ その2 | 想像と好奇心でできている

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野いちごでは、 『テレビの感想文』ときどき更新。

その1の続き。


劇場に行く前に「ブックフェスティバル」という、古本屋さんのお祭りみたいなイベントがすずらん通りであって、お店ごとに古本が置かれたテーブルが、すずらん通りに二列、歩道に向けてずらりと並んでいた。

まだ舞台を観る前なのに、すでにちょっと楽しくなってしまう。


開演5分ぐらい前に、顔を上げたら、人! シューレスジョーさん!

(さらに、帽子がメロンの網っぽい、ベージュのニット帽だ、などと続けて思いました)


開演前に、客席の右側に置かれた大きなマンボウが、前説。(男性で、声がかなり低い)

声出し。「マン」客「ボウ」、マンボウの一番近くの席の人が話しかけられる。

集中して話しかけられたお客さんの男性は、咳をするマンボウに「口のなかになにかつっかえてる」からとってくれ、と言われて、口に手を入れると、出演者全員のサイン入りのカードがプレゼント。

素敵な演出付きの前説でした。


本屋に一人の女子が入ってきて、店主と少し会話したあと、舞台の中央に。


オープニングの映像が始まる。

スクリーンに、お城とか、真っ青な海の中とか風景が出て、大きな茶色い皮っぽい表紙の本が。

それがひらいて、真っ白なページに、名前が出てくる。

映像に、少しだけその女子の頭が重なってるんだけど、これが、「本を読んで想像の世界にいる」ってこと。


最後は、ポスターにもなってる、眼鏡をかけて、文庫本を手にこっちを見てる小林さんの写真。そして、小林さんのいない本屋だけの写真に。

(この、小林さんがいなくなった本屋、っていうのを見て「もしかしてこれ、最後死んじゃうって伏線? とすごく間違った予想をした自分。結局、お話のなかで誰も死ななかった。ダメだね)


このオープニング、素敵。私好きだなー、これ。

でもこれ考えたのやしろさんなんですよね。

そうですよね? こうういうのが好きっていう女子の気持ち、わかるんですか?! 笑



ストーリーに出てくる、妄想のシーンで使われていた、元ネタになっていた作品など。


・『さぶ』山本周五郎

同じいじめられっ子の友達と、会話中に「なに読んでんの?」と訊かれたときに、持っていた文庫本。

「山本周五郎」と普通のことのように答える。

客席が前のほうだったので、持っていた文庫本の表紙が見えた。


ちなみに、たずねた友達はまったく本を読まない。漫画が好きで、『君に届け』『近キョリ恋愛』など5つぐらい言った漫画のタイトル、すべて少女漫画。笑 おそらく「別冊マーガレット」とか「別冊フレンド」が好きだね。


・『変身』フランツ・カフカ
これも文庫本。表紙に「KAFKA」。アマゾンで検索したら、新潮文庫と判明。

ストーリーを話すと、友達に「劇的だね!」と言われた。

このあと、いじめっ子グループの一人の女子が話しかけてきて、いきなり自分の手をつかまれ、胸を触らせられるという、劇的なことが起きる。

トイレから戻ってきた友達になにがあったかは言えず、顔も全身硬直して、ロボットみたいな動きになってしまうほど動揺。笑


・『初花凛々』SINGER SONGER

妄想のシーンの最初と最後に流れた。

「これ、妄想ですよ」とお知らせする、テーマソングのような使い方をされてました。

Coccoの「ハロー ハロー ハロー」が流れる前に、急に現実のシーンになったり。


これ、Coccoさんがバンドを組んだ曲だそうです。Coccoの歌だと思ってたよ。とはいえ、作詞作曲はCocco。

検索してみてわかった。はい、早合点してたね。検索して正解。


・『走れメロス』

いじめっ子4人に、友達を「人質としておいていく。戻ってこなかったら殺してもかまわない」と、とんでもないことを言った。

「あいつ、あの眼になったらヤバいんだよ」と、人質役になってしまった友達が。

少年が妄想する人だと知るシーンでもある。


そのあと始まった、不思議な世界。

クイズマン(ボーイフレンド黒沼さん。答え「板抱きます」→「いただきます」。が、女の子は性欲のあと食欲を満たすって気にはならない、などと女の子について熱く語りだす。少年二人、甘酸っぱいなにかを共有。笑)、

ループマン(囲碁将棋文田さん。6回ぐらい小林さんが左から右へ走っていく。何回も同じ場所に来るたびに、ひとつずつ衣装が増えて見た目が変わっていく。手品師か、仮面のないタキシード仮面みたい。その衣装、奇抜探偵四条司?)


少しして、いじめっ子たちのいる場所に戻ってきたら、すでに1時間過ぎていた。クイズマンとループマンだったいじめっ子はさっきと変わらず制服を着てる。

ここで、さっきのことはすべて彼のつくった妄想の世界だった、と提示される。

妄想を現実と混同してしまうこともあるな、ってことも。


・『人間椅子』江戸川乱歩

まだいじめられていなかった頃、男子四人に女子一人と、少年で。

男子の「こんな妄想したことある、どう?」みたいな、ちょっとエロい妄想の話で。

これを男子に、リアルにやりたいと言われたら。聞かされたほうは引きます。男女関係なく、引きます。

女子を自分のひざにのせて「ぬくもり、感触、体温(確か、3つ挙げたんだけど、最後の体温以外正確かどうかわからない)、全部伝わってくるんだよ」と、眼を輝かせて、ちょっと興奮気味に言った。


この女子が、いじめっ子のリーダーの男子が好きな女子だったこともあり、このことがきっかけで仲間はずれ、いじめられることに。


このタイトルをセリフで言ったとたん、「ええー」と声が。出演者が演技で引くのとほぼ同じタイミングで、お客さんも引いてました。客席の空気が変わったのを感じましたよ。

つまり、それだけ客席が舞台の世界に引きこまれてるってことです。


・『蜘蛛の糸』芥川龍之介

カンダタ(ランパンプス小林さん)と、ほかの人たち(囲碁将棋根建さん、ボーイフレンド黒沼さん)糸引っ張ったら、お釈迦様(文田さん)が落ちてきた。笑

上に戻るのに4億年かかるそうです。

黒沼さんは、「ゲス」って言葉しか言わないセリフ。「ゲス」にいろんな感情が込められて、「ゲス」だけでいろんなことを言ってる。


妄想のシーンが終わって。

いじめられっ子グループの前で「ゲス!」ってつい言ってしまい、「はあ?」って文田さんに言われる。


・『山月記』中島敦

お父さんも妄想する人だった。笑 

虎になってしまった男(シューレスジョーさん)と、チャイナっぽい服(青に、龍の模様が)を着た男、エンサン。(ボーイフレンド宮川さん)。


現実では、本屋の店主と、酒屋の熱血人情店主で、ショッピングモールへ店を移転することに反対してる二人、なんですけど。

妄想が、現実に影響を与えてしまった、というより、現実では狂気かもしれない?


「じゃあ俺は、山月の虎だな!」と酒屋の店主に意気込んでいるような言い方で言うシーン。

「サンゲツのトラ?」。これ、知らなくて、わからないままでいたくなかったので、帰宅後、ネットで検索。

「サンゲツ」を「三月」、エンサンを「エンさん」だと思いました。検索して良かったね。笑


検索してわかったこと。この話、狂気によって虎になってしまった人が出てくる話なんだそうです。

父親の妄想の世界(妄想)と、ベースになってる『山月記』(現実)がつながってる。


その3に続く。