嫌われ松子の一生 | 想像と好奇心でできている

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中学校の教師だった川尻松子。

修学旅行先で金庫からお金を盗んだクラスの男子生徒をかばってあげたが、生徒に裏切られて罪をなすりつけられ、教師を辞職させられてしまう。

家を出てひとりになった松子の、転落の人生が始まる。


以下、ネタバレあり。


TBSのドラマの「嫌われ松子~」は、灰色の霧がいつも漂っているような感じだけど、この映画は赤、青、黄色の原色が多く使われていて、映像が気分的に明るくさせるので、見ていて楽しかったです。

たまに入ってくるミュージカルもそんなにしつこくなくてちょうど良かったし。

でも笑いをとろうとするボケがちょっとしつこかった。アパートの隣人のゴリさんの入れ墨とか。火サスで片平なぎさが犯人を崖に追い詰める、お約束のシーンとか。笑

監督はこの映画はディズニーのようなファンタジー映画にしたかったそうで、ところどころ花が出てきます。
でも、ファンタジー映画みたいにしたかったら、松子が妹の久美の首をしめようとするシーンとか、八女川が電車で自殺して切断された腕が松子の目の前に飛んでくるシーンは入れちゃだめでしょ。笑
あと最初に渋谷でスカウトされた女の子が、そのあとAVビデオに出てたりとか。

だからそういうのって、ファンタジーじゃないって。笑 ちょっとブラックな笑いもあります。

松子がトルコ風呂のソープ嬢になったシーンが好きです。

BONNY PINKが演じる綾乃が歌ってる曲と映像がすごく合ってて。

最初は売り上げトップになるんだけど、

だんだん年下の子に追い抜かれて売れなくなっていく様子が、

明るくセクシーに描かれてます。

これは女の悲哀を感じるところでもあるなあ。

母親はほとんど出てこない。(夕飯のときと、久美の首をしめたときにちらっと映るだけ)

父親は病弱な妹ばかりかわいがって、松子を愛さなかった。
松子が自分の身を滅ぼしてでも男を愛してしまうのって、それが原因だと思う。
すぐに全身全霊で人を愛してしまう松子。それが幸せなのか、不幸なのか。(と考えたら、不幸なんだけど)

脇役がみんなすごく個性的でキャラが濃い。

ドラマの沢村めぐみより映画の方が濃いです。
それもよかったです。

最後はふるさとの川とよく似た荒川の近くのアパートに住み、

誰も信じなくなり、お酒を飲んで寝るだけの生活をし、

髪はボサボサの女を捨てたような外見になり、

部屋の中に溜めていたゴミ袋がカラスになる幻覚を見て、

精神科に行って薬をもらい、
沢村めぐみからもらった名刺を捨てた荒川の河川敷で名刺を探して、

見つけたのに、深夜に夜遊びしていた中学生の少年達に家に帰るように注意したために、ボコボコに殴られ、殺されてしまう。

一人になりたくない、と人を愛し続け、不幸な方不幸な方へと歩いていき、

最期は無残に殺されて孤独に死んでいった松子の人生。
本人は「この上なく幸せでした」と言ってますけど、幸せだったんですかね。
「人間の価値って、人に何をしてもらったかじゃなくて、人に何をしてあげたか、ってことだよね」。

この点においては、松子は素晴らしかったけど。

私はこんな人生嫌です。寂しいからって、男にすがろうとは思わないし。
一人でも幸せに生きることはできますよ。

中島哲也監督の映画って、明るくて楽しいだけじゃなくて、

観終わったあとにジーンとさせます。

またこの監督の映画観たいです。