約1時間の映画。
でも、2時間見たかのような感覚と、余韻が残った。
漫画家の藤本タツキさんの、長編の読み切りが原作。
学年新聞で、自分が描いた4コマ漫画を連載していた、小学4の藤野。
クラスメイトから、おもしろいと絶賛されていた。みんなからほめられても、嬉しいと表に出さないものの、自分の漫画に自信ありげな感じの藤野。
ある日、先生から、京本の漫画を掲載したいから、藤野の漫画の1枠をゆずってほしいと言われる。
京本は不登校児。藤本のとなりに載った、京本の描いた漫画は、絵のレベルが違っていた。京本の描いた漫画は、写実的。
一方、藤野の描いた漫画は、京本のとなりにあることで、「絵のうまさ」がはっきりとわかるようになってしまった。
藤野の描いた4コマ漫画は、漫画としてはおもしろい。けど、残酷なまでに、どちらが絵が上手なのかがわかる。
この一件で、漫画を描くやる気が下がったのか、途中で連載をやめた藤野。
時は流れ、小学校の卒業式。先生に頼まれて、不登校の京本の家に、彼女の卒業証書を届けることになった藤野。
玄関から人が出てこない。ドアを開け、家に入り、さらに家の中に入って、京本がいるであろう部屋のドアの前に。ドアの前には、スケッチブックが積みあがっていた。
ふと思い立って、四コマ漫画を描いた藤野。
ひきこもり選手権をしている。家の前で、頑張れと応援する観客たち。4コマ目のオチで、最後は骸骨になっていた。だから、ひきこもったまま、勝ちも負けもなかった。なかなかブラックな結末。
ひきこもっている京本をちょっとくさすような内容の4コマ漫画。それを描いた紙が、藤野の手から落ちて、ドアの下へ。
部屋の中に入っちゃった。
ここから出てきそうにない京本。藤野はドアに背を向けて、京本の家を出た。すると、京本が走って追いかけてきた。靴も履かず、はだしで出てきた京本。慌てて出てきたのがわかる。そんな京本を見て、そんなに驚いていない藤野。
京本は、藤野を「藤野先生」と呼び、ずっとあの漫画を見ていたと伝えた。なんで、途中でやめてしまったのか、と。
京本、熱烈な藤野のファンだった。
中学生になった藤野と京本。藤野、紺色のスカーフの黒いセーラー服を着てる。2人は、いっしょに漫画を描くようになった。
京本は背景を担当。
2人は、漫画を編集部に持ち込み。編集者の男性は、2人の描いた漫画をほめた。これなら、佳作をとれると。
受賞を目指して、藤野キョウというペンネームで、漫画の創作を始めた2人。
コンビニで、少年ジャンプを見ている2人。なんと、2人の描いた漫画が、準入選。13歳で。すごい。
賞金をもらい、さっそく10万円をおろした藤野。藤野の10万円を見て、顔を赤らめてテンションが上がってる京本。
藤野の10万円で、電車に乗り、でかけた2人。結局、その日使ったのは5千円。帰りの電車で、人に会うのが怖かった、と話す京本。もう、京本はひきこもりではなかった。
17歳まで、7本の読み切りが掲載された藤野と京本。このまま、2人で漫画を描き続けていくかと思ったら。
本屋で、画集を見ている京本。
高校を卒業。京本は、美術大学に行きたいと藤野に告げる。たぶん、2人で漫画を描きたかったのだと思う。京本に「つまんないよ」と言ってしまう藤野。それでも京本は、たどたどしく、「絵が上手くなりたい」と。藤野に頼らず、自分一人でも。
ここで進路が別れ、コンビは解散。藤野はプロの漫画家になった。
棒グラフで示される、藤野のコミックの売り上げ。順調に売れていた。グラフの線がてっぺんまでいくことも。11巻で、アニメ化決定。
京本は山形市の美術大学に進学。
しかし、ある日、美術大学に男が侵入。藤野はニュースで知った。事件現場になったのは、京本がいる美大だった。12人が死亡。その最初の犠牲者が、京本だった。
男は、自分が描いた絵をまねされたと。精神的に不安定になっていた。おそらく、自分の絵をまねしたやつが美大にいる、という妄想で。
お葬式の祭壇の、京本の写真。ああ……。これからって時だったのに。
藤野の連載は休止。京本の部屋の前にいる藤野。
ドアの前に積み上げられているスケッチブックの一番上に、少年ジャンプが。それを読み始めた藤野。すると、その中に細長い髪がしおりのようにはさまれていた。
それは、昔、藤野が描いた、4コマ目に骸骨になってしまう、あの漫画。
京本、とっておいたんだ。それがここに。
自分が描いた漫画のせいで、京本が死んだと思った藤野。いや、そんなことないって。
2人で漫画を描いていなかったら。京本がひきこもりのままで、外に出なかったら。自分を責める藤野。偶然とはいえ、これはつらい。
自分が描いた4コマ漫画の紙を、びりびりに破った藤野。その一部が、落ちて、ドアの下へ。
美大で、ソファに座っている京本。
下に字幕が。字幕は、事件が起きるまでを説明。雑誌に書かれているかのような淡々とした字幕の文章。
不審者の男が入ってきた。目つきがおかしい。京本を見つけると、いきなり話しかけてきて、持っていたバールを振り下ろした。えっ、京本が殺されるシーンが始まったの? 逃げられない京本。
と、そのとき、不審者の男に飛び蹴りする人が。ふっとばされる不審者。
ふっとばしたのは、藤野。蹴ったせいで、足を骨折して救急車で搬送される。ここで初めて会ったかのような2人。
最初、どういうことなのかわからなかった。でも、だんだんとわかってきた。これは、「京本が死ななかったら」という、藤野の願うストーリー。現実ではない。
漫画みたいに京本が助かって、また、2人が出会って始まっていくストーリー。
藤野がぼろぼろ涙を流し、泣いているシーンで、それは終わった。
誰もいない、薄暗い京本の部屋。窓は開けっぱなしで、風が吹いてカーテンが揺れていた。
ドアにかけてあった、藤野が背中にサインしたはんてんが。
自宅に帰った藤野。大きな窓ガラスの向こうには、ビル群と、空が。こっちに背中を向けて、また、漫画を描き始めた。
エンドロールが流れる。だんだんと青い空が、夕焼けに。夜になっていく。
京本がいなくなっても、それでも現実は続く。
やがて、部屋の中もほとんど真っ暗に。明かりを消した藤野。
唐突に立ち切れられてしまった、京本の人生。
もし彼女が生きていたら、美大を卒業したあと、藤本に会いに来た、なんて未来もあったかもしれないのに。もしかしたら、京本も漫画家になっていたかもしれない。
あまりセリフがない。漫画を描くシーンは、こっちに背を向けていすに座っている。
タイトルの「ルックバック」、背中を見ろ、って、藤本の背中を追いかける京本ってことでもあったのか。でも、追いかけるんじゃなくて、自分で選んだ道を行きたかった京本。
最後も、藤野が漫画を描いている、後ろ姿で終わる。空の色の変化で伝わる、時間経過。
また、漫画を描き始めた藤野。いつものように。今までと変わらず。藤野は、きっとこれからも、こうして漫画を描き続ける。
いやぁ……、泣けた。それに、ひたむきに夢を追いかける藤野と京本に胸を打たれた。