この国の精神 緊急 「ばくち」国家日本 | 秋 隆三のブログ

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昭和21年 坂口安吾は戦後荒廃のなかで「堕落論」を発表した。混沌とした世情に堕落を見、堕落から人が再生する様を予感した。現代人の思想、精神とは何か。これまで営々と築いてきた思想、精神を振り返りながら考える。

<「ばくち」国家日本>

 前回、我が国のコロナ対策を「一か八かの新型コロナウイルス対策」と題して「ばくち」政策について論評した。ところが、共同通信が、3月26日のNYタイムズ電子版に以下のような記事が掲載されたとネットで報じた。

 米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は26日、新型コロナウイルスの日本での感染状況について「厳しい外出制限をしていないのに、イタリアやニューヨークのようなひどい状況を回避している」と指摘、世界中の疫学者は理由が分からず「当惑している」と伝えた。
 

日本が医療崩壊を避けるため、意図的に検査を制限しているとの見方を紹介。米コロンビア大の専門家は、日本のやり方は「ばくち」であり「事態が水面下で悪化し、手遅れになるまで気付かない恐れがある」と警鐘を鳴らした。
https://jp.reuters.com/article/idJP2020032701001806
 

 何と、私が指摘したと同じことを考えているではないか。「どうせ感染が広がるのならば、うまく感染を拡大させるか、失敗して感染爆発を起こすか」のいずれかに賭けるという「ばくち」政策である。

<検査数が何故すくないのか>

  厚生労働大臣の田村某が、BS-TBSの報道番組で、国は、以下の基準を満たしていれば相談センターと医師が相談して感染検査が受けられると強調して説明していた。

  A  風邪の症状や37.5℃前後の発熱が4日程度続いている。(高齢者・妊婦・基礎疾患がある方は

    2日程度)
  B  強いだるさ(倦怠感)や息苦しさがある

  この基準は、WHOが定めている基準と同じである。ドイツも基本的に同じであるというが、致死率が極めて小さいことを考えると、医師の指示だけでも検査が可能としていると思われる。前回も説明したように、検査装置の感度、つまり精度が仮に95%であったとしても、真に新型コロナウイルスに感染している確率がわからなければ、検査結果が真に陽性である確率は分からない。
 

  ドイツのデータの詳細は分からないが、報道情報を基に検査結果が真に陽性となる確率を、以下の仮定条件によって計算してみよう。
   検査者件数 40万件 初回スクリーニング 20万人
   初回検査結果が陽性であった感染者数 2万人
   致死率を世界のデータを参考に、かつドイツ医療レベルを考慮して1%とする。
   現在の死亡者数 114人
   検査者のうち真に陽性である人の確率 2.85%
   検査装置の精度(感度) 95%
 

  検査者のうち陽性と診断された感染者のうち真に陽性である感染者の確率は、僅かに53%という計算結果になった。つまり、感染者数2万人と言われているが、真に陽性である感染者数は、11,000人程度であるということである。これは、初回スクリーニング検査者数を20万人として計算したものである。

  真の感染確率を求めることは容易ではないが、ランダムサンプリングと検査、診断(CT、病理学検査)を数度実施すれば算出することができる。この確率が求められれば、検査結果が陽性である場合、真の感染確率を求めることが可能となる。ドイツのように検査基準を緩やかにした場合、陽性と判定されても真に陽性となる確率は、50%程度まで低下すると考えられるため、死亡者数を感染者数で割った致死率では正確な致死率を表しているとは言いがたい。恐らく、致死率は現在の3倍~4倍程度にはなると推定される。ちなみに、現在のドイツの致死率は0.6%程度である。

  一方、イタリアはどうなのだろうか。現在10%を超える致死率である。イタリアの場合には、ドイツよりもさらに低い基準で検査をしていると考えられるので、致死率はさらに高くなると推定される。ということは、ドイツとイタリアの新型コロナウイルスは系統が違うのではないかと疑いたくなる。

  日本の感染検査の状況はどうなっているのだろうか。日本全国の検査数と感染者数、死亡者数の全てがそろっているデータがないので実は調べようがない。

  何という国だ、こんなデータさえ揃えていないのだ。

  厚生労働省が公表しているデータは下記のような表である。

  

  3月16日時点での相談件数は約208,947万件、受診者数は約9,101件、PCR実施件数は6,708件となっており、PCR検査を行った割合は、僅かに3.2%でしかない。全国でも、1日当り200件以下の検査しかしていないとはどうなっているのだ。

  それでは、東京都はどうだろうか。下記は、東京都の新型コロナウイルスHPに掲載されている情報である。

 

  2月7日に開設した新型コロナ受診相談窓口(帰国者・接触者電話相談センター)の受付状況も公表した。2月7日から3月10日までの33日間の相談対応件数は2万8485件。10日までに364人を新型コロナ外来(帰国者・接触者外来)に紹介した。
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
 

  相談センターが受けた2万8千件の相談件数のうち、検査要と判断した件数が僅かに364件である。さらに東京都の検査能力が如何に低いかを示す下記のような情報も見つかった。

 

  厚生労働省が公表した都道府県別の1日当たりのPCR検査実施可能件数(7日時点、地方衛生研究所の件数を集計)によると、東京都の実施可能件数は125件で、同じ首都圏の神奈川県(190件)、千葉県(152件)よりも低い水準となっている。

https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/news/4150/

  仮に、新型コロナウイルスの対応が本格したのが2月1日以後だとしよう。現時点まで既に2ヶ月近くが経過したにもかかわらず、検査能力を増やそうともしない。現在の検査能力がどの程度の水準にあるかさえ公表されていない。東京首都圏だけで2500万人の人口を抱えているのだから、1日の検査能力は最低でも2万件程度は必要だと考えられる。

  感染爆発だ、オーバーシュート(こんな英語はない)だ!

  小池さん、こんなことをあなたが言えるのか!

  前述の田村某元厚生大臣によれば、検査をするかしないかは知事の権限であり、国はできるだけ検査をするように知事にお願い、要請しかできないのだそうだ。国民の命がかかっている時に、国は何もできないと言っているのと同じではないか。

  もはや国はあてにできない。都道府県知事の問題である。

  つまり、これだけ検査者数が少ないのは、国の責任ではなく、都道府県知事が感染検査に制限を付けたのであり、検査責任は知事にあるというのである。

  感染爆発が起こり、多くの感染者が発生し、重症者が増加した責任は、早期に感染検査をしなかったからに他ならない。感染爆発が収束した段階で、集団訴訟を起こされる可能性は極めて高いと考えられる。国は、責任を都道府県知事に転嫁した。

<新型コロナウイルスはたいした感染ではないという学者達>

  YouTubeを見ると、武田某、高橋某といった学者が、「新型コロナウイルスなどはインフルエンザの致死率より少し高い程度で心配するほどのものではない」と盛んに吹聴している。武田某の地球温暖化問題に対する考え方には全てではないが賛同する面も多いが、武田さん、新型コロナウイルスについて、あなたは間違っている。このウイルスは、極めて手強い。ウイルス学的に手強いのである。ワクチン、新薬等は1年や2年では到底開発不可能である。ウイルスの変異についても全く分からない。49歳以下の感染率は高いが、発症率は低い。免疫中和だけでは説明できない。スペイン風邪のように若年層が重症化する変異をいつ起こすか予想もできないが、可能性は高い。同一感染者が何度も感染するとどうなるか全く分からない。致死率が3%以上となることはほぼ間違いない。全世界人口の半数35億人が感染すると1億人が死亡する。これがインフルエンザと同じようなものだとどうして言えるのだ。35億人に感染するのに1年はかからないと考えられるが、これだけの人数に感染が広がると、ウイルスが複雑な系統に変異する。あるものは強毒性に変異するかもしれない。
 

武田さん、中国のデータなどを信じるようでは科学者とはとても言えません。

  つい最近の中国「財新」(かなり信用できる調査報道)の報道によれば、「無症状感染者が公表数値の倍ではないか、未知の無症候性キャリアーが新たな感染経路になる恐れがある」としている。また、火葬後の骨を遺族に返すことになり、武漢の火葬場に長蛇の列ができたと報道している。火葬実態から、死亡者数は公表数より遙かに多いのではないかという情報は、以前からネットでは流れていたが、全て削除された。「財経冷眼」は、葬儀場の骨壺の処理数から、中国全土で中共ウイルスによる実際の死者数は9万人以上、感染者数は120万人以上と推定している。また、別の情報では、武漢市民政局の孫家通副局長によると、ロックダウンが始まった1月23日~3月10日までの47日間で、2万1703体が火葬されたとしている。
 

  これらの情報の信頼性には問題はあるが、死亡者の処理件数から後日実態が暴かれることは必死である。中国政府がこのまま隠蔽することは不可能である。これ以外にも、携帯電話、スマートフォンの接続台数の減少数などの情報もある。中国政府が、感染重症者をどうしたのか、全て殺したのか、これも分からない。感染爆発後に感染者数が0になるなど常識的に考えられるわけがない。

<クラスターだけの解明時期は終わった>

  厚生労働省と専門家会議委員なるものが必死にクラスターを追っているが、そんな時期はとうに過ぎているし、そもそも国のやるべき仕事ではない。そんなことは都道府県に任せよ。やるべきは検査体制、隔離体制の確保であり、スピードである。金を準備し、人員を確保することだ。都道府県は金の準備ができればいつでも対応するだろう。国は費用負担と対策の責任を明確にすることである。

<国家を担う者の精神の劣化>

  政治家と官僚の諸君、「ばくち」打ちのようなやくざな精神で仕事をするな。この方策は、国家に対する犯罪に等しいのだ。政治家、官僚、地方政治家・公務員の精神的劣化は、今回の新型コロナウイルス対策で明らかになったと感ずるのは、私一人ではないと信ずる。

  「この国の精神」を考え始めた途端に新型コロナウイルス問題が発生した。グローバル経済・社会が、如何に脆弱なものかを目の当たりにした。さらに、経済・社会・制度などといった国のかたちは、どのように着飾ったとしても、国を支える人々の精神の気高さによって変わるということを実感した。この国は、何と未熟な民主主義国家ではないか。



                                                       2020/03/29