Little Garden -5ページ目

小さなものと箱の旅。

4列シートの真っ暗な車内は大阪に向かう振動で溢れている。
いつもと違う空間に少しは浮かれもしたが、30分もすればすぐに飽きがくる。ただでさえ高速は単調な道が続くのに、車内のカーテンは全て締め切られてる。

興味のなくなった今、この車はただの動く箱だ。今のところ旅の風情は身体の疲れから感じ取るしかないようだ。
まぁ、いつものバンドでツアーなんかの時もこれといって旅の風情を感じたことはないのだけど。

今回は一人旅。
大阪と神戸の二日間で弾き語りライブなのだ。珍しく自発的なソロライブ。
バンドから一歩離れると途端に貧乏旅行。

僕の趣味は何かに悪態をつくことだから、文句をつけられる場所が増えるのは良いことだ。
とりあえず文句をつけないと落ち着かないのはさつこ(祖母)から遺伝したであろう悪癖だ。

人数の少ない音楽は色々と気楽だ。
バンドはいつだって楽しいけど、一人でできる何かって良い。
今週に下津のソロ音源を録音していたのだけど、ミニマムで成り立つものが一番だって思った。
それがバンドサウンドに落とし込まれたり道筋は多々あれど、歌とギターにマイクが一本で美しいものが一番好きだ。


そんなこんな、きっと楽しい旅になるのでしょう。
幸せの基準が低いからね、文句ばっかりの割りにいつでも楽しい。
この海で一番自由な奴が海賊王なんですよ。幸せの基準はいつもそこ。
いつの世の中もそれが一番難しいってことか。金がなくても自由になれるけど、金で自由は得られない。

でもミニマリストとか、あんなのに分類されるのは嫌だ。そもそも何かに分類されるのが嫌いだ。
動物で良いんだよ。ジャンルを増やすから個人が見えなくなる。もっと僕を見てよって下津がいつも言ってます。



特にライブの告知もできぬまま文字だけが増えていく。まぁ、そんなものを文字で表してもタカが知れているから、どうでもいいか。

明日はセカンドラインで明後日はlouie louieってお店でやるよ。

高速のパーキングには酒を売る店がないから、到着するまで酒を手に入れる術はない。

関西にいる間ずっと飲んでよう。
そうしよう。

待ってろ、ミニマムとアルコール。

地下シェルターと新しい内蔵。

新しい年になってから最初の月も残す所あとわずか。
2015年が2016年に変わったからと言って僕らに特別な変化があるわけではないけど、新しいものって最初の何ヶ月かは宝物みたいに輝いてみえるよな。
昔なら玩具に漫画やゲーム機だったものが服やバッグに形を変えているのだろう。
僕らにとってはそれが楽器やCDに形を変えて、今はドラマーだったりするのだ。


2015年11月1日に7年続けたオリジナルメンバーであったけんちゃんが脱退した。

色々大変ではあったけど、人間って喉元をすぎれば熱と一緒に痛みも忘れる。飲み込んだその後は体中の血管を巡って指先から髪の毛の先までその色々が染み渡るのだ。
抜け落ちた内蔵の隙間を埋めるべく、道で拾われた道産子タイキが僕らの身体に移植されたのはけんちゃんが脱退してわずか22日後の、下北沢シェルターでのことだった。

改善すべき問題点と言うものは生きてる限り誰にだって付きまとう僕らの親しいストーカーである。
目の前にある邪魔な石ころを除けて、砕いて、時には磨いたりしながらとりあえず歩を進める。人生はそれの繰り返しなんだろう。
坂道が凍ると登りきれなくて少し後ろに下がったりするよな。この前の雪も大変だった。

僕らのやっていることは政治活動でもコラムを書くことでもないから、本当を知りたければ現場に来るしかないのだ。まぁ、今でも沢山の人に来てもらっているけど、足が遠のいたり、まだパソコンの小窓からしか覗いたことのない人だったり、見せたい人はまだまだいる。



内蔵が新しくなってから初のワンマンライブが明日22日の下北沢シェルターである。
新メンバーの名前は阪本タイキ。23歳にしてこいつの内蔵はボロボロで、頻尿の気があるおっさんみたいな若者だが、踊ってばかりの国にとっては宝物みたいに輝いた新しい内蔵だ。
明日のシェルターにはフレッシュな風が吹くと思うよ。

僕が一番心配してるのはタイキの膀胱が今回のセットリストをやりきる間破裂しないかどうかってことだ。
せっかくのフレッシュな風がアンモニア臭くならないように頑張ってもらうしかないね。

そんなスリルを味わえるライブもそうそうないからさ、不安な人はファブリーズでも持ってシェルターに来れば良い。
ライブハウスの名前の通り、世間の冷たさから隔離されたシェルターを用意して待ってるよ。
春の暖かさを知ったあんたは外に出ても入る前よりずっと暖かな気分でいられることだろう。
始まりの季節と言えばやっぱり春だ。
ぬるま湯に漬かって、ライブの後は安いぬる燗でも飲むと良い。そうこうしてる内に雪も溶けるよ。


何かを待つ時間って案外悪くないよな。
僕らは明日のシェルターで春が来るのを待っている。
もちろんその春はあんたのことでもあるのだから、しっかり着込んで下北沢まで来てほしい。


待ってろ、内蔵。

パンが音に変わる日。

明日から6日連続でライブの日々。今日はその移動日なのだけど、昨日は代々木で飲んでいた。
Stepwayがなくなってからすっかり足が遠のいた代々木だけど、何かの折りに未だにあの懐かしい西口に降り立つ事がある。もしくは南新宿の廃れた高架下。

それと言うのも僕らのソウルフードであった朝しかやってない最高のパン屋が閉店したって話しを聞きつけたから。ファズフロウト工藤のたれ込みにより発覚。
さすがは代々木の妖精、事情通だよな。

南新宿のほとんど裏で、2代続いた熱くて有名な風呂屋である奥の湯も閉店した。夫婦で営んでいた何故かB定食が一番人気の洋食屋ソルタナもつまらないビルへの工事が進んでいるようだ。
これに続いて文明軒が閉店となれば僕らにとっては一大事。
代々木を離れてからほとんど顔を出してなかったけど、好きな店にはいつまでも営業していてほしい。思い出した時にフラッと行って、またあの優しい味に出会いたかったのだ。
滅多にライブに来ないあんたも、僕らが解散したら悲しくもなるだろ?
だから昨日の僕たちは少しだけ悲しかったのだ。

夜の12時に起きて、1時からパンを焼く。早ければ3時過ぎには店が開く。
朝帰りと通勤中の代々木民が向かいのセブンには目もくれずあの店に並んでた。
お昼には売り切れてもう店が閉まるんだ。
それから親父は夕方前に酒を飲む。酔っぱらってはパンの夢でも見てたんだろうね。






この老夫婦もどうしているのだろう。
元気に、いつも通り酒を飲めてるならそれで良い。
何にせよ代々木に向かう理由が年々減って行く。




80年も続いた店なのは初めて知った。時間に比例するものじゃないけど、あの店には文化があったと思うんだ。文明軒。
無くなった途端に大好きでした、なんて嘘くさいけど、僕らはいつでもなくなった後に惜しいと思うんだ。
なんでもそう。何かをなくすたびにそう思うよ。
皆も好きな店があるなら沢山通っといた方が良いよ。それが中々行かない街でもね。


それでも、失われた何かを引き継いで行くのはいつの時代も確実に若い世代なわけだ。
代々木キッズを自称する僕らが引き継がないわけにはいかないよな。まぁ、パンなんて作る気はないけどさ。

想いとか文化は無形のものだから、どんな物にだって形を変えるはずだろ。
だから僕らは明日からのツアーに形を変えるのだ。
パンが音楽に、なんて馬鹿げた話しだろうね。
香ばしいライブをするから、食べに来てくれよな。もとい、見に来てくれ。



つまらなくなって行く代々木の街も、僕のフィルターを通せば鮮やかなもの。
隠れた名店はまだまだいくつも残っているしね。それがなくなるたびにまた代々木に行くんだろう。
そうして新しい出会いと発見を繰り返すのだ。街も人も大した変わりはない。


そんなこんな、僕らは西へ。

神戸に一泊して、高松。
ツアーの初めはガガガSPとKING BROTHERS。



待ってろ、高松。