Little Garden -3ページ目

汚れた奴らの無駄ツアー。

小学校三年生の時、僕の夢は猫になることだった。
四年生に上がる頃にやっと猫にはなれないことに気づいて、大金持ちになって猫に囲まれて暮らすのが夢になった。
まぁ、子供時代の夢は叶わないほうが思い出としては美しい。
三月になれば僕も三十路の仲間入り。そんな現在、猫もいなければ金もない。



実家のこいつらは僕を視界に入れたらシャーって言う。


特に何かになれてはいないけど、子供時代の夢よりきっと今の方が面白い。

今日から始まるキチガイツアー、もといGEZANとのツアーは残り15箇所。
ツアーファイナルは8/31だ。過酷。もう過酷って文字が面白い。
面白いってことだけはすごく鮮明に感じるけど、それ以外は何にもない。
ついでに苦しみとか悲しみもなくなれば天国なんだけど、嫌がらない奴って面白くないよな。悪口は嫌がる奴のためにある。

とりあえず西に向かって排気ガスを撒き散らしている真っ最中。
生きることは汚れることなのだ。お風呂に入ろう、歯を磨こう。
僕はどっちも苦手だから人間以外の何かになりたい。シラミって僕に似てない?
人って自分のシルエットに近いものに親近感を抱くらしいよ。シラミとか。

どうせ汚れからは逃げられないから仲良くなった方が良い。
手をつなげばみんな友達。



汚れと付き合うのが得意な僕らは綺麗なものがよくわかる。
軋むベッドにはさみしさだけど揺れるステージには汚さを持ち寄るのだ。どちらも愛が生まれるらしい。

要するにライブとセックスは同じってことか。無駄を無くすとロマンもなくなるんだね。
無駄=ロマンってことか。素敵だ。
そうなると人間なんてロマンの塊ではないか。無駄な奴ほどそれが多いってことだから、僕らは最高にロマンな集団ってことだ。
優しくされたい。




そんなわけで、汚れた奴らの無駄ツアーを死人が出ない程度に楽しもうと思います。
あんたの汚れも拾いに行くよ。

ロマンに向かって。


僕らのオナニースポット。

人間って旅をする動物だよな。
ほとんどの動物がそうなのかもしれないけど、一生の大半は移動だ。
職場に行くにしろ、買い物へ行くにしろ、何かを求める人は移動を続ける。
向かう場所は様々だけど、僕らはいつでも同じ場所を目指して旅をするのだ。

とりあえず踊ってばかりの国を乗せたハイエースは名古屋へ向かっているところ。
きっとあんたと僕の向かってる場所は同じだと思うよ。
渡り鳥も草原の群れも、みんな気持ちの良いところを目指してる。
今日のオナニースポットは名古屋ってわけだよ。皆で気持ちよくなろうぜ。


バンドマンってのはね、大勢の前でオナニーして喜べる人のことなんだ。
それを見て喜ぶ人も沢山いるのだから、世の中は変態だらけだよな。
どうせならその中で一番の変態になりたいから僕らは名古屋へ向かうのだ。


去年は林って言うでかい変態がいたんだ。ギターマガジンのことをエロ本って真顔で呼んでるヤバイ奴なんだけどさ。

そいつが辞めて今年からは丸山って言うでかい変態が横にいる。
ズボンを下ろしたままトイレに腰掛けて昔の海外版ギターマガジンを誰よりも彫りの深い顔で見下ろすヤバイ奴だ。

踊ってばかりの国のこれからの移動はマルちゃんと一緒に気持ちいいを探す旅になる。



積極的に快楽に逆らうのなんて坊さんくらいのもんだよな。
大好きな変態達に囲まれて向かう名古屋への旅は最高だよ。
明日は恵比寿リキッドルーム。
変態になりきれない恥ずかしがり屋さんは僕らのオナニースポットに遊びに来なよ。
そこでは皆が僕の大好きな変態だからさ。

タイキがDJをホメろってうるさいから、今日はマルちゃんでさようなら。




待ってろ、オナニースポット。

呪いを殺すでかい音。

小さい頃、夜に出かけるのはスペシャルなことだった。
目的地はどこでも良い。
両親の運転する車に乗って夜の街を眺める。それだけで僕の心の中はスペシャルな感じになるのだ。
車やバイクのライトに信号や外灯、夜に輝くそいつらを眩しそうに目を細めながら眺めると光の筋が僕に向かって伸びてくる。
太陽を直視した後に目をつぶると見える光の余韻も魅力的だったけど、夜に伸びる光の筋が僕はとても好きだった。

夜の空気で窓に細かな水滴が付着して、その上を指でなぞれば動く街を背景にした即席の落書き帳が出来上がる。
そこに顔の角度を変えたり、細める目の幅を調整したりして、自分の落書きに街の灯りで色を付 けるのだ。


あの頃は夜の街ってだけでいくらでも楽しみ方があったけど、今となっては視力が落ちたせいか街の光はいつだって放射線状に伸びて見える。その上夜の街にスペシャルを感じることもなくなった。
人間の慣れるって能力は日常と言う名前の呪いなのだ。
あんなに輝いて見えたものが日常にとけ込んで、意識しても中々見つけられなくなる。なんて恐ろしい。

僕らにかけられた呪いは他にも沢山あるけれど、日常を殺すのはいつだって大きな音だ。
誰かの叫び声でも良いし、好きなあの子に会うだけでも良い。
リズムを乱した心臓の音は何より大きな音楽だ。
あんたが何にときめくか、それを知っておけば日常はい つだって抜け出せる居心地の良い家になる。


僕が何にときめくか、わかりきったその答えを抱きしめるために明日は鴬谷へ行く。
大好きなあいつが今までで一番大きな音を出す日だから、ホテル街やタチンボのフィリピーナには目もくれず、真っ直ぐキネマ倶楽部を目指すのだ。
もちろん、居心地の良い日常から抜け出してね。



目を細めて、眩しそうな顔で明日の僕らを見てくれよ。
そうすれば日常に落っことした光の筋があんたに向かって伸びるから。それに涙の膜でも張ってれば最高に綺麗なんだろうね。
忘れてしまったスペシャルを取り戻すために、僕らは大きな音を出す。それで誰かの心臓を揺らせれば 素敵なことだ。



でかい音って最高だよな。





待ってろ、ときめき。