Apple MusicでJ-Rockを検索してみた③ | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。

前回に引き続いて、この企画記事の第3弾です。
過去2回は70年代前半のJ-Rockを取り上げました。

70年代半ば頃からリリースされるロックの新譜は、渋谷陽一氏が「産業ロック」と表現したような類型的で革新性のないロック・ミュージックが多くなり、洋楽の主流もフュージョン、AOR、ディスコ・ミュージックになっていました。
この頃、個人的にはロックを聴くのがつまらなくなってましたね。


1977年、セックス・ピストルズ『Never Mind』の衝撃的なデビューで、パンク・ロックのムーヴメントが起こった時「ロックが帰ってきた!」と喜んだものでした。
日本でもこの影響を受けたパンク・ニューウェイブ系のバンドが活動を始め、最盛期を迎えていたのが70年代末から80年代初頭にかけて。
今回は、この時期に私が聴いていたJ-Rockを紹介します。


私の最も好きなロックの時代、70年代前半に田舎の小中学生だった私は当時のロックコンサートを観ることができなかったのが、人生の中で残念なことのひとつですが、"雨上がりの夜空に"を発売したという絶好のタイミングでRCサクセションのライブを、しかもライブハウスの小さなハコで、清志郎やチャボを間近に観ることができたというのは幸せなことだったと思いますね。

RCのコンサートはいつだって、この曲から始まりました"よーォこそ"



このライブ映像では清志郎は「武道館BABY🎶」と歌っていますが、私の時は「磔磔BABY🎶」でした。
さて、「久保講堂BABY🎶」と歌っていた、このライブ・アルバムはApple Music上にあるのか?


1980年リリース
ラプソディー/RCサクセション

¥2,057
Amazon.co.jp
✖︎なし

う~ん、無かったか
このRCがロック編成になって最初のアルバムはよく聴いてたんだが…

RCのアルバムがApple Musicに全くないという訳ではありませんね。
ポリドールから出た『シングル・マン』や『BEAT POPS』(ロンドン・レコード)『MARVY』(東芝EMI)などはありました。
『ラプソディ』『Please』『Blue』この3枚のキティ・レコード時代のアルバムがありませんね。


RCサクセションは70年代末のパンク・ニューウェイブ・ムーブメントの波に乗って、一気にスターダムに躍り出たバンドですが、元々は1968年からフォーク・グループとして活動を始め、"ぼくの好きな先生"という曲が大石吾朗のコッキー・ポップというラジオ番組でよくかかっていました。
忌野清志郎の髪を逆立てたヘアスタイルから、当時のマスコミは「パンク」と呼んでいましたが、彼自身はR&B、ソウルがベースにある人で、音楽性自体は決してパンク・ニューウェイブではなかったですね。
マスコミといえば、私が観に行った京都の磔磔のライブにはテレビの深夜番組「11PM」の撮影隊が来ていて、私の真後ろでテレビカメラを回していました。
私の後頭部くらいは映っていたかもしれませんね(笑)


お次は、同じようにパンク・ニューウェイブとしてメジャー・シーンに登場したバンドですが、元々は博多で1972年から活動していたサンハウスというブルースロックのバンドのメンバーだった鮎川誠が結成したシーナ&ロケッツ

こちらもRCと同じく京都のライブハウス、磔磔で観ました。
ステージ上の鮎川は手足が長くて頭が小さく「外国のロックスターみたいでカッコええなぁ」と思いましたが、彼の父親は白人のアメリカ兵だったんですねえ。


このライブで個人的に一番よかった曲は鮎川が歌う"Dead Guitar"
YouTubeにはシーナ&ロケッツの動画ではいい音質のものが無かったので、これは鮎川の1981年のソロアルバム『クール・ソロ』のバージョン。



鮎川がギターを弾いている時の格好良さと曲の合間の博多弁の喋りのギャップが面白かったですね。
「ボクはメシを喰っとおときもロックしとる」というようなロックバカ的な発言が多かったのですが、私の仲間内では鮎川の口調を真似て「ボクは便所に入っとおときもロック(施錠)しとる」などと言ってギャグにしてました(笑)

さて、彼らのアルバムはApple Musicにあるのか?


1979年リリース
真空パック (紙ジャケット仕様)/シーナ&ロケッツ

¥2,376
Amazon.co.jp
あり

1978年、エルヴィス・コステロの日本公演のオープニング・アクトを務めたシーナ&ロケッツを観た高橋幸宏に注目された縁で、YMOのメンバーが全員参加したアルバム。
大ヒットした"ユー・メイ・ドリーム"を始めとしてテクノポップ・アレンジでシーナもコケティッシュなヴォーカルを聴かせている曲が目立つアルバムですね。
こういう曲はいま聴くと少々キツイですが、シーナ本来のパワフルなヴォーカルの聴ける"I Got You,I Feel Good"などは彼女が亡くなったいまでも輝きを失ってません。

1980年リリース
チャンネル・グー(紙ジャケット仕様)/シーナ&ロケッツ

¥2,376
Amazon.co.jp
あり

"Dead GuItar"が収録されているのはこちらの方。
これもプロデュースは細野晴臣ですが前作よりも鮎川のギターが前面に出たロックっぽい楽曲が増えています。

レコードは買っていないので記憶は不確かでしたが、Apple Musicで何十年ぶりに聴いてみると、この2枚は確かに聴いてます。
京都で一人暮らしをしていた学生時代、四畳半のアパートに住んでステレオもなく、ラジカセ生活に逆戻りしていたので、レコードを買うことはありませんでした。
ただ、当時はNHK-FMだけではなく、民放のFM大阪でも最新のロックアルバムを1枚丸ごとかけてくれる番組が多かったので、カセットテープに録っておけば聴くモノには困りませんでしたね。

1980年当時で忌野清志郎29歳、鮎川誠32歳。
二人ともブルースやR&Bがベースにあるので、パンク・ニューウェーブ世代という訳ではないですね。
既に10年以上のキャリアと実力のあった彼らは、ニューウェイブ・ムーヴメントが終わっても消えることはなかったのは、皆さんご承知のとおり。


N.Y.でバンド活動をしていたレック(ベース,ヴォーカル)とチコヒゲ(ドラムス)が1978年に帰国して結成したフリクション 。ギターはツネマツマサトシ。
3ピース・バンドらしい緊迫感のあるサウンドで、日本のパンク・ニューウェイブ系のバンドとしては彼らの出す音は断トツにカッコよかったと思いますね。
彼らのメジャーデビュー・シングル"I Can Tell"



先の二組のバンドはどちらかというと70年代以前の音楽に回帰した音と言えますが、フリクションの音は明らかにパンク・ニューウェイブ以降の音だと思いますね。

ニューヨーク・パンクのテレビジョンが『Marquee Moon』を発表した1977年にティーン・エイジ・ジーザスという現地のバンドのベーシストとして活動したレックが肌で感じた、N.Y.で渦巻いていたパンクの熱気を日本に持ち帰ったという感じがしますね。

彼らはリザード、ミラーズ、ミスターカイト、S-KENなどと共に「東京ロッカーズ」と名乗って日本のパンク・ニューウェイブ・シーンを引っ張っていました。


1980年リリース
軋轢/FRICTION

¥3,153
Amazon.co.jp
あり

久々に聴きましたが、それまでの日本のロックとは明らかに違うクールで乾いた音ですよね。
プロデュースは坂本龍一。
改めて思いましたが、この時代の日本のニューウェイブ・シーンはYMOの3人が取り仕切っていたんですねえ。


少し、判ってきました。
こういう少々アンダーグラウンド的なものでも、先鋭的ものはApple Musicにはあるんですよね。


現在、レックは元ブランキー・ジェット・シティのドラマー、中村達也とベース、ドラムだけの2人組のユニット(!)としてフリクションを継続中。
YouTubeでチェックしてみましたが、ベースラインをループでキープしながら、ベースの音を変調してギターのように弾いているようですが、本当に2人だけでロックバンドとして成立しています。
再始動する際に納得のいくギタリストが見つからなかったというのが理由のようですが、凄いね、この人は。



さて、お次は「東京ロッカーズ」に対抗した「関西ノーウェイブ」(何かと東京に対抗します)のINU
このバンドのアルバムは、確かFM大阪のビートオン・プラザでオンエアしていたのをカセットテープに録音して聴いていたいう記憶です。
当時、通っていた大学の教室でライブがあるという貼り紙をみて、観に行こうと思っていたんですが、何か用事ができて行けなくなりました。
ところが、このアルバム『メシ喰うな!』を発売して3ヶ月後にこのバンドは解散。
二度と見ることは出来ませんでした。
INU "フェイド・アウト"



ヴォーカルの町田町蔵は後に「きれぎれ」で芥川賞をとった町田康。
確かに、この当時の「ぶっ壊してやる」的なパンク・ニューウェイブの単純な歌詞と比べると表現力の高さが感じられます。

さて、Apple Musicの検索結果は、
1981年リリース
メシ喰うな (SHMCD)/INU

¥2,980
Amazon.co.jp
あり

ありますねえ。

町田町蔵の顔写真を使ったジャケットだけ見るとパンクのアルバムっぽいですが、この作品は音楽的には単純な3コードのパンク・ロックではなく、ジョン・ライドンがセックス・ピストルズを脱退後に結成したPILのようなポスト・パンクです。
アルバム全曲の歌詞を書いたのは当然ながら町田町蔵。
当時、町田は19歳ですが、既に現在の彼の文体の原型は出来上がってます。
ギターは北田昌宏という、多彩なフレーズを持った凄腕ギタリスト。
後に遠藤ミチロウに呼ばれて、スターリンにも一時在籍します。
詩人としての才能を持つヴォーカリストと、音楽的才能の豊かなギタリストが組めば、いいアルバムができるという見本のような作品だと思います。
町田のアバンギャルドな詞も北田とベーシストの西川成子の書く "フェイド・アウト"や"ライトサイダーB"のようなキャッチーで音楽性に優れた曲にのることでアルバム全体として聴きやすくなっています。
町田の書いた"ダムダム弾"や"メシ喰うな!"のように単調でヘビーなポスト・パンク的楽曲ばかりだと、ちょっとツライね。
各々のメンバーの個性(才能)のバランスが良かったと思うので、1枚で解散したのはもったいないなあ。


ニューウェイブ系のアーティストがもてはやされていた、この時代、ハードロックなどの70年代前半に流行ったロックはオールドウェイブと呼ばれて、古くさいものとして扱われていました。

さて、学校の友人にこのバンドのファンがいて、ライブに一緒に行こかと誘われました。
私は「いまさら、オールドウェイブのバンドなんて」と思いましたが、そこは付き合いというものがあるので、気乗りしないままライブに参加しましたが、あまりの楽しさに、計3回もライブに参加してしまったのが、 うじきつよし率いる子供バンド
チープ・トリックやAC/DCのような、少しコミカルな要素のある、明るいハードロックというタイプのバンドです。
YouTubeで当時の動画をいろいろ観てみましたが、どうも音質が悪く、当時の臨場感が伝わってこない。
そこで見つけたのが、高音質で収録された近年の再結成ライブ。皆、歳はとってますが、動きと演奏は昔のまま。
そうそう、こういう感じでした。

"東京ダイナマイト~サマータイム・ブルース~マンモスの歌"のメドレー。
彼らのライブの十八番、ザ・フーの"サマータイム・ブルース"日本語版は必見!



いやあ、"サマータイム・ブルース"でフロントの3人が並んで弾いているシーンなど涙モノですね。昔のまんまです。
途中で脱退したベース&ヴォーカルの湯川トーベンが復帰してるのも嬉しいね。


今は役者として知られている、うじきつよしですが、観客をのせることにかけては日本屈指のロッカーだったと思いますね。
彼らのライブに参加すると汗だくになるので、替えのTシャツやタオルを持っていったもんです(笑)


さて、彼らのアルバムはApple Musicにあるのでしょうか。


1980年リリース
WE LOVE 子供ばんど/子供ばんど

¥1,572
Amazon.co.jp
✖︎なし

フリクションやINUに比べると売れたとは思うんですが…
まあ、今では子供バンドを聴く元気はないので構わないんですけど(笑)
日本で何枚、売れたかということは、Apple Musicにあるなしとは関係ないですね。

彼らのライブを観に行って思い知らされのは、自分はつくづくオールドウェイブな体質なんだなということですね。
考えてみると、この頃、外タレの来日公演で観に行ったのはデヴィッド・ボウイやキング・クリムゾンなどの70年代前面によく聴いていたアーティストばかり、ポリスやスペシャルズなども観に行く機会はあったのですが、行きませんでした。
頭ではニューウェイブと思っていても、いざ、大金を払う段になると本能的に身体が拒否していたんでしょうね(笑)
テクノポップは、人の手によるリズムの僅かなズレによって生まれるグルーヴを機械の正確なリズムパターンで否定するという革新的な試みでしたが、やはり、私は音楽にはグルーヴ感が欲しかったんですね。




さて、ロックが革新的なパワーを取り戻したかに思えた、この時代でしたが、すぐにニューウェイブも類型化・一般化して、典型的な80年代ロックのスタイルと言える、打ち込みの音にアナログのエレキギターやピアノの音を乗っけるという様式に落ち着きます。


その後、私はザ・スミスのアルバムを買ったのを最後に、リアルタイムの新しいロックミュージックをフォローするのをやめてしまいます。
グルーヴを求めてレゲエやサルサなどのワールド・ミュージック、革新性を求めて現代音楽系のアーティストを聴いた後、いまは70年代前半のアメリカン・ルーツ・ロックをApple Musicを楽しむ毎日です。


という訳で、『Apple MusicでJ-Rockを検索してみた』シリーズはこれにて、おしまい。