エイモス・ギャレットのギターを聴く | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。

先日、ストリング・ベンダー搭載のテレキャスターを使用するギタリスト、クラレンス・ホワイトの記事 http://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-12122849765.htmlを書きましたが、今回は同じくテレキャスターの達人エイモス・ギャレットのギターを聴いてみましょうか。
ザ・バンドをはじめとしたウッドストック系ミュージシャンの重要人物ですね。

まずは、以前にも紹介しましたが「星屑(ほしくず)ギター」「神様が酔っぱらったかのようなギター」と称されるエイモス・ギャレットのギターの名演として有名なマリア・マルダー、1973年の『Old Time Lady』http://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-11924499131.html 収録の"Midnight At The Oasis"の間奏をお聴きください。



このエイモス・ギャレットのギターソロを聴いていると、いまにも壊れそうな美しさと言うか、
「秩序」と「混沌」の境界線に音が浮遊しているといった印象を受けます。
リズムも音を僅かにずらすことによりグルーヴ感が生まれるのと同じように、メロディを奏でるときにも音を微妙に外すことで生まれる美しさがあるのでしょうか。


オールド・タイム・レディ/マリア・マルダー

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楽譜どおりの正確な演奏ではなく、音を外してるのではないかと思われようなところもありますが、その外し方も絶妙です。
日本には型(楷書)から入って型を崩す(草書)ことを尊ぶ文化がありますが、そういう意味ではエイモス・ギャレットは日本人好み のギタリストと言えるのかもしれませんね。
知名度の割りに来日も多いようですし、ダグ・サームとの来日公演、ジェフ・マルダーとの日本でのライブの模様もCDとして発売されています。


お次は、こちらも1973年にポール・バターフィールズ・ベターデイズのメンバーとして演奏した
"Please Send Me Someone To Love"
こちらも惚れぼれするような名演ですねえ。



実はこの曲も『Paul Butterfield's Better Days』http://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-12015166466.html の記事を書いた時に、既にご紹介している曲です。
エイモス・ギャレットのコアなファンならいざ知らず、一般ロック・リスナーの私が選ぶとエイモスのギターの特徴がよく分かる名演としては、やはり、この2曲になってしまいますね。

Better Days/Paul Butterfield

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さて、今度はエイモスがどうやってこのような独特の浮遊感のあるギターを弾いているかよく判る動画を見つけましたので、ご覧ください。
曲は幾多のギターの名手たちが弾き継いできた"Sleepwalk"
私はラリー・カールトンのバージョンでこの曲を知りましたが、オリジナルは1959年のサント&ジョニーという人たちのヒット曲だそうです。
ギタリストなら一度は弾いてみたい曲なんでしょうね。



オリジナルは機械的な操作で音程をコントロールできるスティールギターで演奏されてたようですが、エイモスの演奏は機械仕掛けに負けないくらいベンディング(チョーキング)による音程の上げ幅が大きいです。他にもヴィブラート、ハーモニクスなどのテクニックも駆使して弾いていますね。最初のほうでボリューム・コントロールの操作も行っています。
聴いてる方としては気持ちいい音ですが、弾いてる本人は忙しそうですね。
クラレンス・ホワイトもストリング・ベンダーをテレキャスターに搭載するまでは、あの音を出すのには、かなりの苦労があったのだなと想像されます。
ジェフ・ベックが"Sleepwalk"を弾いている動画も見てみましたが、ストラトキャスターでアームを使って、もう少し楽に弾いてましたね。




さて、Apple Musicで何枚かエイモス・ギャレットのソロ・アルバムも聴いてみましたが、近年のものが中々に充実しています。


こちらは2曲目にかけた"Please Send Me Someone To Love"が1950年に大ヒットとなったR&Bのシンガーソングライター、 パーシィ・メイフィールドの作品を集めた2008年のアルバム。
エイモスは彼の大ファンのようですね。

ゲット・ウェイ・バック:トリビュート・トゥ・パーシー・メイフィールド/エイモス・ギャレット

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星屑ギターソロが散りばめられた、エイモスの得意とするジャージーな4ビートのスローナンバーがてんこ盛りのアルバムですが、この中から1曲、"To Claim It's Love"をどうぞ




"Midnight At The Oasis"や"Please Send Me Someone To Love "を演奏した1973年当時と変わらぬ「星屑ギター」は健在です。と言うか30歳そこそこの若さで既にこの境地にまで到達していたということの方が驚異です。

歌っているのもエイモス本人。
低音の効いた渋いボーカルです。
パーシィ・メイフィールドはバリトン・ボイスで知られたシンガーだったようですがエイモスの声域はバスに近いですね。

エイモス・ギャレットのソロ・アルバムを聴いてみると、マリア・マルダーやポール・バターフィールズ・ベターデイズのアルバムと同様、彼自身の志向性もオールドタイムのアメリカン・ルーツ・ミュージックの方向に向いていることが分かります。
エイモスはカナダ出身の人なのですが、同じくカナダ出身のザ・バンドのメンバーたちやニール・ヤングと同じようにアメリカ音楽への憧憬と探究心があるのでしょうね。
このアルバムはそんな彼の志向性が極まったような2004年の作品。
何とテレキャス・マスターのエイモス・ギャレットが全編アコースティック・ギターを弾いているアルバムです。

アコースティック・アルバム/エイモス・ギャレット

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Apple Musicでアーティスト検索をすると曲やアルバムが人気のある順に表示されるのですが、トップに表示されていたのが、このアルバム。
個人的にもこのアルバムは気に入りました。先ほどの『Get Way Back』はパーシー・メイフィールドが活躍した1950年代から1960年代の雰囲気ですが、こちらは楽器が電化される以前の1920年代から1930年代当時の音楽を最新設備のあるスタジオでレコーディングしましたという感じの、私の好きなタイプのアルバム。

では、このアルバムから2本のギターとウッドベースだけの静かな演奏でエイモスのアコースティック・ギターの腕前もよく分かる"Perfume and Tobacco"をお聴きください。

YouTubeにはなかったので、こちらからどうぞ
http://m.qoop.me/s3151036-amos-garrett-perfume-and-tobacco.html

アコースティック・ギターでもエイモスのギターソロの独特の感覚は感じられますね。

他にも古き良き時代のアメリカを舞台にしたミュージカル映画のサウンド・トラックのような"Sam's song"では間奏でエイモスのアコースティック・ギターとマンドリンの掛け合いやタップダンスの音まで聴くことができます。
また、1920年代に活躍したジャズのピアニスト、歌手・作曲家(シンガーソングライター?)でレイ・チャールズで有名な"我が心のジョージア"の作者、ホーギー・カーマイケルの"Hong Kong Blues"と "Small Fly"をエイモスは歌っています。この人も彼のお気に入りのソングライターですね。
トラディショナル・ソング(伝承曲)の"Grasshoppers In My Pillow'"はまるで本当に昔のブルースマンがカントリー・ブルースを歌ってるかのようで、 ライ・クーダーの初期の作品を彷彿とさせますね。


エイモスの音楽の引き出しはテレキャスターで奏でるジャージーなスローナンバーだけではないことがよく分かるアルバムです。



エイモスの、ソロ作品は
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