私がクラレンス・ホワイトという人を知ったのは、後期バーズを支えた名ギタリストとしてでした。
彼は1968年発表の『Dr.Byrds & Mr.Hyde』からグラム・パーソンズの抜けたバーズに正式メンバーとして参加しています。
このアルバムに収録されていたインストナンバー"Nashville West"で彼の変幻自在のギターのあまりの巧みさに、まずガツーンとやられました。
この曲は彼がバーズ加入前に組んでいたナッシュビル・ウエストというバンドのテーマ曲。
Apple Musicにある『Nashville West(Featuring Clarence White)』というアルバムでもイントロとして収録されています。
このナッシュビル・ウエストですが、ブルーグラス編成のバンドを想像していましたが、ギター、ベース、ドラムスだけのロック編成のバンドなんですね。ドラムスのジーン・パーソンズもマイケル・クラークの後釜としてバーズに加入します。
ところでクラレンス・ホワイトはストリング・ベンダーという、エレクトリックギターでスティールギターのような効果を出す装置を考案しています。
バーズ時代はこのストリング・ベンダーを搭載した1954年製フェンダー・テレキャスターをメインで使用しています。
余談ですがジミー・ペイジもクラレンス・ホワイトの考案したストリング・ベンダーの愛用者の1人です。
クラレンス・ホワイトがこのギターを弾いている動画を探してみましたが、残念ながら見つかりませんでした。代わりに彼の使用していたストリング・ベンダー搭載のテレキャスターを映している動画がありましたのでご覧ください。
いまひとつ、どういう仕組みなのかは、よくは判りませんが、弦のテンションを変える(つまり音程が変わる)装置のようです。
フライング・ブリトゥ・ブラザースの衣装をデザインしたヌーディーズのオヤジさんのステッカーも貼ってありましたね。
このストリング・ベンダーを使用したギターの名演と言われているのが、バーズの1969年発表『Ballad Of Easy Rider』に収録された"Tulsa County"の間奏です。
ベダルスチールほど音程の上げ幅はないようですが滑らかな音ですよね。
エレキギターでカントリー的なニュアンスがよく出せていると思います。
何よりもロックバンドとしては座って弾くペダルスティールよりライブでも立ったまま演奏できるストリング・ベンダー搭載のテレキャスターの方がカッコいいというのはあるでしょうね。
クラレンス・ホワイトはブルーグラス音楽では本来、伴奏楽器であったアコースティックギター(確かにビル・モンローあたりのブルーグラスを「資料聴き」してみるとギターのリードは聴こえてきません)をリード楽器として定着させた第一人者。
彼が最初に兄たちと組んだブルーグラス・バンド、ケンタッキー・カーネルズ時代にも1935年製マーティン・D-28に通常のギターよりもサウンドホールを大きく開ける改造を施しています。
ストリング・ベンダーの考案といい、この人は音を追求する根っからの職人気質なんでしょうねえ。
ではクラレンス・ホワイトのフラット・ピッキング・スタイルのアコースティックギターの演奏もこちらの1970年の映像でご覧ください。もちろん演っているのはブルーグラスです。
なるほど、確かにフィドル、バンジョー、マンドリンなど他のリード楽器に比べるとギターの音は弱い(柔らかい)です。サウンドホールを大きく開けたというのは少しでも音を大きくする為の工夫なんでしょうね。
ブルーグラスの演奏は各楽器奏者の早弾きなどのテクニックを競うようなところがあるのですが、クラレンス・ホワイトはこれだけの早弾きを余裕で弾いている感じですね。
指の動きが速すぎて、よく判りませんが、親指と人差指でピックを持ってプレイする通常のフラット・ピッキング に、中指、薬指、小指のフィンガー・ピッキングを交えた“ハイブリッド・ピッキング"というピッキング方法を用いているのでしょうか?
さて、ギタリストとしてのクラレンス・ホワイトにフォーカスしてきましたが、バーズ時代、何曲かリードボーカルも披露しています。
彼は自分で曲を書くということは、少なかったようですが、非常に選曲眼の優れた人で彼が選んだ曲はジャクソン・ブラウン作の"Jamaica Say You Will"やローウェル・ジョージ作の"Truck Stop Girl"などで、当時は無名だった名ソングライターの曲をとりあげて歌っていたのはさすがとか言いようがありません。
1971年発表の『Farther Along 』から"Bugler "をお聴きください。オリジナルはカントリー系シンガーソングライターのラリー・マレイが死んだ愛犬ビュグラーのことを歌った曲。
決して上手いボーカルという訳ではありませんが、非常に誠実な人柄を感じさせる歌声で私は好きですね。
本当に心に沁みいる良い曲だと思います。
1973年にバーズは解散。
クラレンス・ホワイトはセッションギタリストとして活動を続けると同時に、兄たちとブルーグラスバンドを再開。
ほかにミュールスキナーというバンドでも活動します。
1973年7月19日の深夜、クラレンス・ホワイトはフロリダのナイト・クラブでの仕事を終え、機材を積み込んでいる時に、飲酒運転の車にはねられて死亡。
享年29才。
今回はアルバムを紹介するブログではなく、クラレンス・ホワイトのギターに焦点を当てた記事でしたので、1枚丸ごとオススメのアルバムはありませんが、Apple Musicでリスニング可能な今回のブログに関連するアルバムは以下のとおり。
①
Dr. Byrds & Mr. Hyde/The Byrds
¥1,977
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②
イージーライダー(紙ジャケット仕様)/ザ・バーズ
¥2,268
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③
Nashville West Featuring Clarence White/Nashville West
¥2,480
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④
Appalachian Swing/Kentucky Colonels
¥2,559
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①②のバーズのアルバムですが、私の場合、曲によってかなり好き嫌いがあります。
後期バーズのアルバムについてはカントリー・ロック系で気に入った曲を抜粋してプレイリストを作って聴いていましたね。
③④については、カントリー系のギターを目指している人がクラレンス・ホワイトのフレージングを研究するために聴くのに良さそうです。 ④はブルーグラスのアルバムをさほど聴いたことのない私にも聴きやすかったですね。
ご興味のある方はどうぞ。
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