父を超えた証 | 泣けるBLOG

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泣ける話を集めました。

母が用事で家を空けたとき、父がご飯の用意をしてくれたことがあった。普段、父が台所に立つことはなかったので、「ご飯作れるのかな」と小学生だった俺と兄は、見ててちょっと不安だった。

その時作ってくれた料理が何だったか、もうほとんど思い出せなくて、フライパンの上でぼろぼろになってる卵焼き(ようなモノ)ぐらいしか憶えてない。
味もそれほどおいしくなかった気がする。
結局、父が台所に立ったのはその一回きり。

高校卒業して進学のため一人暮らしを始めた。
生活する大変さを知って、今まで文句も言わず家事をこなしてきた母に感謝した。
働き始めて、お金を稼ぐ大変さを知った。父に飯をおごりたいと思った。
実家に帰るたびに、俺は「メシおごるよ。何食いたい?」と聞くんだけど、父は「いらない、まだお前にはおごってもらいたくない」と断られる。

どうやら、子供に金を出させるわけにはいかないという親の意地があるらしい。
すでに髪も薄くなり背だって俺に負けてるくせに、親の威厳は一向に衰えていない。
その意地に、かなりの悔しさと少しの尊敬。

いつか父を認めさせ、美味い飯をおごる。
それが俺の父を越えた証になるんだと思った。