朝6時前にパッチ!と言うテレビの点く音で目が覚めた。私は、仕事などで早起きをする時は目覚まし時計ではなく、テレビのONタイマーをセットして寝るのだ。
点いたテレビには、朝のニュースが流れている。眠い目を擦りながらベッドから起き上がった私は、何でこんな時間にテレビが点くのだろうと寝ボケている。いつもなら朝7時に起きて仕事に行くのだが、今日は、いつもより1時間も早いからだ。数分間、ボーっとしてからやっと今日は映画のエキストラでロケに参加することに気付いた。私は趣味で映画やドラマ・CMなどにエキストラ出演しているのだ。セリフもなく出演料もたいしたことないのだが現場の楽しさに取り付かれ仕事の休みの日などに参加している。 起床後、食欲のない体に無理やりご飯を詰め込み、朝食を摂る。一度撮影に入ると、次はいつ食事が摂れるか分からない事を知っているからだ。以前に撮影を甘く見ていた私は、空腹のあまり撮影中に腹の虫が鳴いてしまった。そこで、大好きな女優さんに聞かれ恥ずかしい思いをしている。
朝食を摂り、着替えなどを済ませた私は、今日、撮影現場でどう言う事をするのだろうや俳優さんたちは誰が来るのだろうと心躍らせながら家を出る。
最寄りの駅までは歩いて約15分である。駅からは各駅停車に乗り約30分で集合場所の駅に着く。
私は、くだり方面の電車に乗るため車内は空いている。電車が進むにつれ、いつの間にか線路が複線から単線になっている。
電車を降り、駅の改札で待っていると、スタッフが車で迎えに来てくれていた。私とは初対面であるはずだが、こちらの方にまっすぐ歩いて来る。周りには多くの人たちがいるが、なぜ分かったのだろうと私はいつまでも謎であった。
私は、集合場所である某私鉄の終着駅から製作会社の車に乗り、農道や海沿いを走る。この場所は、以前にエキストラの仕事で訪れた事がある。農道の脇には野菜の箱を乗せた軽トラックがたくさん止まっている。実にのどかな道だ。海沿いに、他の映画の撮影に使われたバス停や洞窟を眺めながら車は走る。駅から走ること約15分、某市の施設が見えてくる。施設の門を潜ると、どこの撮影現場と同じ様にたくさんの撮影関係のマイクロバスや機材車が止まっている。それに加えタレントさんが乗る高級車なども何台か駐車してある。恐らく事務所の車だろう。この施設内全体が今回の撮影現場のひとつだ。その周りではスタッフ達が動き回っている。とても忙しそうだ。
車を降りた私は、早速衣装に着替える事に。私たちエキストラはマイクロバスで着替える様にと言われマイクロバスの中に入る。バスの窓には黒いスモークが入っており車内から外が見えても外から車内は見えなくなっている。
「これに着替えて下さい。」
とスタッフに衣装を渡され、その衣装に着替える。白と黒の迷彩柄の衣装だ。靴はふくらはぎまであり、つま先に鉄板が入ったセーフティーシューズである。まるで工事現場にいる作業員の様に見える。私は迷彩柄の衣装に着替え、靴の紐をきつく締め、バスの外に出る。すると、近くに同じ衣装を着た人が立っているので挨拶をする。
「おはようございます。」
するとその同じ衣装を着た人も 「おはようございます」 と返事をくれる。
そこからその彼と私は仲良くなり話が弾む。
そこからその彼と私は仲良くなり話が弾む。
「地元のエキストラ会社からですか?」
「XXXXXXXからです。」
彼は、最初エキストラ事務所の人かと思っていたが彼はエキストラ事務所ではなくタレント事務所に所属しているらしい。私を除いた迷彩柄のエキストラは3名、全員タレント事務所の所属で事務所の命令でエキストラに参加するらしい。私が最初挨拶した彼は、前日の夕方にダンスのレッスンを行い、その後深夜バイトを終えてから来たらしく28時間寝ていないとのことだ。
「大変だ~。」と私は思っていた。
「大変だ~。」と私は思っていた。
次回の予告 『不安と期待 続く』