不思議な文書を書かれる人
例えば、文をそのまま引用すると
この頃、人を見るとその胸に収まっている
心臓が、レントゲン写真のように見えてくる
大きさは本人の手のこぶし大
それが動き続けている奇妙
どくどく拍動し続けて、その小さな筋肉のポンプが
一日に八トンの血液を送り出す 八トンだ
一トン車で八台分、ドラム缶にして四十本の量である
一ヵ月で二百四十トン
これは奈良の大仏と同じ体積だという
生きる限りそれだけの血液が体を巡る
通行人を眺めると、人は人型の木のようだ
木の樹液は透き通っているが、
人の木の樹液は真っ赤だ
それが心臓から枝分かれして、
網の目状に人型の中を流れて行く
向こうからそんな人型の妖しい木の一団がぞろぞろくる
義雄の木もとっとっとっと戻ってきた
のけ、のけ、のけ、触ると自爆してやるぞ
腫れ物の神が歩いてくるのだ
意固地に肩肘張って胸をそびやかせているが
検査入院のショックか額の毛がめっきり薄くなっている
かわいそうに
もしも焼野で治りでもした暁には、
必ずこの男を百叩きの刑にする
だがもしあえなくその前に破裂したら、
そのときは血溜まりに座り込んで泣いてやろう
夫婦はこういうものかも知れないなと思いながら
読みました
焼野温泉に、実際に行ったかはわかりませんが
なんとも不思議な本を読んで、読まなければ
気づかなかったことを知った思いです
あまりに淡々として、男女の気持ちの差が
というか、自分の気持ちとの差がわかりました
この本の女性が普通だろうなと思います