釣ってきたばかりの魚より、
冷蔵庫で数日おいた方がおいしいよという話を、以前聞きました
マグロが大好きな人がいるので、以下
日経新聞のネット記事から
種類は最も高級なものがクロマグロ、
一番刺身用で多いのがメバチマグロ、
そしてより安価なキハダマグロ、
色が薄くツナ缶に加工されることが多い
ビンナガマグロがあります。
おいしいものを食べたいのが日本人の性。
日本人は特にマグロを生で食べたいという意欲が強く、
それを可能にしたのが瞬間凍結と超低温冷凍です。
「ブライン液」という飽和塩水は凝固点が低く、
マイナス20℃でも液体です。
その状態のブライン液にマグロをドボンと入れると、
一瞬で凍ります。
こうやって瞬間凍結したマグロを、
品質維持可能な超低温冷凍庫(マイナス50℃)で保存すると、
解凍しても、漁獲した時の鮮度をほとんど保った状態になります。
その鮮度たるや、死後硬直すら、解凍後に始まるほどです。
なぜマイナス20℃のままではなく、マイナス50℃の超低温冷凍庫で
保存する必要があるのでしょうか。
マグロは赤身なので、ヘモグロビンを多く有しています。
このヘモグロビンは、通常時間がたつと色が悪くなります。
これを「メト化」といいます。
ブリを買ってきて、血合いの部分がきれいな赤色から
くすんだ茶色になるのと同じ原理です。
見た目が悪くなると食欲をそそらないこともありますが、
メト化と連動して酸化も進み、味も悪くなってしまいます。
つまり、メト化を防ぐことがとても大事です。
その方法として超低温冷凍があります。
マイナス20℃程度では凍結していてもメト化は進みますが、
マイナス50℃くらいならメト化は進みません。
これを可能にしたのが日本の技術とそれを求める需要でした。
よく築地などの映像でコチンコチンに凍ったマグロが見られるのは
こういう理由なのです。
国内でも超低温冷凍で保存されるので、どこでも良い状態のマグロを
食べることができるようになったのです
見た目がきれいでおいしいマグロが世界一安くで食べられるのは、
日本にこのインフラが整っているからなのです。
ところで、マグロは新鮮なほどおいしい、というわけではない
のをご存じですか。
最高級のクロマグロをすし屋で注文すると、
得も言われぬ「うま味」があると思います。
この「うま味」は、時間がたつことで発生するアミノ酸群によるもので、
鮮度抜群のクロマグロを食べても、実はほとんど味がありません。
しかしうまくアミノ酸群の発生を促さないとメト化してしまいます。
技術のあるすし店は、解凍したマグロを冷蔵庫で
1週間程度寝かせて熟成させ、うま味とメト化のバランスをとります。
しかも食中毒を防ぐという点で、安全性にも極めて気をつけなければなりません。
つまりすし屋の技術はその味の演出にあり、
決して鮮度がよければ何でもよいというわけでもないのです。
これはマダイでも同じことが言え、生き〆より2日寝かせたほうが、
おいしい刺し身やすしになります。
しかしすし屋の手に届いてから、すし屋のコントロール技術がさえる
わけで、そこまではとにかく鮮度のよいものを届けたほうがよいということになり、
あのうまいクロマグロの中トロ握りは、インフラとすし屋の技術のハーモニーなのです。
瞬間冷凍と、超低温冷凍の技術をインフラとして持った日本漁船は、
世界中の海でマグロを漁獲していました。
しかしやがて200カイリ問題などで日本の船が海外の漁場から
締め出されると、漁獲するのは海外の船に移っていきました。
しかし相変わらず食べるのは日本人。
マグロはやっぱり日本に届いているのです。