目的地は山の中腹にある古い展望施設。
私たちは笑い声を交わしながら進んでいくが、突然目の前に現れたのは砂の崖のような急な登り坂だった。

みんなはその坂を一気に駆け上がっていくが、私はといえば、スマホでルートを確認していたため、みんなに出遅れてしまった。
調べ終わって顔を上げると、他の人たちはもうかなり上の方にいた。
私は友人たちに追いつこうと、やや急ぎ足で坂を登り始めた。
砂が靴にまとわりつく。
一歩進むごとに半分滑り落ちる。
やっとの思いで顔を上げると、サキが少し遅れている。右肩を押さえ、顔をしかめながら登っているのが見えた。
その時、どこからか「もうだめ〜!」という間の抜けた声が。
見れば、坂の上の方から年配の女性が、頭を下にしてゆっくりと仰向けになって滑り落ちてきた。
後ろから小さな男の子が「ばあちゃん、待って〜」と追いかけてくる。思わず笑いそうになったが、サキの様子が気になった。
「大丈夫?」
私は追いついて声をかけた。
サキは苦笑いしながら、「うん、よくあるの」と答えた。
右肩を軽くさすっている。
どうやらまた痛めたらしい。
彼女は昔から肩を脱臼しやすい体質だと、前に話していたっけ。
彼女と共に何とか坂を登りきると、みんなが待っている広場にたどり着いた。
しばらく休憩した後、私たちは広場に隣接する古い施設を見学することに。
興味深い展示物よりも彼女のことが気にかかる。
砂の感触と彼女の痛みが、今日の記憶として心に刻まれた。
肩を痛めながらも笑顔を絶やさない彼女の強さが、砂のようにザラザラと、でも確かに残った。まるでこの坂を登りきった証のように。
施設の見学は思いのほか穏やかな時間だった。
ユキとミホはパンフレットを手に熱心に読み、アヤはチカと何か冗談を言い合って笑い声を響かせていた。
施設の中はひんやりとして、外の熱気を忘れさせてくれた。
古びた展示ケースの中には、この土地の歴史を物語る品々が並んでいる。
しかし、私の目はどうしてもサキを追ってしまう。
彼女は展示物を熱心に見ている。
時折、顔をしかめながら右肩をさする。
それでも隣にいる友人と楽しそうに話している姿は、痛みを微塵も感じさせない。
昼食時、広場に戻ってレジャーシートを広げ、それぞれが持ち寄ったお弁当を食べることにした。
彼女はおにぎりをつかむのも辛そうだったが、誰にも気づかれないようにゆっくりと手を動かしていた。
食事が終わり休憩していると、彼女が突然立ち上がった。
「ちょっと、あっちまで行ってくるね」
彼女が指したのは、広場の端にある小さな展望台だった。
少し離れた場所にあるため、他のメンバーは特に気に留めずに談笑を続けている。
私は彼女のことが気になり、少し遅れて展望台へと向かった。
展望台からは先ほど登った砂の坂と、その先に広がる景色が一望できた。
彼女は柵に寄りかかり、目を閉じて深呼吸をしている。
「きれいだね」
そう言って、彼女はゆっくりと目を開けた。
その目はどこか遠くを見つめているようだった。
「ねえ、知ってる? この場所には昔、海賊が隠した財宝が眠ってるって言い伝えがあるんだって」
彼女は、少しいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「財宝、か…」
「うん。でも本当の財宝はきっとこの景色の中に隠されているんだと思うんだ」
彼女はそう言って、再び目を閉じた。
その時、私はふと思った。
彼女の肩の痛みは過去の傷跡なのかもしれない。
それでも、彼女は前を向いて今を生きている。
そしてその強さこそが、彼女にとっての財宝なのだろう。
夕暮れ時、私たちはそれぞれの家路についた。
帰りの車の中で私は今日の出来事を振り返る。
砂の坂、滑り落ちてきた女性、そしてサキのあの言葉。
あの日のハイキングはただのレクリエーションではなかった。
砂の感触とサキの痛みが私の心に深く刻まれた。
肩を痛めながらも笑顔を絶やさない彼女の強さが、砂のようにザラザラと、でも確かに残った。
そして私は気づいた。
真の宝物は遠い場所に眠っているのではなく、日常の中に、そして人の心の中にこそ隠されているのだと。
まるであの坂を登りきった証のように。
彼女の肩の痛みはいつか癒えるだろう。
そしてその時、彼女はきっと今よりももっと輝いているだろう。