「ねえ、龍子さん、自分が相手にすべき人を、あなたは、本当に心得ているの?」
素朴にずばりと質問がきました。
もうそれがすべての答えでした。
「そうよ。わたくしたちの視点を、本来のところに戻して時間を過ごすべきだわ」
別の上級巫女が添えます。
「ねえ、もういい加減わかっているでしょ。人は平等ではないの。もっといえば、平等ではないことがすべての人に、平等に与えられているの。もうわかっているでしょ。なぜ、それを受け入れないの、あなたは」
・・・段々龍子への説教になってきました。
「そうよ。巫女がどのような着物をまとっているかと、どのように一般庶民の皆様に思われていようが、私たち上級巫女には、何ら関係のないことでしょ。私たちの視点は、現代日本で庶民として活躍している魂たちに向けられるようには、できていないのですから」
「つまり、庶民の皆様がどのような、赤と白の和装だかなんだか・・・何か固定概念をもっていらしたとしても、また、何かひとつの限定的なイメージに固めようとしていたとしても、それはそれ。否定するも高く評価するも、そこに感情を働かせるもしないも・・・私たち上級巫女のすべきことではないわ」
「おっしゃるとおりよ。私たちは、上級巫女として神様と天皇家の皆様のためにだけ、この立場と存在が許されているのですから。その範囲を超えて、何かものを申したり思ったりすることは、まさに邪気邪念のすること。筋違いですもの」
「そうよね。まさにそれは、越権行為だわ。だめよ。あなたも実はわかっているのに、いったい何を求めて、そうした表面意識で固められた邪道な質問を私たちになさるの。何だかあなたの話は、まちがった『共感』と『承認』を求めていこうとする、現世ならではなの、きわめて醜いエゴの香りがすることよ」
「そうよ。ただちに、そのわけのわからない『何でも知ろう』、『追究しよう』、『わかりあおう』とするエゴをお捨てあそばせ。それはかえって、民として生きる魂の皆様の領域を荒らすことになり、無礼というものですことよ」
「そうそう。そうだわ。そうした『話せばわかる』、『知れば理解し合える』系はもうおやめなさって。わからないように神様がおつくりになっているのだから、それに委ねて生きるべきだわ」
「本当にそうよ。立場役割が違うからこそ、相互関係を築けるわけですし、互いを必要とできるわけですわ。そして、必要以上に介入することはしない。そして、尊敬し合えるという真の信頼と平和があるわけですわ。私たち上級巫女は、その世界で生きる道のみが許されているのですから」
「もっと、下世話に言えば、こうよ。上級巫女は、そうした赤白の和装だけに限らないんです。絹の上質な羽衣を身にまとっているのが普段着で、それ以外は、神様のご命令にしたがってどのような衣でも、身にまとうし、ときに裸でもいます・・・なんて言っても、通じない人たちには通じないのよ。通じさせる必要もなくてよ。だから、あなたのその私たちの思いを確認しようとする質問は、無意味で邪念にあふれている醜い質問だわ」

・・・・確かに。
彼女たちは、本当に魂のエリートで、かつ、感性に正直な女性らしい女性たちです。
経済活動とまったくかけ離れた階層社会に生きる存在でした。
経済社会、民主主義がメタ理論となっている社会で、教育を受け、過ごし過ぎた龍子の固定概念を、思いっきりに、ぶったたく彼女たちの発想は、少なくても現代社会の(感覚値)95%以上の人が、適応しないことがわかります。
そして、とても心地よい世界です。
龍子