■八寸胴返(はっすんどうがえし)
大陰茎、巨根のこと。一寸は約三センチである。
六寸胴返という言い方もあった。
図は、男が女ふたりに自分の八寸胴返を見せ、自慢しているところ。
【用例】
①春本『艶本多歌羅久良』(喜多川歌麿、寛政十二年)
ご新造(奥様)の夫である唐斎は病身だった。竹助は自分の陰茎を握らせる。
ご新造の手を持ち添えて、おえきった八寸胴返を握らすれば、
病身の唐斎の小魔羅と違い、筋骨高く火の如く、まことに鉄火を握るが如く、
その上、雁首(かりくび)のきわに、いぼ三つまでほどよくあれば、
雁首は亀頭のこと。
②春本『艶本婦多柱』(喜多川歌麿、享和二年)
女装していた男が、隣に寝ている娘の布団に入り込む。
そっと娘が床へ入り、
「今は何をか包むべき。吾こそは男なり」
と、八寸胴返の一チ物を火柱のごとく生(お)やし、
娘が股ぐらへ割り込んで、さねがしらへ押し当てれば、娘も今はこらえかね。
③春本『会本美津埜葉那』(喜多川歌麿、享和二年)
婚礼をひかえた姫の陰部を、老臣が点検する。
「いかさま、随分けっこうな、おぼぼ様でござります。
されども、お先様のお道具が八寸胴返と申すことでござれば、
まず御婚礼前日まで、随分おせせりなされて、
とかく少しも広くおなりなされておるが専一」
姫の陰部を「おぼぼ様」と称しているのがおかしい。
「せせる」は、指や張方を用いる自慰のこと。
陰部を広くしておけという助言もおかしい。
④春本『艶本為久春』(月斎峨眉丸、享和三年頃)
男は指で刺激し、女がよがるのを見て、
男「こりゃ、たまらぬ」
と足を割り込み、六寸返しの大道具、かの玉門へ、ぬっと入れたる心地よさ。
女「ああ、うれしや、口を吸うて、吸うて」
と、しがみつけば、
ここでは、大陰茎を「六寸返し」と称している。
⑤春本『花くらべ』(月斎峨眉丸)
お由良が興奮して淫水を流しているのを見て、男は、
「こりゃ、たまらぬ」
と、のっかかり、六寸胴返の黒魔羅、会釈もなく、玉門の小口へ当てがいければ、
お由良は夢中に魔羅を握り、
ここは、六寸胴返と称している。
「旦那さん、凄いわぁ~~」
「あらまぁ、これが八寸胴返!」