五番町夕霧楼
五番町夕霧楼(1980年)
上映時間:129分 / 製作:1980年(日本) / 配給:松竹
水上勉の同名小説の2度目の映画化。
京都・西陣の夕霧楼で芸妓になった夕子と、
彼女の幼なじみの修行僧・正順との許されない愛を、
正順の金閣寺放火をクライマックスに描く。
松坂慶子のセクシーさが全編を覆い、
詩情豊かな前作(1963)とは味わいが違う。
『五番町夕霧楼』(ごばんちょうゆうぎりろう)は、
水上勉の小説。1962年発表。
1958年の売春防止法施行まで存在していた京都の五番町遊廓を舞台に、
家族を養うために丹後からきた少女とその幼馴染である学生僧との悲恋を描いている。
1956年に出た三島由紀夫の『金閣寺』へのアンサーとして書いた。
水上の代表作であり、1950年に起きた金閣寺放火事件と、
水上の実体験が題材になっている。
この事件に関して各方面への取材を重ね、
1979年にノンフィクション『金閣炎上』(新潮社)も出版した。
あらすじ
戦後間もない昭和25年ごろ、
丹後の寒村・樽泊の木樵の娘・夕子は、貧しい父、肺病の母と3人の妹のために、
京西陣の華街・五番町夕霧楼に自ら売られて遊女となる。
西陣の織元の好色な老人・甚造の贔屓を得て、
1年後には夕子は五番町で一、二を争う売れっ妓になっていた。
だが夕子には同郷の幼友達であり、恋人である青年僧の正順がいた。
夕子を妾にしようとしていた甚造は、
正順が住み込んで修業している鳳閣寺の住職に彼の廓通いを密告する。
夕子はその頃から体の不調を訴え、肺病を患い入院してしまう。
一方、信徒の浄財で豪遊する寺の高僧たちの姿を見て、
正順は修行に幻滅していた。
ある日、住職と衝突した正順は幻滅と怒りから寺に放火し、
逮捕されたのち留置場で自殺する。
新聞で事件を知った夕子は病院を抜け出して故郷の与謝へひとり戻り、
正順を追って自ら生命を絶った。
キャスト
- 片桐夕子
- 演 - 松坂慶子
- 冒頭で夕霧楼の遊女となる。
- 夕霧楼に来た時にかつ枝から「(夕子は)19歳でこの中で一番若い」と、
- 他の遊女たちに紹介されている。若い頃から親しい正順に好意を寄せている。
- 作中では遊女になる前から周りから美貌を褒められ、
- 実際に接客された甚造からは「絹のような肌」と絶賛される。
- 遊女になる前に正順からもらったビーズ製のブレスレットを右手首にしている。
- 櫟田正順(くぬぎだせいじゅん)
- 演 - 奥田瑛二
- 夕子の幼なじみの大学1年生。
- 寺の息子で将来僧侶になることを目指し、
- 鳳閣寺に住み込み大学に通いながら修行している。
- 作中では、子供の頃にある日突然吃音症になり、
- それ以来話し方が変わったという描写がある。特技は尺八。
- 夕子とは相思相愛で、彼女が夕霧楼の遊女になったと知り、
- 寺の者に隠れて遊郭にいる彼女に会いに行く。
- 夕子と関わる主な人たち
-
- 夕霧楼女将・かつ枝
- 演 - 浜木綿子
- 五番町では名の知られた遊郭の経営者。
- 夫を亡くしたばかりの未亡人。自身の店では『お母はん』と呼ばれる。
- 自身の店について「世間から後ろ指さされる商売」と自認している。
- 拝金主義者やいわゆる“やり手婆”という感じではなく、
- 品のある人柄で面倒見が良く遊女たちの第2の母親のような存在。
- 竹末甚造
- 演 - 長門裕之
- 夕霧楼の得意客。
- 西陣の帯問屋の大旦那。夕霧楼では周りから『たーさん』と呼ばれる。
- かつ枝から「西陣でも指折りの遊び人」と評されている。
- 数年前に妻を亡くしそれ以来独身。
- 夕子を気に入り初めての客となり、彼女に入れ込む。
- 写真屋
- 演 - 横内正
- 敬子の客。普段はロケ隊を組んで木曽の山などに撮影に行っている。
- 遊女たちから『先生』と呼ばれている。妻子がいたが離婚しており現在は独身。
- ある時夕霧楼に訪れた時に目当ての敬子が空いておらず、
- たまたま都合がついた夕子と過ごすことになり心が傾く。
1963年版
「五番町夕霧楼 (1963年の映画)」
東映製作、配給。佐久間良子主演、田坂具隆監督。
キネマ旬報ベストテン第3位。
1963年度版 宣伝スチールの1枚か?
旧五番町遊廓 (京都市上京区、2000年撮影)