『岬に待つ恐怖』 | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。



      


       『岬に待つ恐怖』

         

         《亀裂❺〜2》



昔、『岬』の海中で見つけた短剣のことは、ずいぶん

以前の話で置いた場所などは思い浮かばなかったが誰かに渡した記憶も無いので織田の家の中には在るはずと思い日曜日を待って押入れをひっくり返したり別棟の物置を捜したりしたが見つからない。

せっかくの休みに、一日中埃り塗れになるのも嫌だと思い辞めにするかと思った時、携帯が鳴った。

相手はなんと土井だった。

織田は驚いた、何年ぶりの事だろう。

『もしもし久しぶりだな』織田が話すと土井は『なんか気まずくて連絡し難くて・・・そっちは変わりないか、実はこんどそっちの

警察に転勤が決まって里帰りする訳さ、それでお前には言っておかなくてはと思って・・・』

土井は永い間の不義理を詫びてくれたが、それはお互い様のことで土井一人が悪い訳でもない。

それより織田にしてみれば土井が済まなそうにくれた電話が嬉しかった。

二人は途絶えていた時間を埋めてしまうのかと思うほど話し続けた。


そろそろ話も尽きたかと思えた時だった『そう言えばお前と水盛が見つけた短剣のことなんだけど』

『それがどうかしたのか』

『いや、どうもしないけどあの日以来ずっと預かったまんまだから』

『土井の処に有るんだっけ

忘れてたよ』

『そうだよ、最後に会った時にお前が、俺達には全く

つてがないから鑑定出来る処を見つけて欲しいって』

『そんなこと頼んでたんだすっかり忘れてた、それでどうなった』

『いやぁ、あの頃は警察に入ったばかりで自由に何かする訳にもいかないし申し訳無かったんだが何も出来てないんだ』


土井の話を纏めると、警官に成り立ての頃は自由行動することも出来ず、転勤も多く引っ越し先に持って歩いてはいたが、何も出来ないで今日迄来てしまったが

今回の転勤で荷物を整理していてあれが出て来たので転勤が片付いたらあの短剣

を調べるつもりにしているという事だった。

こちらへ戻り次第、再会を約束して電話を切った。


織田は読みかけたまましまい忘れた本が見つかり十数年ぶりにその頁を捲るような気持ちに心が昂っていくのだった。