『岬に待つ恐怖』《亀裂❺》 | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。




 『岬に待つ恐怖』
               《亀裂❺》

思い返せば、この数年の間に色々な事が変化して来た
漁村としか呼べなかった街はそう呼ぶに相応しい体裁を整えている。
全国展開している、大手の
スーパーもやって来た。
マックだって在る。
マンションも建ったし彼方此方に店が出来た。
それらは皆、地元住民の為でなく県外、それも東京や大阪など大都市からの客を目当てにしたものだった。

『村』は『町』になり、更に『街』へと変化して来た
けれど一番変わったのは三人だろう。

三人とは織田三郎、土井昂
、水盛志郎のことだ。

海で遊ぶのが好きだった三人はいつからかその姿が見えなくなった。

その彼等が『岬』の街へ其々の社会的立場を確立させて帰って来るのだ、そして彼等は若い頃の様に助け合いながら、あの『岬』に棲みついたものと戦うことになるのだ。

けれどもそれは、もう少し
後のことになる。
結局、人骨事件も本当の意味では解決してはいない。
二十六人の小学生と引率の教員二名の行方不明事件に至っては、事件の発生から十年を遥かに超えていたが解決してはいない、それどころか何の解決の糸口さえ見つかっていないのだ。
 
毎年、夏になると二十八名の慰霊祭が行われる、そして警察はなんとしても解決をと声高に言うが、それが毎年繰り返されるだけで解決はしない。
いったいあの子達は何処に行ってしまったのだろう。
古くからこの街に住む人達は皆同じような気持ちで夏を迎えるのだった。

織田は、明方夢にうなされて目覚めた。
起きてみると、恐怖心の募った夢はどんなものだったのかをまったく思い出せないでいて身体中に嫌な汗を
かいている、その事だけが夢が恐怖を募らせるものだった事の証明になっていた

寝床を出て洗面を済ませた時、朝方の夢とは関係無い
ことだったが、昔『岬』で見つけた短剣は何処にやってしまったのかと頭に浮かぶのだった。