『岬に待つ恐怖』《亀裂❹》 | 高田龍の『ごまめの歯軋り』

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還暦を過ぎた無名の男の独り言を、ジャンル無しで書き綴るブログです。
身の周りに起きた出来事から、世の中の動き、小説から身の上相談迄やるつもりです。
もっとも、身の上相談は、相談してくれる人が居ればの話しですが......。
兎に角、宜しくお願いします。



  『岬に待つ恐怖』
                 《亀裂❹》
小学生の失踪事件から五年が過ぎていた。
『岬』にけたたましいサイレンが鳴り響き、数台の警察車輌が急行している。
朝、磯釣りで『岬』を訪れた中年の男性二人が海中で人の物と思われる骨を発見し、警察に通報したのだった。
後で判ったことだが、骨は間違いなく人間の物だった
さらに、回収された人骨は一人分では無かった。 
警察が海の中を詳しく調査した結果、かなりの範囲に人骨と思われる骨片が散らばっている事が判った。
久しぶりに『岬』周辺の街は騒めいた。
特に県警と地元警察の関わり方は、五年前の子供達の
失踪事件をはるかに凌ぐものだった。

骨が発見されて十日ほどが過ぎた頃、見つかった人骨の分析結果が出されて発見された骨は、そのすべてが二百年以上前の、古い骨で五年前に行方不明になった人間のものでは無いという事が証明されると世の中の関心度は急速に冷めて行った。

この年、土井は県警の中で警部になっていた。
織田も水盛も二人の勤め先でその立場を確かなものにしていた。
水盛は、消防士長の階級を取得し、県内の大きな街の消防署で主任を務めていた
織田は衆議院議員の秘書として活躍していた。
三人共に年齢を重ねて其々が社会の中で順調に立場を固めていた。

三十九歳の時、織田が秘書を務める国会議員から地元に戻って県会議員に立てとの話しがあり彼は一晩考えてそれに従った。
当時の織田の人生計画から四十代で国政へ、というとこのあたりで県議会へ出馬するという事は彼の計画を一歩も二歩も現実に近づける事になるのだろう。

そして益々、三人が出会う事はなくなっていった。