創作『コスナーさんの思い出』 | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。

《プロローグ》


丘の上に

コスナーさんの家が
あります

どの部屋の窓からも

蒼い海を見ることが
出来る

海を見下ろす
丘の上にある
素敵な家でした

残念なことに

コスナーさんは

この家に住んでいません

何故なら

コスナーさんは

死んでしまったからです

二年前の秋のこと

今のように

銀杏の葉が

黄金色に輝く

そんな季節でした

いつもみたいに

テラスの

お気に入りの揺り椅子に

腰掛けて

パイプを燻らせながら

日が西に傾いて

海や

麦畑や

何もかもが

金色に染められてしまう

夕暮れ

コスナーさんは

すべてが金色の

輝きの中

微笑みながら

眠るように

息を引き取りました

とても静かに

平凡な一生の中で

三回も

戦争を経験して

大切なものや

掛け替えの無いものを

失ってしまった

コスナーさん

それでも

懸命に

誠実に

人生を生き抜いた

コスナーさん

今日は

あなたに

コスナーさんの思い出を

聞いて欲しいんです
 
そして

この物語が終わった時

皆さんの心が

忘れてしまったことを

みつけることや

思い出すことが

出来たら

きっとコスナーさんも

天国から喜んでくれる
ことでしょう

それでは
『コスナーさんの思い出』
始まりです