昭和世代が紡いだ平成プロレス〜格闘夢工場 6 | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。

    二人の夢戦士は、緊張感に押し潰されそうな思いだったのだろうか。

20年以上前のこと、知る由も無い心の内。

信頼できる婆娑羅と、初めて見るアステカ。

この試合、私の中でこの選手の立ち位置は他の夢ファク勢とは違っていた。

単身メキシコに乗り込み、現地でデビューしたとか、新日本プロレスの入団テストを受けたとか、いろいろ話は聞いてはいたが、過去のキャリアよりも、私の団体で試合をするのであれば、私の目に彼の試合ぶりがどう映るのかだと思う。

集まって来た若者達の夢を叶えることもさることながら、やはり私がファンに届けたいプロレスに相応しいかどうかが一番大切なことなのだ。

G・馬場がなんと言おうと、A・猪木がなんと言おうが私がどう思うかだと思っている。

生意気かもしれないが、私はこの団体に命を賭けていたのだから、そのくらいは許してもらいたい。

事実、この後に私が関わらなかったいくつかのキャラクター、いくつかのアングルは、本来の《レッスル夢ファクトリー》の目指すものとは違っていたり、発案者の自己満足の域を超えてはいない。

これは、私が優れたプロデューサーだと言っているのではなく、物事は須らくそういうものではないだろうか。

『長の一念』とでも言おうか。

私は若い頃に些か、演出の仕事に携わった事がある。

その時、ある先輩から、根本的にアイディアと演出は違うのだと耳にタコが出来るほど言われていたが、面白かろうが、奇抜であろうが、そのアイディアが生きる生きないも、ベースにシッカリとした演出のコンセプトがあるかどうかだと思う。

プロレスは究極の作り物である。

その事を理解した上で、優れた身体能力と技術を持つことが必要ななのだと、今でも信じている。

その観点から言えば、アステカという選手は・・・このくらいにしておこう。

彼は、私の団体に骨を埋めることよりも、自分の地元で団体を起こすことが目的のようだったし、私もそれを容認していた。

したがって彼は、夢ファクの客分のような存在だったからである。

今にして言えば、当時はお世話になりましたと言うしかない。

試合後の彼に、私は一点だけ注意をした事は記憶にあるが、何を注意したのか内容は忘れてしまった。

いずれにしろ、忘れてしまう程度のことなのだろう。
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婆娑羅は、その日初めてのキャラクターの意味をよく理解してくれていたと思う。

器用な選手ではあるが、ルチャの選手との試合よりも、ラフな大型の選手とゴツゴツした試合の方が、彼の持ち味を活かす事が出来たような気がした。

一回戦、第2試合は、いよいよ悪夢軍団が姿を現わすことになる。

WINGでデビューした三浦博文は、言葉は悪いが、員数合わせというレベルを超えられない選手だった。

しかし、彼の人の良さが私は好きだった。

企業のスポンサードを受けてスタートした私達をマスコミは恵まれた団体だと皮肉を込めて書いていた。

スポンサーがついているということは確かに恵まれていることに違いわない。

だからと言って、それはまたスポンサーのいない団体には経験することのない眼に見えぬ圧力がある。

期待に応えなければならない。

成果を出す事が至上命令にもなるのだ。

そして、いつまでもという訳にはいかない。

スポンサードが始まったその日から、スポンサーの終わる日のカウントが始まるのだ。

三浦博文は、大手企業の社員だった。

安定した人生、生活を考えれば、辞める事は常識では考えられない。

それなのに、彼は全選手の中で一番最初に勤務先に辞表を出して、レスラー専業の道を選んだ。

無謀だとか、安易だとか、言うことは易い。

私は、彼の勇気ある決断に脱帽した。

その彼に対して、最大の敬意を表することを私は決めた。

それが、彼をヒール・ヒーローに洗い直すことだった。

《悪夢軍団の首領》私が彼のために用意した椅子だった。

皮の陣羽織風のガウンを纏い、リングに上がるや両手にヌンチャクを持ち、G・カブキ超えるクオリティの演武を披露する。

観客は大いに湧いた。

そこにはもう、かつての三浦博文はいなかった。

私の目論見は、取り敢えず成功だ。
あとは、三浦がこのキャラクターをどう育てていくのかだ。

パートナーとしてリングに立ったのは、『死神』。

私が旗揚げにあたって、一番期待し、一番心配だったレスラーだ。

ハマれば大化けするに違いないのだが・・・。