『来なくていい!』
強がりを言った。
それでも二人は来てくれた。
駅に迎えに行った。
娘の。
私が、大好きな笑顔がそこにあった。
照れ臭そうに、目も合わせない息子が、『おめでとうございます。』と言った。
私も、それに応えて息子の手を握った。
涙が、たったそれだけのことで溢れた。
私は、歳をとった。
そう思った。
年末に片付るつもりだった散らかり放題の家を二人は綺麗に片付けてくれた。
久しぶりに整頓された部屋に炬燵をしつらえて、三人で過ごした。
わけもなく、嬉しさが込み上げる。
二人は一泊して、昨日の夕方帰って行った。
またいつもの、静けさを取り戻した家に戻る。
弾けるような、娘の笑い声はもうない。
人の居る温もりのなくなった家は、寒さがしみる。
息子と娘が、父親を恋しがった頃、私は家にいない日が多かった。
母親と三人の家庭の中で、息子は、娘は、私のいない寂しさを、どうやって嚙み殺して来たのだろう。
還暦を過ぎた私でさえ、耐え難いと思う日もあるのに。
過ぎてしまった過去は取り戻せないが、『ごめんね』と呟いた、初春の真夜中。