鞍瀬地域の伝統行事 『磐根神社の初笑い』
敗戦直後の暗く沈んだ空気を払拭しよう、と始まったといわれている鞍瀬地区の初笑い行事。
始まった頃は大晦日に行われていたようだが、いつの間にか元旦の午前中に行われるようになったという。
地区内の人たちや出身者たちが毎年大勢訪れて、賑やかに絶えることなく続いてきたが、コロナがはやり中止を余儀なくされた。昨年、コロナウイルスの位置付けがやっと5類に移行し、四年ぶりに再開する、との情報を年末に得ていたので、久しぶりに磐根神社に出かけていった。
神社に到着したころは薄い雲が上空を覆っていて、どんよりとした天気だったが、1時間ほどすると、だんだんと日が差してきて暖かくなり穏やかなお正月となった。
長年にわたり、両手に日の丸の扇子を持ち指揮を務めたW氏の姿が今年は境内のどこにもなかった。
尋ねると、4年というブランクの間に年を重ね引退とのことだった。いつもなら、拝殿入り口両脇に背の高い門松がたち、境内は参拝者で賑わったが、今年は門松はなく参拝者もいつもより少なく、静かな境内での初詣となった。
午前10時より神事が始まる。
W氏の引退や高齢過疎化が進む地域ゆえ、4年間のブランクを経て再開を決めるのは容易ではなく、開催が決まるのに年末近くまで時間を要したようだ。
なので今回は準備期間も短く、開催告知や準備など十分いき届かなかったのだろう。集まった人はいつもより少なかった。
今年は、長い間初笑いの指揮を担当してきたW氏に代わってS氏が担当することに。
日の丸の扇子を両手に持ち、足を少し開き立つ。
扇子の先が畳につくくらいまで前かがみになりながら両足を曲げ、ゆっくりと扇子をあげると同時に両手を広げていき
「ワッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ」
「ワッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ」
「ワッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ」
と三度繰り返す。
訪れた人たちも同時にバンザイをするように元気よく両手を上げて大笑いをする。
アンコールがありもう一度大きな声で繰り返す「初笑い」。
初笑いのあとは、暖房機具を囲み酒など酌み交わし、新年の挨拶や話に花が咲く姿があった。
コロナ前までは、拝殿のあちこちに何人かづつの輪が出来て、子供たちはお菓子やミカンを頬張り、甘酒(アルコール分なし)を飲みながら和やかに過ごす姿が見られたが、4年ぶりの再開やコロナの終息も見えていないということで、出足は鈍くちょっと寂しい集いに思えたが、来年からは、また元通りの賑わいを期待したい。