友梨奈はゆっくりと立ち上がり、
男たちの方へと向き直った。
その瞳には、冷たい殺意が燃え盛っている。
男たちは、友梨奈の尋常ではない気迫に
一瞬怯むが、すぐに銃口を向ける。
「おっと、動くんじゃねえぞ、小娘!」
しかし、友梨奈は止まらない。
サバイバルナイフを音もなく抜き放つと、
銃弾が放たれるよりも速く、
男たちとの距離を詰めた。
一瞬の交錯。
金属音と、短い悲鳴。
次の瞬間には、二人の男はアスファルトに崩れ落ち、
二度と動くことはなかった。
友梨奈のナイフは、
一滴の血もついていないかのように、
静かに鞘に収められた。
後に残されたのは、呆然と座り込む美空と、
その傍らに横たわる彩の亡骸、
そして、静かに怒りを鎮めようとする
友梨奈だけだった。
港の風が、血の匂いを
運び去ろうとするかのように、
寂しく吹き抜けていった。
夜明けが近いのか、
東の空がわずかに白み始めていた。
埠頭には、友梨奈と、
恐怖に顔を引きつらせた美空、
そして、冷たくなった彩だけが残されていた。
潮風が、血の匂いを運び去ろうとするかのように、
絶えず吹き付けている。
友梨奈は、美空の前に静かに立った。
その瞳は、凪いだ海のように静かだったが、
その奥には底知れない怒りと哀しみが
渦巻いているのを、美空は敏感に感じ取っていた。
「…彩を、弔ってやって」
友梨奈の声は低く、抑揚がなかった。
だが、それがかえって美空の恐怖を煽った。
「な…なんで、私が…!
こ、この子が勝手に飛び出して…!」
美空は、まだ自分の非を認めようとせず、
震える声で言い訳をしようとした。
その言葉が終わる前に、乾いた音が響いた。
友梨奈の無言の平手打ちが、
美空の頬を捉えたのだ。
力任せではない、しかし、心の底からの
軽蔑と怒りが込められた一撃だった。
美空は小さく悲鳴を上げ、尻餅をついた。
頬を押さえ、涙目で友梨奈を見上げる。
「ひぃっ…!こ、殺さないで…!
お願いだから…!」
命乞いをする美空の姿は、
あまりにも浅ましく、哀れだった。
「…去れ」
友梨奈は、それ以上言葉を紡ぐ気にもなれず、
ただ冷たく言い放った。
美空は、その一言に弾かれたように
立ち上がると、
何度も後ろを振り返りながら、
逃げるように埠頭から走り去っていった。
その姿が見えなくなるまで、
友梨奈は黙って見送っていた。