美空は、目の前で起こった惨劇と、
友梨奈のただならぬ気配に、
ただ震えている。
「さあ、彩だ。お前が抱きしめてやれ」
友梨奈は、彩の亡骸を美空の足元に
そっと横たえた。
しかし、美空は彩に駆け寄ろうともせず、
怯えた目で友梨奈と、
その背後で銃を構え直す男たちを交互に見る。
「そ、そんなことより…!
あいつらを、なんとかしてよ!
私まで殺されちゃうじゃない!」
彩の死を悼むよりも、
自分の保身しか考えていないその言葉に、
友梨奈の中で何かが弾け飛んだ。
「あんたは…!!
彩を抱きしめろっつってんだよ!!
あんたのために…!あんたのために、
この子は死んだんだぞ!!」
友梨奈の怒声が、埠頭に轟いた。
それは、普段の彼女からは
想像もできないほどの、激情だった。
美空は恐怖に顔を引きつらせ、
へなへなと座り込む。